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Event / できごと

江戸の下肥

Night soil in Edo
AD1700年頃
重要度 4
ロシア帝国スペイン帝国中央アジアの諸ハン国チベットチュクチ明の滅亡後の軍閥アユタヤ朝Avaシャン諸邦Koryaks日本大越大越朝鮮王朝Itelmenラオスの諸国フィリピンカンボジアLan NaアイヌモシリAD1700年頃江戸
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1700年頃の版図を描いています(21勢力)

概要

百万都市の排泄物は、捨てるものではなく買うものだった。近郊の百姓が船と桶で汲みに来て、代金を払う。長屋では、その代金が大家の収入になり、店賃の一部を肩代わりした。武家屋敷のものは食事が良いとされ、高く取引された。値をめぐる争いが訴訟になり、組合ができ、相場ができた。江戸に大規模な下水が要らなかったのは、これが理由である。同じ時期のロンドンとパリは、汚物を川に流し、そして疫病を得た。

場所

江戸
35.69°N 139.75°E · 日本・東京都(江戸城=現在の皇居)

本文

**問題**。

**百万人が住む都市が、**毎日、出すもの**。

(——**江戸の人口は、**18世紀に、100万人を超えた**とされる**。

**〈同時期のロンドンが約60万、パリが約50万。〉**

**——**一人が一日に出す量を、かりに1リットルとすれば、**一日に1,000トン**である**。〉)

**ヨーロッパの答え**。

(——**川に、流す**。

**あるいは、**溜めて、汲み取って、川に捨てる**。

**あるいは——**窓から、通りに、投げる**。

〈**「ガーディールー」**(gardyloo)——**エディンバラで、窓から汚物を捨てるときの掛け声**。

**フランス語の**gardez l'eau**(水に注意)から、とされる。〉

**結果**。

〈**——**テムズ川と、セーヌ川**。

**1858年、ロンドン、**「大悪臭」**(The Great Stink)。

**——**議会が、開けなくなった**。

**〈カーテンに石灰をしみこませて、なんとかしようとした。〉**

**そして、**コレラ**。

**1832年、1849年、1854年、1866年**。〉)

**江戸の答え**。

(——**売る**。

**〈捨てるのではない。〉**

**近郊の百姓が、**船と、桶を担いで、汲みに来る**。

**そして、**代金を、払う**。〉)

**なぜ、成り立つか**。

(**(1)**近郊が、農地である**。

〈**——**江戸の周りに、**大量の畑がある**。

**そして、**その畑の作物が、江戸で売られる**。

**——**循環している**。〉

**(2)**化学肥料が、無い**。

〈**——**窒素源が、**限られている**。

**魚肥(干鰯)は、**高い**。

**——**下肥が、**最も安く、確実な肥料**である**。〉

**(3)そして、**水運**。

〈**——**江戸は、**運河の街**である**。

**船で、**重いものを、安く運べる**。

**——**荷馬では、割に合わない**。〉)

**値段と、格**。

(——**質が、**違う**と考えられていた**。

〈**大名屋敷、旗本屋敷のもの**——**最も高い**。

**理由——**食事が、良い**。

**〈栄養価が高いから、肥料としての効きが良い、と考えられた。〉**

**次に、**町家**。

**そして、**裏長屋**——**安い**。

**さらに、**牢屋と、宿場**——**最も安い**。〉

**——**そして、**呼び名も、分かれていた**。

〈**「勤番」「辻」「町肥」「たれこみ」**、など。〉)

**長屋の経済**。

(——**九尺二間の裏長屋**。

**そこに、**共同の便所**がある**。

**その汲み取り代金は、**誰のものか**。

**——**大家**(家守)**である**。

〈**——**店子のものではない**。

**そして、**それが、**大家の収入の、無視できない部分**になっていた**。

**——**だから、**店賃が、安く抑えられた**、と論じられている**。

**〈「大家といえば親も同然」の一因である、という説もある。**

**——大家は、店子の排泄物で、収入を得ていた。〉**〉

**そして、**大家が、汲み取り業者と契約する**。

**——**年間いくら、で**。〉)

**争い**。

(——**汲み取りの権利をめぐって、**争いが起きた**。

**〈誰が、どの長屋を汲む権利を持つか。〉**

**そして、**値上げと値下げ**。

**——**組合ができた**。

〈**近郊の村々が、**組合を作って、値の交渉をした**。

**そして、**訴訟になった**。

**——**記録が、残っている**。

**〈1724年、武蔵国の村々が、値上げに反対して、江戸の業者を訴えた。〉**

**そして、**相場**が、立った**。〉

**——つまり、**市場である**。〉)

**規模**。

(——**推定は、幅がある**。

**しかし、**江戸周辺の、数十キロ圏の村々**が、**これに依存していた**。

〈**「江戸の下肥で、関東の畑が肥えた」**。

**そして、**その畑の野菜が、江戸で売られた**。〉

**——**尿も、別に取引された**。

〈**——**藍染めの媒染**、そして**硝石の製造**にも使われた**。〉)

**評価**。

(——**しばしば、**「江戸は、究極の循環型社会だった」**と語られる**。

**——**それは、**半分、正しい**。

**〈確かに、**物質の循環が、成立していた**。

**紙屑買い、古着屋、灰買い、鋳掛屋、そして下肥**。

**——**捨てるものが、極めて少ない**。〉

**そして、**半分、注意が要る**。

〈**(1)**選んだ結果ではない**。

**——**資源が、乏しかった**からである**。

**捨てる余裕が、無かった**。

**(2)**衛生上の問題は、あった**。

**——**寄生虫**である**。

**〈回虫、鉤虫。**

**——生の下肥を畑にまくと、卵が野菜に付く。**

**そして、それを食べる。**

**日本の寄生虫感染率は、戦後まで、極めて高かった。**

**〈1949年の調査で、国民の約6割が回虫に感染していた、という数字がある。〉**

**——化学肥料と、上下水道と、そしてGHQの指導による衛生対策で、1960年代に、ほぼ消えた。〉**

**(3)そして、**都市が大きくなると、成り立たない**。

**——**明治以降、**東京の人口が増え、近郊が宅地になると、**引き取り手が減った**。

**〈逆に、金を払って、捨てるものになった。〉**

**そして、**下水道**が、要るようになった**。〉)

**そして**。

(——**いま、**下水の汚泥から、リンを回収する技術**が、研究されている**。

**理由——**リン鉱石が、**特定の数か国に偏在し、**枯渇が懸念されている**からである**。

**〈モロッコ・西サハラに、世界の埋蔵量の大半がある。〉**

**——**窒素は、**空気から作れる**(ハーバー・ボッシュ法)。

**リンは、**作れない**。

**——**掘るか、**回収するか**である**。

**そして、**それは、江戸がやっていたことである**。)

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