概要
鎌倉の海で出会った「先生」を慕う学生の「私」が、先生の長い遺書を受け取る。若いころ、先生は親友のKを出し抜いて下宿の娘との結婚を決め、Kは自殺していた。明治天皇の死と乃木希典の殉死を聞いた先生は、自分も死ぬことを決める。朝日新聞に連載され、のちに日本で最も多く読まれた小説の一つになった。
場所
東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
関わった人(1)
夏目漱石AD1867年2月9日–AD1916年12月9日 · 作者本文
『こころ』は、1914年4月20日から8月11日まで、東京と大阪の朝日新聞に「心 先生の遺書」の題で連載された。同じ年の9月、創業したばかりの岩波書店から本になった。装丁は漱石自身が手がけている。
作品は三つの部分からなる。上の「先生と私」では、学生の「私」が鎌倉の海岸で出会った年上の男を「先生」と呼んで慕い、東京の家に通うようになる。先生は美しい妻と静かに暮らしているが、世の中に出て働くこともなく、毎月、誰かの墓に参っている。中の「両親と私」では、私が病気の父を見舞いに郷里へ帰っているあいだに、明治天皇が亡くなり、乃木希典が殉死する。そこへ、先生から分厚い手紙が届く。
下の「先生と遺書」は、その手紙そのものである。若いころ、先生は叔父に財産をだまし取られ、人を信じられなくなっていた。東京で下宿した家の娘に惹かれていたが、そこに、同郷の親友Kを呼び寄せる。Kもまた娘に恋をしたと打ち明けられた先生は、Kを出し抜いて、娘の母に結婚を申し込む。Kは何も言わずに自殺した。先生は娘と結婚したが、その罪を誰にも明かせないまま生きてきたのだった。明治の精神に殉じると書き、先生は死を選ぶ。
人の心の利己とその罪を、静かな文体で突き詰めた作品として、戦後は高校の国語の教科書に長く載り、日本で最も多く読まれた小説の一つになっている。