日清戦争

概要
朝鮮をめぐって清と戦い、勝った。東アジアの序列が入れ替わり、日本は台湾を得る。
関わった人(3)
西太后AD1835年11月29日–AD1908年11月15日 · 清の実権を握っていた伊藤博文1841年–1909年 · 首相全琫準AD1855年–AD1895年4月24日 · 蜂起が引き金に本文
19世紀の後半、朝鮮王朝は清の属国という立場にあった。朝鮮は清に朝貢し、清は朝鮮の内政に口を出す。そこに割り込もうとしたのが日本である。1876年、日本は軍艦の圧力で朝鮮に開国を迫り、日朝修好条規を結んで朝鮮を「自主の邦」と書かせた。清との宗属関係を否定し、朝鮮に足場を得ようとしたのである。
朝鮮の宮廷では、清に頼る勢力と、日本に倣って改革を急ぐ勢力が争った。1882年の壬午軍乱、1884年の甲申政変はいずれも清軍が鎮め、清の影響はかえって強まった。翌1885年、伊藤博文と清の李鴻章は天津条約を結び、両国は朝鮮から兵を引くこと、再び出兵するときは互いに知らせ合うことを約束した。
1894年、朝鮮南部で農民が立ち上がった。東学という新しい宗教の信者を中心に、全琫準が率いた反乱である(東学農民戦争)。手を焼いた朝鮮政府は清に援軍を求め、清が出兵すると、日本も天津条約を根拠に大軍を送った。農民軍はやがて政府と和約を結んで兵を引いたが、日清両軍は朝鮮にとどまったまま、にらみ合いになった。

日本は清に、共同で朝鮮の内政を改革しようと持ちかけ、清が拒むと、単独でやると宣言した。外務大臣陸奥宗光は、開戦の名目を探していたことを後に回想録『蹇蹇録』で隠さず書いている。7月23日、日本軍は朝鮮の王宮である景福宮を占領した。25日には豊島沖で日本の艦隊が清の艦隊と交戦し、清の兵を運んでいたイギリス船を撃沈する。8月1日、両国は宣戦を布告した。
開戦の前、日本の国内では、政府と帝国議会が予算をめぐって激しく対立していた。議会は何度も解散され、伊藤内閣は行き詰まりかけていた。だが戦争が始まると対立は一気に止んだ。大本営は広島に移され、明治天皇も広島に入った。10月には広島で臨時の帝国議会が開かれ、巨額の臨時軍事費が満場一致で認められている。

結果は日本の勝利だった。陸では9月に平壌を落とし、海では9月17日の黄海海戦で、清の北洋艦隊に打撃を与えた。北洋艦隊は定遠・鎮遠という大型の装甲艦を持ち、装備では劣っていなかったが、訓練と補給と指揮系統で差が出たとされる。艦隊の予算が、西太后の住む頤和園の造営に回されたという話もよく語られるが、どれほど響いたかには異論もある。
日本軍は遼東半島に渡り、11月に旅順を落とした。このとき日本兵が市内で多数の住民を殺害したと欧米の記者が報じ、国際的な非難を浴びた。翌1895年2月、山東半島の威海衛で北洋艦隊は降伏し、提督の丁汝昌は自ら命を絶った。日本側の死者は約1万3千とされるが、その大半は戦死ではなく、脚気やコレラなどの病によるものだった。

世論は熱狂した。新聞は戦勝を大きく報じ、戦場の場面を描いた錦絵が飛ぶように売れた。福沢諭吉は、この戦争を文明と野蛮の戦いだと論じた。キリスト教徒の内村鑑三も、はじめは朝鮮の独立のための「義戦」だと擁護したが、講和の内容を見て自分の不明を恥じたと後に記している。
講和の交渉は下関で行われた。清の全権李鴻章は、交渉の最中に日本人の青年に銃撃されて負傷する。国際世論の反発を恐れた日本は休戦に応じた。4月17日に結ばれた下関条約で、清は朝鮮の独立を認め、遼東半島・台湾・澎湖諸島を日本に割譲し、銀2億両の賠償金を払った。これは当時の日本の国家予算の3倍を超える額だった。

条約はさらに、沙市・重慶・蘇州・杭州を新たに開かせ、開港場で日本人が工場を営むことを認めさせた。この権利は最恵国待遇によって欧米の列強にも及び、外国の資本が中国の内部へ入り込む道を開いた。
だが6日後、ロシア・ドイツ・フランスが、遼東半島を清に返すよう勧告してきた(三国干渉)。日本に3国を相手にする力は無く、追加の賠償金と引き換えに返還した。数年後、その遼東半島の旅順と大連をロシアが清から借り受ける。「臥薪嘗胆」という言葉が叫ばれ、その屈辱が10年後の日露戦争へ向かう世論を作った。

賠償金の大半は軍備の拡張に使われ、一部は八幡製鉄所の建設や、金本位制への移行の元手になった。台湾では、割譲に反対する住民が「台湾民主国」を立てて抵抗し、日本軍はこれを武力で抑えるのに半年近くを費やした。台湾は、日本にとって最初の植民地になる。
朝鮮では、清の後ろ盾が消えた後、日本とロシアの綱引きが始まった。1895年10月、日本の公使らが王宮に押し入り、ロシアに近づいていた王妃(閔妃)を殺害する事件が起きる。清が「眠れる獅子」ではないことが知れ渡り、列強による中国の分割が加速した。東アジアの序列は、この戦争で入れ替わった。