概要
核拡散防止条約のもとで、核を持つ国の軍縮が進まないことに業を煮やした国々と市民団体は、核兵器そのものを違法とする条約を求めた。2017年7月7日、ニューヨークの国際連合の会議で、核兵器の開発、実験、保有、使用、そして使うと脅すことまでを禁じる条約が、122か国の賛成で採択された。広島や長崎で被爆した人々の証言が、議論を後押しした。その年のノーベル平和賞は、条約を求めた市民団体の連合ICANに贈られ、授賞式では被爆者が演説した。条約は2021年に発効したが、核を持つ国々と、その核の傘の下にある日本などの国は加わっていない。
場所
40.71°N -74.01°E · アメリカ合衆国
本文
核拡散防止条約は、核兵器国に核軍縮の交渉を誠実に進めることを求めていた。だが冷戦が終わって数十年たっても、核兵器をなくす道筋は見えなかった。2010年代、核兵器を持たない国々と市民団体は、議論の軸を変えようとした。核兵器を、国の安全を守る道具としてではなく、使えば人道に反する破局をもたらす兵器として捉え直す。2013年から、核兵器の非人道性を話し合う国際会議が、ノルウェー、メキシコ、オーストリアで続けて開かれた。
対人地雷やクラスター爆弾は、使えば罪のない人を無差別に傷つけるとして、条約で禁じられた。同じ考え方で、核兵器そのものを法で禁じようという動きが強まった。2016年、国連の総会は、核兵器を禁じる条約の交渉を始めることを決めた。核兵器国とその同盟国の多くは、交渉に加わらなかった。日本も、アメリカの核の傘に頼る立場から参加しなかった。
2017年7月7日、ニューヨークの国連本部での会議で、核兵器禁止条約が122か国の賛成で採択された。核兵器の開発、実験、生産、保有、移転、使用、そして使うと脅すことまでを、例外なく禁じる。核兵器を使われたり実験されたりした人々への援助と、汚された環境の回復も定めた。前文には、核兵器の使用による被害者、すなわち「ヒバクシャ」の苦しみに心を留めると書かれた。交渉の場では、広島や長崎で被爆した人々が繰り返し証言した。
その年のノーベル平和賞は、条約を求めて活動した市民団体の連合、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に贈られた。オスロの授賞式では、13歳で広島の原爆に遭い、のちにカナダに移り住んだサーロー節子が演説した。
条約は、50か国の批准を経て、2021年1月22日に発効した。だが核兵器国の五か国も、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮も加わっていない。NATOの加盟国や日本、韓国、オーストラリアなど、核の傘の下にある国々も加わっていない。条約は核兵器を一発も減らしていないとの批判がある一方で、核兵器を持ち使うことは許されないという考えを、国際法の上に初めて書き込んだ。