アメリカ議事堂襲撃

概要
選挙の結果を認めない大統領の集会から、群衆が議事堂に押し入った。上院と下院が選挙人の認定をしている最中に。5人が死んだ。1814年にイギリス軍が焼いて以来、議事堂が襲われた最初になる。
場所
38.91°N -77.04°E · アメリカ合衆国
本文
2020年11月3日のアメリカ大統領選挙で、民主党のジョー・バイデンは約8128万票、現職の共和党ドナルド・トランプは約7422万票を得た。州ごとに割り当てられた選挙人は306対232だった。郵便による投票が多く、開票には日数がかかり、11月7日、ペンシルヴェニア州の結果が固まったところで、主な報道はバイデンの勝利を伝えた。
トランプは結果を認めなかった。選挙は盗まれた、と言い続け、支持者は「盗みを止めろ」を合言葉にした。陣営と支持者は60を超える訴訟を起こしたが、ほぼすべて退けられた。12月14日、各州で選挙人の投票が行われ、結果は確定に向かった。1月2日、トランプはジョージア州の州務長官ラフェンスパーガーに電話をかけ、1万1780票を見つけてほしいと求めた。それはバイデンとの差を1票上回る数だった。

最後の場が1月6日だった。この日、上下両院の合同会議で、副大統領が各州の選挙人の票を開いて読み上げ、当選者を認定する。トランプ陣営の法律家イーストマンは、副大統領が一部の州の票を受け取らずに済ませられるという覚え書きを作った。副大統領マイク・ペンスは、自分にその権限は無いと判断した。トランプは12月19日、1月6日にワシントンで大きな抗議集会がある、来てくれ、荒れるぞ、と書き込んでいた。
1月6日の正午、ホワイトハウスの南の広場で「アメリカを救え」集会が始まった。トランプの弁護士ジュリアーニは「決闘で決めよう」と言った。トランプは1時間あまり話し、死に物狂いで戦わなければ国はなくなる、ペンシルヴェニア通りを議事堂まで歩こう、私も一緒に行く、と述べた。彼は議事堂へは行かず、ホワイトハウスへ戻った。

午後1時、議事堂では合同会議が始まり、アリゾナ州の票に異議が出されて、両院はそれぞれの議場に分かれて審議に入った。その少し前から、議事堂の西側の柵は破られていた。極右の団体「プラウド・ボーイズ」や民兵組織「オース・キーパーズ」の者たちが群衆の前にいた。午後2時過ぎ、群衆は上院側の窓を割って中へ入った。ペンスは議場から退避させられ、外では「ペンスを吊るせ」の声が上がり、絞首台が組まれていた。議員たちはガスマスクを着けて床に伏せ、下院議長ペロシの部屋にも人が入り込んだ。南軍の旗が、初めて議事堂の中を運ばれた。
2時24分、トランプは、ペンスには必要なことをする勇気がなかった、と書き込んだ。2時44分ごろ、下院の議場に近い扉の窓を破って入ろうとした女性アシュリ・バビットが、警官に撃たれて死んだ。トランプが動画で、家に帰れ、あなたたちを愛している、と呼びかけたのは午後4時17分だった。州兵が到着し、議事堂の安全が宣言されたのは午後5時40分ごろだった。夜8時、議会は審議を再開し、翌7日の午前3時40分ごろ、ペンスがバイデンの当選を読み上げた。

この日とその直後に5人が死んだ。撃たれたバビットのほか、群衆の中で3人が倒れ、警官ブライアン・シックニックは翌日に脳卒中で死んだ。およそ140人の警官が負傷し、その後の数か月で4人の警官が自ら命を絶った。議事堂が外の勢力に占拠されたのは、1814年の米英戦争でイギリス軍が焼き払って以来のことだった。
1500人を超える人々が起訴された。オース・キーパーズの創設者ローズとプラウド・ボーイズの元代表タリオは、南北戦争のさなかに作られた扇動共謀の罪で有罪となり、それぞれ禁錮18年と22年を言い渡された。トランプは下院で2度目の弾劾を受けたが、上院の票は有罪57対無罪43で、必要な3分の2に届かなかった。下院の特別委員会は845ページの報告書をまとめ、2023年8月には連邦の大陪審がトランプを起訴した。2024年7月、最高裁は大統領の公務には広い免責が及ぶと判断した。

2024年11月5日、トランプは再び大統領に選ばれた(2016年の最初の当選はトランプの当選)。訴追は取り下げられた。2025年1月20日、就任したその日に、彼は1月6日の事件で起訴されたおよそ1500人に恩赦を与え、十数人の刑を減じた。同じ日の出来事を、ある人々は民主主義への襲撃と呼び、別の人々は愛国者の抗議と呼ぶ。その呼び方の分かれ目が、そのままいまのアメリカの分かれ目になっている。
事件は海の外にも影を落とした。2年後の2023年1月8日、ブラジルでは選挙に敗れた前大統領ボルソナロの支持者が、1960年に造られた首都ブラジリア(ブラジリア遷都)の議会と最高裁と大統領府に押し入った。選挙の結果を認めず、群衆で覆そうとするやり方は、一つの国の中だけの話ではなくなっている。