概要
1960年代、核兵器を持つ国はアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の五つになり、このままでは数十の国が持つようになると恐れられた。1968年7月1日、ワシントン、ロンドン、モスクワで署名が始まった核拡散防止条約は、核を持たない国は今後も持たないと約束し、持つ五か国は核軍縮に誠実に取り組むと約束する取り引きだった。原子力の平和な利用は、査察を受けることを条件に認められた。1970年に発効し、いまでは世界のほとんどの国が加わっている。だが、インド、パキスタン、イスラエルは加わらずに核を持ち、北朝鮮は脱退して核実験を行った。持つ国の軍縮も進んでいない。
場所
38.91°N -77.04°E · アメリカ合衆国
本文
1945年にアメリカが原爆を持ったあと、1949年にソ連、1952年にイギリス、1960年にフランス、1964年に中国が核実験を行った。1960年代のはじめ、アメリカのケネディ大統領は、このままでは1970年代に15から25の国が核兵器を持つようになるだろうと語った。キューバ危機で核戦争の淵をのぞいた米ソは、少なくとも核を持つ国がこれ以上増えることは防がねばならないという点で、利害が一致した。
1968年7月1日、核拡散防止条約は、ワシントン、ロンドン、モスクワで署名のために開かれ、その日のうちに60を超える国が署名した。条約は、1967年1月1日より前に核爆発を行った国、すなわち米ソ英仏中の五か国を「核兵器国」とし、それ以外の国を「非核兵器国」とした。
条約は三つの柱の上に立つ取り引きだった。非核兵器国は、核兵器を作らず、手に入れないと約束し、そのことを確かめるために国際原子力機関の査察を受け入れる。核兵器国は、核兵器をほかの国に渡さず、核軍縮のための交渉を誠実に進めると約束する。そして、すべての国は、原子力を平和のために利用する権利を持つ。
条約は1970年3月に発効した。フランスと中国は1992年まで加わらなかった。日本は1970年に署名したが、国内で、核を持つ選択肢を自ら縛ることへの異論もあり、批准は1976年までかかった。1995年、条約は期限を定めず無期限に延長された。いまでは190を超える国が加わり、最も多くの国が加わる軍備管理の条約になっている。
だが、条約の外で核を持った国もある。インドは1974年に最初の核実験を行い、1998年にはパキスタンとともに核実験を重ねた(インドとパキスタンの核実験)。イスラエルは核を持つことを認めも否定もしていない。北朝鮮は2003年に脱退を宣言し、2006年から核実験を繰り返した。核兵器国の軍縮も、冷戦が終わって数は大きく減ったものの、なくす道筋は見えていない。核を持たない国々の不満は、のちの核兵器禁止条約につながっていく。