概要
ボストンの若い商人フレデリック・チューダーは、冬の池の氷を熱帯に売ることを思いついた。周囲は正気を疑った。最初の積荷はカリブ海のマルティニークへ運ばれ、大半が溶け、大損を出した。彼は債務者監獄に入っている。それでも続け、鋸で切り出す道具、おがくずによる断熱、そして氷を保つ倉庫を整えた。1833年、カルカッタへの積荷が成功する。ニューイングランドの氷が、インド、キューバ、そしてイギリスへ運ばれた。氷が、遠くから買う商品になった。
場所
42.36°N -71.06°E · アメリカ・マサチューセッツ州
関わった人(1)
フレデリック・チューダーAD1783年9月4日–AD1864年2月6日 · 始めた本文
**着想**。
**1805年**。
(——**兄**ウィリアム**との、雑談から出た、と伝えられる**。
**「西インド諸島の連中に、氷を売ったら、どうか」**。
**——**冗談だった**、とされる**。
**そして、**フレデリック・チューダー**(22歳)は、**本気にした**。
〈**彼が、日記の表紙に書いた言葉**。
**「他人が捨てるところに、**運と富がある**。……**
**恐れず、たじろがず、失敗して死ぬまで、続ける者は、**必ず、成功する**」**という趣旨。〉)
**問題**。
(**(1)**氷は、溶ける**。
**(2)**熱帯の人は、**氷を、見たことがない**。
〈**——**買う理由が、無い**。**使い方も、知らない**。〉
**(3)**運ぶ船が、無い**。
〈**——**「氷を積む」と言うと、**船主が、笑って断った**。〉
**(4)**着いた先に、**保管する場所が、無い**。〉)
**最初の航海**。
**1806年2月13日**。
(——**ボストンから、**カリブ海のマルティニーク**へ**。
**積荷——**約130トン**の氷**。
**船——**自分で、買った**(他に、貸してくれる者がいなかった)。
〈**——**ボストンの新聞が、書いた**。
**「奇妙な冒険が、われわれの目の前で行われている**。……
**……**80トンの氷を積んだ船が、マルティニークへ出帆した**。
**……**これは、冗談ではないと、我々は理解している」**という趣旨。〉
**結果**。
〈**——**大半が、**溶けた**。
**そして、**残ったものも、**売れなかった**。
**——**現地の人が、**扱い方を知らない**。
**〈買って帰る途中で、溶ける。**
**——「濡れた石を、売りつけられた」。〉**
**損失——**約4,000ドル**。〉)
**その後**。
(——**彼は、**続けた**。
**そして、**失敗を、重ねた**。
〈**1809年、1810年——**キューバ、そしてジャマイカ**。
**——**損を、重ねた**。
**そして、**二度、債務者監獄に入った**。
**〈当時、借金が返せないと、投獄された。〉**
**さらに、**債権者から逃げるために、**身を隠した時期がある**。〉)
**解いた問題**。
**(1)断熱**。
(——**最初は、**藁と、干し草**を使った**。
**そして、**おがくず**に、行き着いた**。
〈**——**製材所の、廃棄物である**。
**——**ただ同然で、手に入る**。
**そして、**藁より、はるかに効く**。
**〈空気を、細かく閉じ込める。〉**
**——**溶ける量が、**大幅に減った**。〉
**そして、**船倉に、二重の壁を作り、間におがくずを詰めた**。〉)
**(2)氷倉**。
(——**着いた先に、**倉を建てた**。
〈**ハバナ、そしてチャールストン、サヴァナ、ニューオーリンズ**。
**——**地下に掘り、**厚い壁で囲い、**屋根に隙間を作って、**熱い空気を逃がす**。〉
**——**これで、**着いてから、売り切るまで、保つ**ようになった**。〉)
**(3)需要そのものを、作る**。
(——**ここが、**最も重要である**。
**彼のやり方**。
〈**(a)**喫茶店と、酒場に、**最初、無料で氷を配った**。
**——**冷たい飲み物を、**客に出させる**。
**〈そして、客が、それに慣れる。〉**
**——**次の年から、**金を取る**。
**(b)**医者に、**熱病の患者を冷やすこと**を、勧めた**。
**(c)そして、**アイスクリーム**。
**——**作り方を、**教えて回った**。〉
**——**彼は、後にこう書いている**(要旨)。
**「一度、冷たい飲み物に慣れた者は、**もう、ぬるいものを飲めない**」**。〉)
**(4)切り出し**。
(——**1825年頃、**ナサニエル・ワイエス**(チューダーの雇い人)が、**馬に引かせる、氷切り用の鋤**を発明した**。
〈**——**池の氷に、**格子状の溝を刻む**。
**そして、**割る**。
**——**均一な大きさの、四角い塊が、大量にできる**。
**〈均一だと、積んだときに、隙間ができない。**
**——隙間が少ないほど、溶けにくい。〉**
**——**それまで、**鋸で、手で切っていた**。
**費用が、**十分の一以下**になった、とされる**。〉)
**カルカッタ**。
**1833年9月**。
(——**ボストンから、**約2万4千キロ**。
**喜望峰を回って、**四か月**。
**積荷——**180トン**。
**着いたとき、**約100トンが残っていた**。
〈**——**インドのイギリス人社会が、**熱狂した**。
**新聞が、書いた**。**募金で、**氷倉が建てられた**。
**そして、**関税が、免除された**。〉
**——**これで、**事業が、確立した**。〉)
**規模**。
(**1850年代、**ニューイングランドから、**年間15万トン**以上の氷が、輸出された**。
**行き先——**インド、キューバ、西インド諸島、南米、中国、オーストラリア、そしてイギリス**。
〈**——**ロンドンの「ウェナム湖の氷」**。
**〈マサチューセッツの湖である。**
**——「透明で、味が無い」と、評判になった。**
**そして、その名が、氷そのものの代名詞になり、ノルウェーの湖が「ウェナム湖」と改名されて、そこの氷が「ウェナム湖の氷」として売られた。〉**〉
**そして、国内**。
〈**——**アメリカの都市に、**氷の配達**が、日常になった**。
**「アイスマン」**が、**荷馬車で、家々を回る**。
**そして、**家庭に、**アイスボックス**(木の箱に、上段に氷を入れる)が、置かれた**。
**——**「冷蔵庫」(refrigerator)という語は、もともと、これを指す**。〉)
**終わり**。
(——**製氷機**である**。
**〈次の項目。〉**
**1870年代から、**機械で作った氷が、安くなり始めた**。
**そして、**1890年、暖冬**。
〈**——**ニューイングランドの池が、**十分に凍らなかった**。
**——**天然氷の供給が、**破綻した**。
**そして、**その隙に、**製氷機が、市場を取った**。〉
**さらに——**衛生**。
〈**——**天然氷は、**池の水である**。
**汚染された池から採った氷で、**腸チフスが流行した**、という報告が、相次いだ**。
**——**都市の周辺の池が、**汚れていった**からである**。〉
**——**20世紀の初めに、**天然氷の交易は、消えた**。〉)
**チューダー**。
(——**1864年、死去**。**八十歳**。
**遺産は、**数百万ドル**とされる**。
**〈当時としては、巨額である。〉**
**——**「氷王」**(Ice King)。
**そして、彼は、**コーヒーと、グラファイトと、その他の投機で、**何度も、失敗している**。
**〈氷だけが、当たった。〉**)