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Event / できごと

木材パルプの紙

Wood pulp paper
AD1844年
重要度 4
ロシア帝国大英帝国デンマークオスマン帝国Turanペルシアポルトガル帝国スウェーデン=ノルウェースペイン帝国オーストリア帝国エジプトスペインフランスNejdモロッコAlgiersグレートブリテン及びアイルランド連合王国プロイセン両シチリア王国バイエルンTunisサルデーニャ王国TripolitaniaハノーファーCyrenaicaAD1844年ドレスデン
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1844年の版図を描いています(25勢力)

概要

ザクセンの織工フリードリヒ・ゴットロープ・ケラーが、濡らした丸太を砥石に押しつけて繊維を削り出し、それを漉いて紙にした。襤褸から解放された。特許を更新する資金が無く、権利は製紙業者フォルターの手に渡り、ケラーは貧しいまま死んだ。紙が安くなり、新聞が大衆のものになる。同時に、木材パルプの紙は酸を含み、数十年で褐色になって崩れる。十九世紀後半以降の書物と新聞が、いま図書館で壊れつつある。

場所

ドレスデン
51.05°N 13.74°E · ドイツ

関わった人(1)

フリードリヒ・ゴットロープ・ケラーAD1816年6月27日–AD1895年9月8日 · 作った

本文

**人**。

**フリードリヒ・ゴットロープ・ケラー**(1816〜1895年)。

**ザクセン、ハイニヒェン**(ケムニッツの近く)。

(**父は、**織工**である**。

**——**貧しい**。

**息子は、**正規の教育を、ほとんど受けていない**。

〈**——**村の学校だけである**。

**そして、**手先が、器用だった**。

**〈織機の部品を作り、修理した。〉**〉)

**着想**。

(——**彼は、自分で、こう書いている**(要旨)。

**「少年のころ、**蜂の巣を見た**。

**……**それが、木から作られていることを知った**。

**……**それなら、**紙も、木から作れるはずだ**」**。

〈**——**レオミュールと、**同じ着想である**。

**そして、**ケラーは、レオミュールの論文を、読んでいない**、と考えられている**。

**——**独立に、**同じところに、辿り着いた**。〉

**さらに、彼は、**別のことも、書いている**。

〈**——**子どものころ、**桜んぼの種を、砥石で磨いて、鎖を作る遊び**をした**。

**そのとき、**磨いた粉が、水の中で、繊維状になった**のを見た**。

**——**「木も、そうなるのではないか」**。〉)

**装置**。

**1843年**。

(——**濡らした丸太を、**回転する砥石に、押しつける**。

**そして、**水をかけ続ける**。

**——**削れた繊維が、水と一緒に、流れ出る**。

**「砕木パルプ」**(groundwood pulp)。

〈**極めて単純である**。

**——**化学的な処理を、していない**。

**リグニンが、**そのまま残る**。

**〈これが、後の問題になる。〉**〉

**1844年、**その繊維を漉いた紙で、**新聞を刷らせた**。

〈**——**フランケンベルクの地方紙**。

**そして、**その一部が、いまも残っている**。〉)

**特許**。

(**1845年、**ザクセンで、特許を得た**。

**そして——**更新料が、払えなかった**。

〈**——**当時のザクセンの特許は、**毎年、料金を払う必要があった**。

**ケラーは、**貧しい**。

**そして、**事業を始める資金も、無い**。〉

**1846年、**製紙業者**ハインリヒ・フォルター**に、権利の半分を売った**。

**——**そして、**残りも、失効した**。

〈**フォルターが、**改良し、工業化し、**そして、富を得た**。

**——**「フォルター式砕木機」**として、**世界中に売られた**。〉)

**その後の、ケラー**。

(——**彼は、**貧しいまま**だった**。

**〈紙以外にも、**多数の発明をした**。

**——**そして、どれも、金にならなかった**。〉

**1874年、**ドイツの製紙業界が、**彼のために募金をした**。

**そして、**わずかな年金**が、与えられた**。

**1891年、**ドレスデン工科大学から、名誉博士号**。

**1895年、死去**。**七十九歳**。

〈**——**墓は、**クリムミッチャウ**にある**。

**そして、**その墓石は、**製紙業界が、寄付で建てた**。〉)

**同時期の、もう一つの道**。

(——**化学パルプ**。

**〈砕木は、**繊維を、機械的にちぎる**。

**——**繊維が、短く、そして、リグニンが残る**。

**化学パルプは、**薬品で、リグニンを溶かす**。

**——**繊維が、長く、そして、白い**。〉

**1854年、**ソーダ法**(イギリス、ワットとバージェス)。

**1866年、**亜硫酸法**(アメリカ、ティルマン)。

**1879年、**クラフト法**(ドイツ、ダール)。

〈**——**「クラフト」は、**ドイツ語で「強さ」**である**。

**——**この方法の紙が、**強い**からである**。

**〈クラフト紙、段ボール。〉**

**そして、**現在、世界の化学パルプの大半が、この方法である**。〉)

**結果**。

(**(1)**紙が、安くなった**。

〈**——**19世紀後半、**紙の価格が、大幅に下がった**。

**そして、**新聞の発行部数が、爆発的に増えた**。

**〈「イエロー・ジャーナリズム」の時代である。〉**

**そして、**大衆的な出版物、雑誌、通信販売のカタログ、そして——**教科書**。〉

**(2)そして、**森が、切られた**。

〈**——**製紙のための伐採**が、**19世紀末から、大規模になった**。

**スカンディナヴィア、カナダ、そしてアメリカ北部**。

**——**そして、後に、**熱帯林**。〉)

**酸性紙**。

(——**そして、**深刻な問題が、後から現れた**。

**理由**。

〈**(1)**サイジング剤**。

**——**紙がインクを吸わないように、**松脂(ロジン)**を塗る**。

**そして、それを定着させるために、**硫酸アルミニウム(明礬)**を使う**。

**——**これが、**空気中の湿気と反応して、**硫酸を生じる**。

**(2)そして、**リグニン**。

**——**光と酸素で、**分解し、**酸を生じる**。

**〈新聞紙が、黄ばんで、脆くなるのは、これである。〉**〉

**結果**。

〈**——**紙の、セルロースの鎖が、**酸で、切れていく**。

**そして、**紙が、**茶色くなり、**触ると崩れる**。

**「brittle books」**(脆い本)。

**——**寿命は、**数十年から百年程度**である**。〉

**規模**。

〈**——**1980年代、**アメリカ議会図書館が、調査した**。

**「蔵書の約4分の1が、既に脆く、扱うと壊れる」**。

**そして、**世界中の図書館が、同じ状態にあった**。

**——**19世紀後半から20世紀半ばまでの、**すべての本と新聞**である**。

**〈中世の写本のほうが、20世紀の本より、よく残っている。**

**——羊皮紙と、襤褸紙だからである。〉**〉

**対策**。

〈**(1)**脱酸処理**(マス・デアシディフィケーション)。

**——**アルカリを、紙に浸透させる**。

**〈大量に処理する装置が、開発された。**

**——費用が、かかる。〉**

**(2)**媒体の変換**。

**——**マイクロフィルム、そして、デジタル化**。

**〈——そして、そこにも問題がある。**

**マイクロフィルムには「酢酸症候群」がある。**

**デジタルデータは、形式が、数十年で読めなくなる。〉**

**(3)そして、**中性紙**。

**——**1980年代以降、**図書館用の紙は、中性・アルカリ性**で作られるようになった**。

**〈本の奥付に、「この本は中性紙を使用しています」と書いてある。〉**

**——**これで、**新しい本は、数百年、保つ**とされる**。〉)

**そして**。

(——**ケラーが、**貧しいまま死んだ**こと**。

**そして、**彼の紙が、**百年で崩れつつある**こと**。

**——**それでも、**紙が安くなったことが、識字と、新聞と、大衆的な出版を、可能にした**。

**〈それを、失いたい人は、いない。〉**

**——**代償が、**図書館の書棚にある**。)

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