概要
『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の四部からなる、三島由紀夫の最後の長編。明治の末から戦後までを舞台に、友人の松枝清顕が二十歳で死ぬたびに生まれ変わる姿を、法律家の本多繁邦が見届けていく。三島は最後の原稿を出版社に渡した日に、市ヶ谷で自決した。
場所
東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
関わった人(1)
三島由紀夫AD1925年1月14日–AD1970年11月25日 · 作者本文
『豊饒の海』は、三島由紀夫が1965年から雑誌『新潮』に連載した四部作の長編小説である。題は、月の表面にある「海」の一つの名から取られている。三島はこれを、自分の文学の集大成と位置づけていた。
第一部の『春の雪』は大正の初めの東京が舞台で、侯爵家の息子、松枝清顕と、伯爵家の娘、綾倉聡子の悲恋を描く。聡子が宮家との婚約を決めたあとで、清顕は彼女を激しく求め、二人の関係は破局に向かう。清顕は二十歳で病に倒れ、親友の本多繁邦に、滝の下でまた会おうと言い残して死ぬ。
第二部の『奔馬』では、裁判官になった本多が、清顕と同じ場所に三つの黒子を持つ青年、飯沼勲に出会う。勲は昭和の初めに国家の改造を夢見て決起を企て、最後に自刃する。第三部の『暁の寺』では、舞台がタイとインドに移り、本多はタイの王女の中に再び転生の印を見る。第四部の『天人五衰』では、老いた本多が、転生者だと信じた少年を養子にするが、その少年は偽物かもしれない。本多は最後に聡子を訪ね、清顕などという人は知らないと告げられる。
三島は最終回の原稿の末尾に1970年11月25日の日付を記し、その朝、編集者に渡るよう手配したうえで、市ヶ谷の自衛隊駐屯地に向かった。最終回は翌年1月号に載り、四部作は完結した。