概要
1994年、アメリカで、遺伝子を組み換えた作物として初めて、店に並べることが認められたトマト「フレーバー・セーバー」が売り出された。熟しても柔らかくなりにくいよう、カリフォルニアの会社が遺伝子に手を加えたものである。トマトは商売としては失敗したが、1996年からは、除草剤に強い大豆や、害虫に強いトウモロコシが大規模に作られはじめる。いまアメリカの大豆とトウモロコシの九割以上が組み換えである。一方でヨーロッパや日本では、安全や環境への影響を心配する声が強く、表示の義務づけをめぐって議論が続いてきた。
場所
38.54°N -121.74°E · アメリカ・カリフォルニア州
本文
1970年代、生き物の遺伝子を切り取り、別の生き物に入れる技術が生まれた(遺伝子組み換え技術の誕生)。1980年代には、この技術で作物を変える研究が進む。ほかの生き物から取った遺伝子を植物に入れ、病気や害虫や除草剤に強い品種を作ることができるようになった。
1994年5月、アメリカの食品医薬品局は、カリフォルニアのデイヴィスの会社カルジーンが作ったトマト「フレーバー・セーバー」を、店に並べることを認めた。トマトの実を柔らかくする遺伝子の働きを抑えて、熟してから収穫しても日持ちするようにしたものである。遺伝子を組み換えた食べ物として、初めて売られた。しかし味は期待ほどではなく、値段も高く、数年で消えた。
作物の組み換えが大きく広がったのは、1996年からである。モンサントが、自社の除草剤ラウンドアップに枯れない大豆を売り出した。畑に除草剤をまいても、雑草だけが枯れて大豆は残る。害虫を殺すたんぱく質を自分で作るトウモロコシや綿も広まった。アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、インドで、組み換えの作物が畑を覆っていく。
一方で、ヨーロッパや日本では、食べて安全なのか、自然の生き物の間に遺伝子が広がらないか、種を握る大企業に農家が縛られないか、という心配が強かった。日本は組み換えの作物を大量に輸入しながら、国内では商業としてほとんど作られていない。2001年からは、組み換えの原料を使った食品に表示が義務づけられた。近年は、外から遺伝子を入れずに狙った遺伝子だけを変える「ゲノム編集」の作物が現れ、同じ議論が新しい形で続いている。