概要
15歳のコペル君が、学校や町で出会う出来事を、叔父さんがノートに書く言葉と一緒に考えていく。新潮社の「日本少国民文庫」の一冊として、日中戦争が始まった直後に出た。少年向けの本の形をとって、ものの見方と、人として生きることを問うた。80年後の2017年に漫画になって、また広く読まれた。
場所
東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都
関わった人(1)
吉野源三郎AD1899年4月9日–AD1981年5月23日 · 作者本文
1935年から、作家の山本有三が中心になって、少年少女のための叢書「日本少国民文庫」が新潮社から出はじめた。軍国主義が強まるなかで、子どもたちに自由で広い見方を残しておきたい、という意図があった。そのうちの一冊、倫理を扱う巻を書いたのが、編集者の吉野源三郎だった。1937年8月に出たこの本は、7月に始まった日中戦争のすぐあとに店に並んだ。
主人公は本田潤一という中学生で、コペルニクスにちなんで「コペル君」と呼ばれている。デパートの屋上から人の群れを見下ろして、自分も大きな世の中の一つの粒だと気づく場面から話は始まる。友だちへのいじめ、貧しい家の同級生、粉ミルクの缶が自分の手に届くまでにつながる無数の人の仕事。そうした出来事のあとに、叔父さんがコペル君にあてて書いたノートの文章が挟まれる。
この本が問うているのは、知識よりも、ものの見方と、その見方に責任を持って生きることだ。友だちを裏切ってしまったコペル君が、どう立ち直るかが後半の山場になる。説教でなく、一人の少年の迷いとして書いたところに、この本の強さがある。
戦後、吉野は岩波書店で雑誌『世界』の初代編集長になり、本は版を重ねた。2017年、羽賀翔一による漫画版が出て、原作とあわせて200万部を超える売れ行きになった。2023年には宮崎駿の映画がこの題を借りている。