概要
伊勢湾に浮かぶ小さな島で、若い漁師の新治と、海女の初江が恋をする。島の大人たちの噂や反対に阻まれながら、新治は嵐の夜の海で船を救う働きを見せ、二人は結ばれる。古代ギリシアの恋物語『ダフニスとクロエ』を下敷きにした書き下ろしの長編で、何度も映画になった。
場所
東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
関わった人(1)
三島由紀夫AD1925年1月14日–AD1970年11月25日 · 作者本文
『潮騒』は、1954年6月に新潮社から書き下ろしで刊行された長編小説である。三島由紀夫は前の年に、三重県の伊勢湾の入り口にある神島に滞在し、島の暮らしを取材した。作品の舞台の歌島は、この島がモデルになっている。
主人公の久保新治は、母と弟を養う18歳の漁師で、まじめで口数が少ない。ある日、浜で見慣れない少女を見かける。島一番の金持ちの照吉の娘で、よその島に養女に出されていたのを呼び戻された初江だった。二人は惹かれ合い、嵐の日に観的哨の跡で会う。焚き火を挟んで向かい合う場面は、作品でもっとも知られた場面になっている。
しかし、島の名家の息子の安夫も初江を狙っていて、二人の仲は噂となり、照吉は新治と会うことを禁じる。新治は照吉の持ち船に乗り組んで沖縄への航海に出て、台風の夜、荒れる海に飛び込んで船を救う。その働きを見た照吉は、新治を初江の婿と認める。
三島は、二世紀ごろのギリシアの作家ロンゴスの牧歌的な恋物語『ダフニスとクロエ』を下敷きにして、健やかな若者と自然を描こうとした。屈折した内面を描くことの多い三島の作品の中で、例外的に明るい作品であり、刊行の年に新潮社文学賞を受けた。のちに何度も映画化されている。