概要
20世紀の半ば、アメリカでは心臓の病が死因の一位になっていたが、なぜ起きるのかはほとんど分かっていなかった。1948年、国の研究所は、ボストンに近い町フラミンガムの住民五千人あまりを選び、何年にもわたって定期的に血圧や血液や体重や喫煙の習慣を測り続ける研究を始めた。十数年後、高い血圧、高いコレステロール、喫煙が、のちの心臓病と結びついていることが分かる。研究者たちは、それを「危険因子」と呼んだ。病気になる前に原因を減らすという予防の考えは、ここから広まった。研究はいまも孫の世代まで続いている。
場所
42.28°N -71.42°E · アメリカ・マサチューセッツ州
本文
1945年、アメリカの大統領フランクリン・ローズヴェルトが、脳出血で亡くなった。血圧は長く200を超えていたが、主治医は年相応のものとみなしていた。当時、高い血圧は、年を取れば上がる自然なもので、むしろ体に必要だと考える医師も多かった。心臓と血管の病は、アメリカ人の死因の一位だった。
1948年、国の心臓の研究所は、心臓病がどんな人に起きるのかを、長い時間をかけて調べることにした。選ばれたのは、ボストンの西の町フラミンガムである。人口が安定していて、住民が協力的だった。30歳から62歳の住民五千人あまりが、2年ごとに病院に来て、血圧を測り、血を採り、心電図をとり、たばこや食事や運動の習慣を答えることになった。
十数年がたつと、誰が心臓病になり、誰がならなかったかが分かってくる。1961年、研究者たちは、高い血圧、高いコレステロール、喫煙が、心臓病になる危険を大きく高めると報告した。彼らはこれを「危険因子」と呼んだ。この言葉は、ここから広まった。のちには、肥満、糖尿病、運動不足も加わる。
この研究の考え方は、医療のあり方を変えた。症状が出てから治すのではなく、症状の無いうちに血圧やコレステロールを測って下げ、たばこをやめさせる。健康診断で数値を測り、薬で下げるという、いまでは当たり前の予防の医療は、ここに根を持つ。研究は1971年に参加者の子どもの世代、2002年に孫の世代を加えて続いている。一方で、白人の中流の住民が大半の一つの町の結果を、どこまで他の人々に当てはめられるかという問いも残った。