← 地図で見る
Event / できごと

襤褸と紙

Rags and paper
AD1719年
重要度 4
ロシア帝国スペイン帝国ポルトガル帝国オスマン帝国サファヴィー朝ネーデルラント連邦共和国大英帝国スウェーデン帝国ポーランド・リトアニア共和国ポーランド・リトアニア共和国デンマーク=ノルウェー神聖ローマ帝国エジプトオーストリア帝国フランス王国スペインモロッコAlgiersイギリスアイルランド王国TunisBrandenburgヴェネツィア共和国NaplesTripolitaniaCyrenaicaプロイセンAD1719年パリ
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1719年の版図を描いています(27勢力)

概要

製紙の原料は、綿と麻の襤褸である。木ではない。だから紙の供給は、古着の量に縛られていた。印刷が広まるほど襤褸が足りなくなり、値が上がり、買い集める業者が街を回り、輸出を禁じる国が出た。1719年、レオミュールがフランス科学アカデミーで、蜂が木を噛んで紙のような巣を作ることを指摘し、木から紙を作れるはずだと述べた。誰も試さなかった。実用になるのは、それから百二十年以上あとである。

場所

パリ
48.86°N 2.35°E · フランス

関わった人(1)

ルネ・レオミュールAD1683年2月28日–AD1757年10月17日 · 指摘した

本文

**原料**。

**紙は、**木から作るもの**——ではなかった**。

(——**19世紀半ばまで、**ヨーロッパの紙の原料は、**綿と麻の襤褸**である**。

**〈リネン、ヘンプ、そして木綿。〉**

**製法**。

〈**(1)**襤褸を、集める**。

**(2)**選別し、**腐らせて**(発酵させて)、繊維をほぐす**。

**(3)**水車で動く杵(スタンパー)で、**叩き潰す**。

**〈後に、オランダ人が「ホランダー」という回転式の叩解機を作った。〉**

**(4)**水に懸濁させ、**簀で漉く**。

**(5)**圧搾し、干す**。〉

**——だから、**紙の供給量は、**古着の量に、縛られている**。〉)

**不足**。

(——**印刷術が、広まった**。

**そして、**紙の需要が、跳ね上がった**。

**——**襤褸が、**足りない**。〉

**起きたこと**。

**(1)**値が、上がった**。

**(2)**襤褸買い**(rag-picker、chiffonnier)**という職業が、成立した**。

〈**——**街を回って、**布切れを買う**、あるいは、**ごみから拾う**。

**ヨーロッパの都市の、**最下層の職業の一つ**である**。

**〈パリの chiffonnier は、19世紀の文学と絵画に、繰り返し現れる。〉**〉

**(3)**輸出を、禁じた国がある**。

〈**——**イギリスは、**襤褸の輸出を禁じた**。

**そして、**アメリカは、**輸入した**。

**〈アメリカ独立戦争のとき、紙の不足が、深刻な問題になった。〉**〉

**(4)そして、**変な法律**。

〈**イングランド、**1666年および1678年の「羊毛による埋葬法」**(Burial in Woollen Acts)。

**——**死者を、**羊毛の布で包んで埋葬すること**を、義務づけた**。

**〈亜麻の布を使ってはならない。〉**

**目的は、**羊毛産業の保護**である**。

**——**そして、副次的に、**亜麻の襤褸が、市場に残る**ことになった**。

**〈この法は、1814年まで、形式的に存続した。〉**〉

**(5)そして、**ミイラの伝説**。

〈**——**19世紀のアメリカで、**エジプトのミイラを包んだ布を、製紙の原料にした**、という話が語られる**。

**——**この話は、**根拠が薄い**、というのが現在の評価である**。

**〈同時代の新聞記事はあるが、実際の製造の記録が、確認できない。**

**風刺と、噂の混合である可能性が高い。〉**

**——それでも、**そういう話が広まるほど、襤褸が不足していた**、ということではある**。〉)

**レオミュール**。

**1719年**。

(**ルネ・レオミュール**(1683〜1757年)——**フランス科学アカデミー**。

**彼が、**論文の中で、こう述べた**(要旨)。

**「アメリカの雀蜂は、**乾いた木の繊維を噛み砕いて、**極めて薄い紙**を作る**。

**……**彼らは、われわれに、**襤褸を使わずに紙を作れること**を、教えているように思われる**。

**……**木の繊維から、紙は、作れるはずである」**。

〈**——**彼は、**そう述べただけ**である**。

**試していない**。

**そして、**誰も、試さなかった**。

**——**百二十年以上、**この一節は、読まれずに、あるいは、読まれても、動かなかった**。〉)

**なぜ、動かなかったか**。

(**(1)**木の繊維は、**リグニン**で固められている**。

〈**——**ほぐすのが、**極めて難しい**。

**襤褸は、既に、繊維になっている**。

**——**布として、**一度、処理されているからである**。〉

**(2)そして、**動力が、無い**。

〈**——**木を砕くには、**大きな力が要る**。

**水車では、**足りないことがある**。〉

**(3)さらに、**必要が、まだ切実でなかった**。

〈**——**18世紀の紙の需要は、**まだ、襤褸で賄えた**。

**——**本当に足りなくなるのは、**19世紀、新聞が大衆のものになってから**である**。〉)

**その間の試み**。

(**1765年、**ヤーコプ・クリスティアン・シェッファー**(ドイツの牧師で博物学者)が、

**——**苔、藁、蔦、蜂の巣、じゃがいも、そして木**から、紙を漉いて、見本帳を作った**。

〈**六巻**。**実物の紙見本が、綴じてある**。

**——**「これらから、紙は作れる」**。

**しかし、**工業化できなかった**。〉

**1800年、**マシアス・クープス**(イギリス)が、**藁と木から紙を作る特許を取り、その紙で本を印刷した**。

〈**——**その本の中で、彼は、**「この本は、木から作った紙に印刷されている」**と書いている**。

**——**会社は、**破産した**。〉)

**そして**。

(——**1844年、**フリードリヒ・ゴットロープ・ケラー**が、**濡らした木を、砥石に押しつけた**。

**——**それで、繊維が、削り出された**。

〈**——**極めて単純な方法である**。

**そして、**それまで、誰もやらなかった**。〉

**——**紙が、木から作られるようになった**。〉)

**その後**。

(——**襤褸買いという職業が、**消えていった**。

**そして——**紙の値段が、**下がり続けた**。

〈**19世紀後半、**新聞の値段が、劇的に下がった**。

**——**一部一ペニー、そして半ペニー**。

**大衆紙が、生まれた**。〉

**そして、**古い紙のほうが、丈夫である**。

〈**——**襤褸から作った紙**(rag paper)**は、**中性か、弱アルカリ性**である**。

**——**五百年前の本が、**いまも、しなやかである**。

**そして、**木材パルプの紙**は、**酸を含む**。

**——**数十年で、**褐色になり、崩れる**。

**〈次の項目で、それを書く。〉**〉)

同じ時代のできごと

ラゴスとベニン湾の交易AD17〜19世紀先住民による西洋批評AD17世紀末〜18世紀初めカルロヴィッツ条約AD1699年1月26日ピアノの発明AD1700年頃元禄文化AD1700年頃広州の茶貿易1700年江戸の下肥AD1700年頃アシャンティ王国AD1701年
AD1719年の世界を地図で見る国境・できごと・生きている人が、その年のものに入れ替わります