概要
四代将軍の足利義持は、跡継ぎを決めないまま死の床についた。誰を選んでも、選ばなかった兄弟と、それを推した大名が不満を持つ。重臣たちは、義持の四人の弟の名を籤に書き、石清水八幡宮の神前で引かせることにした。引いたのは管領で、封は義持が息を引き取ってから開かれた。当たったのは、青蓮院の門跡として僧になっていた義円である。彼は還俗して六代将軍義教となった。神が選んだ将軍だという建前は、誰にも異を唱えさせない。義教はその建前を背に、強い将軍として振る舞い、やがて家臣に殺される。
場所
34.88°N 135.70°E · 日本・京都府八幡市
本文
**決めない**。
(——**足利義持**(1386〜1428年)。
〈**——**四代将軍**。
**——**二十年あまり**、**幕府**を、**安定して、**治めた**。〉
**——**ただし、**跡継ぎ**が、**いない**。
〈**——**一人息子**の、**五代将軍**義量**は、**十代**で、**死んだ**。
**——**義持**は、**そのあと、**将軍**に、**戻らないまま**、**政務**を、**見ていた**。〉
**——**1428年**の正月**、**義持**が、**重い病**に、**倒れた**。
〈**——**重臣たち**が、**跡継ぎ**を、**決めてくれ**、**と、**頼んだ**。
**——**義持**は、**決めなかった**。〉
**——**なぜか**。
〈**——**決めても、**大名たち**が、**従わなければ、**意味が無い**、**と**、**言ったと、**伝えられる**。〉)
**くじ**。
(——**候補**は、**義持の弟**、**四人**。
〈**——**みな、**寺に、**入っていた**。
**——**将軍家**の、**跡継ぎでない男子**は、**僧になる**のが、**習い**である**。〉
**——**誰を、**選んでも**、
〈**(1)**選ばれなかった兄弟**が、**不満を持つ**。
**(2)**そして、**その兄弟**を、**推した大名**が、**不満を持つ**。
**(3)さらに、**選んだ重臣**が、**恨まれる**。〉
**——**醍醐寺の**満済**などが、**考えた**。
〈**——**人が、**選ばなければよい**。
**——**神**に、**選んでもらう**。〉
**——**石清水八幡宮**。
〈**——**源氏**の、**氏神**である**八幡神**を、**祀る**。
**——**将軍家**にとって、**いちばん、**重い神**である**。〉)
**引く**。
(——**手順**。
〈**(1)**四人の名**を、**それぞれ、**紙に、**書く**。
**(2)**そして、**封をする**。
**(3)さらに、**管領**の**畠山満家**が、**石清水の神前**で、**一つを、**引く**。
**(4)そして、**開けずに、**持ち帰る**。〉
**——**義持**が、**息を、**引き取った**。
〈**——**そのあとで、**封**が、**開かれた**。
**——**生きているうちに、**開けば、**義持**が、**選んだ**ことに、**なってしまう**。〉
**——**名前は、**義円**。
〈**——**青蓮院**の、**門跡**。
**——**天台宗**の、**高い位**の、**僧**である**。
**——**三十代の半ば**。〉)
**還俗**。
(——**義円**は、**僧**を、**やめた**。
〈**——**髪**が、**伸びるまで**、**元服**を、**待った**。
**——**名を、**義宣**、**のちに、**義教**と、**改めた**。
**——**六代将軍**である**。〉
**——**「くじ引き将軍」**。
〈**——**陰で、**そう、**呼ばれた**。
**——**しかし、**表向き**は、**「神が選んだ将軍」**である**。〉)
**強い将軍**。
(——**義教**は、**その建前**を、**背に、**振る舞った**。
〈**(1)**大名**の、**家督争い**に、**口を出す**。
**(2)**そして、**逆らう者**を、**討つ**。
**〈——鎌倉公方**の**足利持氏**を、**滅ぼした**。〉**
**(3)さらに、**比叡山**とも、**争った**。
**(4)そして、**些細なこと**で、**公家**や、**家臣**を、**罰した**。〉
**——**「万人恐怖」**。
〈**——**同じ時代**の、**公家の日記**に、**そう、**書かれている**。〉
**——**1441年、**赤松満祐**の屋敷**に、**招かれ、**宴の席**で、**殺された**。
〈**——**嘉吉の乱**。
**——**次は、**自分が、**討たれる**、**と**、**赤松**は、**恐れていた**とされる**。〉)
**残ること**。
(——**くじ**は、**誰も、**責任を、**負わない**、**決め方**である**。
〈**——**選ばなかった兄弟**も、**文句を、**言えない**。
**——**神**が、**選んだ**のだから**。〉
**——**その**強さ**が、**そのまま、**選ばれた者**の、**強さ**に、**なった**。
〈**——**誰にも、**選ばれていない**。
**——**だから、**誰にも、**恩が無い**。
**——**そして、**誰の言うことも、**聞かなくてよい**。〉
**——**[[kleroterion]]**の**くじ**は、**一人に、**力を、**集めない**ため**だった**。
〈**——**ここでは、**くじ**が、**一人に、**力を、**集めた**。
**——**任期**も、**会計の調べ**も、**無かったからである**。〉)