概要
1996年7月、大阪府の堺市で、小学校の給食を食べた子どもたちが、次々に激しい腹痛と血の混じった下痢に襲われた。腸管出血性大腸菌O157による食中毒で、患者は九千人を超え、子どもが亡くなった。厚生省は原因としてカイワレ大根の疑いを発表し、カイワレは全国の店から消え、生産者は打撃を受けた。のちに裁判所は、確かな根拠が無いまま発表したとして国に賠償を命じている。この事件のあと、給食の衛生の基準が厳しくされ、食べ物を十分に加熱するという習慣が、家庭にも広まった。
場所
34.57°N 135.48°E · 大阪府
本文
腸管出血性大腸菌O157は、牛の腸にいることのある菌で、わずかな数でも人の体に入ると、毒素を出して激しい腹痛と血の混じった下痢を起こす。子どもやお年寄りでは、腎臓が働かなくなる重い合併症を起こし、命にかかわることがある。1982年、アメリカでハンバーガーによる食中毒の原因として初めて見つかった。
1996年の5月から、日本の各地でO157の食中毒が相次いだ。7月、大阪府の堺市で、市内の小学校の多くの子どもたちが、同じように腹痛と下痢を訴えて病院に運ばれた。どれも学校給食を食べた子どもたちだった。患者は子どもと家族を合わせて九千人を超え、子どもたちが亡くなった。後遺症に苦しんだ人もいる。
原因を探した厚生省は、8月、給食の食材のうち、特定の農家のカイワレ大根が疑わしいと発表した。確かな証拠は無かった。カイワレ大根は全国の店から消え、生産者は売上を失った。当時の厚生大臣の菅直人は、安全を訴えるためにカメラの前でカイワレを食べてみせた。のちに生産者たちが国を訴え、裁判所は、根拠が十分でないまま公表したことは違法だとして、国に賠償を命じた。
事件のあと、国は学校給食の衛生の基準を大きく改めた。調理場で肉や野菜を扱う場所を分け、食材を中心まで十分に加熱し、調理した物の一部を二週間保存して、何か起きたときに調べられるようにする。飲食店でも生の牛の肝臓を出すことが、のちに禁じられた。生で食べることを好む日本の食の習慣が、見直されるきっかけになった。