できごと

電磁誘導の発見

Electromagnetic induction
AD1831年8月29日
重要度 4
ロシア帝国大英帝国デンマークオスマン帝国ポルトガル帝国スウェーデン=ノルウェースペイン帝国オーストリア帝国エジプトスペインフランスモロッコAlgiersグレートブリテン及びアイルランド連合王国プロイセン両シチリア王国バイエルンTunisサルデーニャ王国TripolitaniaハノーファーCyrenaicaAD1831年8月29日ロンドン
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1831年8月29日の版図を描いています(22勢力)。

概要

磁石を動かすとコイルに電流が流れた。発電機とモーターはここから来ている。電気が実験室の珍しい現象でなくなる。

場所

ロンドン
51.51°N -0.13°E · イギリス・イングランド

関わった人(1)

マイケル・ファラデーAD1791年9月22日–AD1867年8月25日 · 発見

本文

1820年、デンマークの物理学者エルステッドが、電流を流した針金のそばで方位磁針が振れることを見つけた。電気が磁気を生むことが分かったのである。この知らせはヨーロッパじゅうの科学者を興奮させ、フランスのアンペールはすぐに電流どうしが力を及ぼし合う法則をまとめた。では、逆に磁気から電気を生み出すことはできないか。多くの人が試みたが、うまくいかなかった。

ロンドンの王立研究所で働いていたマイケル・ファラデーも、その一人だった。ファラデーは鍛冶屋の息子に生まれ、正規の学校教育をほとんど受けていない。製本屋の徒弟として働きながら、製本を頼まれた科学の本を読んで学び、化学者デーヴィーの講演を聴いて書き取ったノートを本人に送ったことがきっかけで、王立研究所の助手に採用された。1821年には、電流と磁石を使って針金をぐるぐる回し続ける装置を作っている。電気の力で連続した動きを生み出す、最初の電動機ともいえる仕掛けだった。

ファラデーのコイル電磁誘導実験
ファラデーのコイル電磁誘導実験Wikimedia Commons J. Lambert · Public domain

ファラデーは、1820年代にもいくつか試みたが、磁石のそばにコイルを置いても電流は流れなかった。1831年の夏、彼は改めてこの問題に取り組む。8月29日の実験ノートには、太い鉄の輪に、二つの銅線のコイルを別々に巻きつけた装置が描かれている。一方のコイルを電池につなぎ、もう一方のコイルには電流計の役をする磁針をつないだ。電池をつないだ瞬間、磁針が振れ、すぐに元に戻った。電池を外した瞬間にも、磁針は逆向きに振れた。電流を流し続けている間は、何も起きなかった。

鍵は、変化だった。磁気がそこにあるだけでは電気は生まれない。磁気が強まったり弱まったりする、その瞬間にだけ電流が生まれる。10年あまり誰も見つけられなかったのは、皆が止まった状態の中で電流を探していたからである。10月には、棒磁石をコイルの中に出し入れするだけで電流が流れることを確かめ、さらに、磁石の両極の間で銅の円板を回すと、円板から電流を取り出し続けられることを示した。これが発電機の原型になった。

ソレノイドコイル
ソレノイドコイルWikimedia Commons Zureks · Public domain

ファラデーは数学をほとんど使わなかった。代わりに、磁石の周りの空間には目に見えない「力の線」が張りめぐらされていて、導線がその線を横切るときに電流が生まれる、という像で考えた。鉄粉が磁石の周りに描く模様が、その線を目に見えるようにしたものだった。この考えは当時の多くの物理学者には素朴に見えたが、のちにジェームズ・クラーク・マクスウェルがこれを数式に置き換え、電気と磁気と光を一つの理論にまとめることになる(電磁場の理論)。

アメリカのジョゼフ・ヘンリーも、ほぼ同じころに独立して同じ現象を見つけていたが、発表はファラデーが先だった。電磁誘導の法則は、今もファラデーの名で呼ばれている。

渦電流を示す図(『ホーキンズ電気ガイド』図292)
渦電流を示す図(『ホーキンズ電気ガイド』図292)Wikimedia Commons Public domain

ファラデーは、その後も電気の研究を重ねた。電池や摩擦、電気魚、電磁誘導など、どの方法で作った電気も同じものであることを確かめ、溶液に電気を通すと物質が分解される量の法則を見つけた。電極や電解質、イオンといった、今も使われる言葉の多くは、ファラデーが学者仲間と相談して名づけたものである。

発見から実用までには、数十年がかかった。それまで電気は、ボルタの電池(電池)から取り出す、量の限られたものだった。電磁誘導によって、蒸気機関や水車の回転を電気に変える道が開かれた。19世紀の後半には、強力な発電機が作られ、白熱電球(エジソンの白熱電球)などの電灯や工場の電動機、路面電車に電気を送る発電所が建てられた。変圧器も電磁誘導の原理で動いており、電気を遠くへ送ることを可能にした。今日、私たちが使う電気のほとんどは、発電所で磁石と導線を相対的に動かすことによって作られている。

積層した電機子鉄心が渦電流に与える影響(図293)
積層した電機子鉄心が渦電流に与える影響(図293)Wikimedia Commons Public domain

この発見の役に立ち方を問われたファラデーが、生まれたばかりの赤ん坊が何の役に立つのか、と答えたという話がよく知られている。ほかにも、財務大臣に、いずれあなたはこれに税をかけるだろう、と答えたという話もある。どちらも確かな出典は無く、後世に作られた逸話とみられる。ファラデー自身は、特許を取ることも爵位を受けることも断り、王立研究所でクリスマスに子ども向けの講演を続けた。その講演は、今もイギリスで毎年開かれている。

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