概要
2013年12月4日、アゼルバイジャンのバクーで開かれたユネスコの委員会は、「和食:日本人の伝統的な食文化」を無形文化遺産に登録すると決めた。登録されたのは料理そのものではなく、季節の食材を生かし、栄養の釣り合いがとれ、自然の美しさを盛りつけに表し、正月などの行事と結びついた食の習わしである。申請の背景には、日本人の家庭で和食が作られなくなりつつあるという危機感があった。フランスの美食術やメキシコの伝統料理に続く登録で、海外での和食の人気と、日本の食材の輸出を後押しした。
場所
40.41°N 49.87°E · アゼルバイジャン
本文
ユネスコの無形文化遺産は、建物や遺跡ではなく、祭りや芸能や技術のように、人から人へ受け継がれる文化を守るための仕組みである。2003年に条約ができ、日本からは能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎などが登録されてきた。2010年には、食の分野で初めて、フランスの美食術とメキシコの伝統料理が登録された。
日本で和食の登録を目指す動きが始まったのは、2011年である。はじめは、京料理のような高級な会席料理を柱にする案もあった。しかし、それでは特定の料理人の技になってしまう。申請は、ふつうの人々の暮らしの中の食の習わしを柱にする形に改められた。東日本大震災で傷ついた日本の食への信頼を取り戻したい、という思いもあった。
2013年12月4日、アゼルバイジャンのバクーで開かれた委員会で、「和食:日本人の伝統的な食文化」の登録が決まった。挙げられたのは四つの特徴である。多様で新鮮な食材とその持ち味を尊ぶこと、栄養の釣り合いがとれた健康的な食事であること、自然の美しさや季節の移ろいを表すこと、正月などの年中行事と結びついていること。
申請の裏には、危機感があった。家庭で出汁をとらなくなり、正月のおせちを作らなくなり、子どもたちが和食を食べなくなっている。遺産に登録するのは、それが消えかけているからでもある。登録のあと、海外の日本料理の店は増え続け、日本の食材や酒の輸出も伸びた。一方で、家庭の食卓で和食が作られる機会は、登録のあとも減り続けていると言われる。