概要
自分は人と違うと気づいた「私」が、その欲望を隠して仮面をかぶって生きる様子を、一人称で語る。24歳の三島由紀夫が、大蔵省を辞めて書き下ろした初めての長編で、河出書房から出た。同性への欲望を正面から書いた告白の体裁が驚かれ、三島は戦後を代表する作家の一人になった。
場所
東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
関わった人(1)
三島由紀夫AD1925年1月14日–AD1970年11月25日 · 作者本文
『仮面の告白』は、1949年7月に河出書房から書き下ろしで出た長編小説で、三島由紀夫はこのとき24歳だった。1947年の暮れに大蔵省に入ったが、翌年の9月には辞め、書くことだけで生きると決めて、この作品に取りかかった。
語り手の「私」は、幼いころから、自分の欲望がほかの男の子と違う向きを向いていることに気づいている。殉教者の絵に心を揺さぶられ、同級生の体に惹かれる。それを隠して、女性を愛せるふりをし、友人の妹と恋をしようとする。戦争の末期から戦後にかけて、仮面をかぶって生きる苦しさが、細かな自己分析とともに語られる。
同性への欲望を、一人称の告白の形で正面から書いた小説は、当時の日本ではほとんど例がなかった。主人公の生い立ちは三島自身のものに近く、どこまでが本当の告白なのかは、いまも読み方が分かれている。作品は評判を呼び、三島は戦後文学の新しい書き手として広く知られるようになった。
この作品から21年後の1970年、三島は市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹して死ぬ。演じることと本当の自分という主題は、その最期まで三島について語られ続けた。