← 地図で見る
Event / できごと

フロート法

The float glass process
AD1959年1月20日
重要度 4
ソビエト連邦大英帝国デンマークアルジェリアポルトガル帝国サウジアラビアエジプトトルコCyraneica (UK Lybia)スウェーデンノルウェーフランスフィンランドスペインFezzan (Frech Lybia)イラクポーランドモロッコイタリアイギリスYugoslaviaルーマニアTripolitana (UK Lybia)シリアアイスランドCzechoslovakiaチュニジアGermany (Soviet)ブルガリアドイツ(イギリス占領地区)ドイツ(アメリカ占領地区)ハンガリーギリシャオーストリアアイルランドヨルダンAD1959年1月20日セント・ヘレンズ
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1959年1月20日の版図を描いています(36勢力)

概要

板ガラスは、鋳てから両面を研磨するしかなかった。材料の二割以上が削り屑になり、費用の大半が磨く工程だった。アラステア・ピルキントンは、溶けたスズの浴の上にガラスを流すことを考えた。比重が違うので浮き、重力と表面張力だけで両面が平らになる。研磨が要らない。実用になるまで七年、廃棄したガラスは十万トンを超えた。以後、世界の板ガラスのほとんどがこの方法で作られている。

場所

セント・ヘレンズ
53.45°N -2.74°E · イギリス・マージーサイド州

関わった人(1)

アラステア・ピルキントンAD1920年1月7日–AD1995年5月5日 · 考案

本文

**問題**。

**平らなガラスを、安く作りたい**。

**それまでの方法**。

**(1)シリンダー法**(吹く)。

(——**円筒に吹いて、切り開いて、平らに延ばす**。

**歪む**。**大きさに限界がある**。)

**(2)鋳込み・研磨法**(plate glass)。

(——**溶けたガラスを、台に流し、ローラーで延ばす**。

**そして、**冷ましてから、両面を研磨する**。

**大きい**。**平らである**。

**しかし——**

〈**研磨に、**莫大な費用がかかる**。

**材料の**20%以上**が、削り屑になる**。

**工程が、**何日もかかる**。

**そして、**研磨機が、巨大で、高価である**。〉)

**(3)フルコール法など**(引き上げる)。

(——**溶けたガラスから、**帯状に、垂直に引き上げる**。

**安い**。

**しかし——**表面に、**わずかな歪みが残る**。

〈**古い家の窓ガラス越しに見ると、**外の景色が、少し波打つ**。

**——それが、この方法のガラスである**。〉

**磨けば直る**。**しかし、磨けば高くなる**。〉)

**——つまり**。

**「平らで、安い」が、両立しなかった**。

**着想**。

**1952年**。

**アラステア・ピルキントン**、32歳。

(——**ピルキントン社の、技術部門の若い管理職である**。

〈**同名だが、**創業家とは、血縁が無い**。

**入社のとき、そのことを説明した**、と伝えられる。〉

**彼が、後年、語った話**。

**——**妻が、皿を洗っていた**。

**流しの水に、**油の膜**が浮いていた**。

**それが、**完全に平らだった**。

〈**この逸話は、彼自身が語ったものである**。

**——ただし、**着想の全体が、その一瞬から出たわけではない**、と本人も述べている**。

**社内では、**以前から、溶融金属の上にガラスを浮かべる案が検討されていた**。

〈**1902年に、アメリカのヘイルズが、似た構想の特許を出している**。**実用にならなかった**。〉〉)

**原理**。

(**(1)**溶けたスズの浴**を作る**。

〈**なぜ、スズか**。

**——**融点が低い**(232℃)**が、**沸点が高い**(2,602℃)。

**つまり、**ガラスが溶けている温度(約1,000℃)で、液体のまま、蒸発しない**。

**そして、**ガラスより、比重が大きい**(スズ 6.5、ガラス 2.5)。

**——だから、**ガラスが、浮く**。

**さらに——**ガラスと、化学的に反応しない**。〉

**(2)**その上に、**溶けたガラスを、連続的に流す**。

**(3)**ガラスは、**自分の重さで、平らに広がる**。

**そして、**下面は、スズの、完全に平らな面に接している**。

**上面は、**表面張力で、平らになる**。

**(4)**そのまま、**ゆっくり冷ましながら、進ませる**。

**(5)**固まったら、**切る**。

**——**研磨が、要らない**。〉

**難しさ**。

(——**理屈は、単純である**。

**実用にするのが、**極めて難しかった**。

**(1)**スズは、酸素があると、酸化する**。

〈**酸化スズが、**ガラスの表面に、斑点として付く**。

**——だから、**浴の上を、窒素と水素の混合気体で満たさなければならない**。

**そして、**その気体が漏れないように、密閉する**。〉

**(2)**厚さが、揃わない**。

〈**溶けたガラスは、**放っておくと、表面張力と重力の釣り合いで、約7ミリになる**。

**——**それより薄くも、厚くも、したい**。

**薄くするには、**引っ張る**(トップロールという歯車状の装置で、両端をつまんで、横に引く)。

**厚くするには、**堰き止める**。

**——この制御が、極めて難しかった**。〉

**(3)**そして、**連続的に、何日も、止めずに動かさなければならない**。

〈**止めると、**スズが固まる**。**そして、**炉が壊れる**。〉)

**七年**。

(**1952年、着想**。

**1953年、**小さな試験装置**。

**1955年、**工場規模の試験ライン**。

**——**そして、**動かない**。

〈**厚さが揃わない**。**表面に、傷と斑点が出る**。

**ガラスが、**スズに引っかかる**。

**——**廃棄したガラスは、**十万トンを超えた**、とされる**。

**会社の、**年間の利益に匹敵する額**が、消えた**。〉

**——それでも、**取締役会は、金を出し続けた**。

〈**当時の会長、**ハリー・ピルキントン**(アラステアの、遠い親族)が、支えた**。

**「もう一年」**を、繰り返した**。〉

**1958年、**ようやく、売れる品質のガラスが出た**。

**1959年1月20日、**公表**。

——**着想から、**七年**である**。)

**結果**。

(**(1)**費用が、劇的に下がった**。

〈**研磨の工程が、丸ごと消えた**。

**——そして、**材料の歩留まりが上がった**。〉

**(2)**品質が、上がった**。

〈**鋳込み・研磨法より、**平らである**。〉

**(3)そして——**世界標準になった**。

〈**ピルキントン社は、**特許を、**広く実施許諾した**。

**——**囲い込まなかった**。

**理由**。

〈**(a)**一社では、世界の需要を満たせない**。

**(b)**許諾料が、莫大な収入になる**。

**(c)そして——**囲い込めば、他社が、迂回する技術を開発する**。〉

**——結果、**世界中の主要なガラス会社が、この方式を採用した**。

**日本では、**旭硝子(現AGC)と日本板硝子**が、1960年代に導入した**。

〈**そして、**2006年、日本板硝子が、ピルキントン社を買収した**。

——**技術を教わった側が、教えた会社を、買った**。〉

**現在、**世界の板ガラスの、90%以上**が、この方法で作られている**。)

**そして、いま**。

(**一本のフロート・ラインは、**幅3〜4メートル、長さ数百メートル**。

**——**24時間、休まず動く**。

**そして、**一度火を入れると、**十年から十五年、止めない**。

〈**止めるのは、**設備の全面的な改修のとき**だけである**。

**——そして、**再稼働に、数か月と、莫大な費用がかかる**。〉

**建てるのに、**数百億円**。

**——**だから、**新規参入が、極めて難しい産業になった**。〉)

**アラステア・ピルキントン**。

(**1970年、**ナイト爵**。

**1973年から1980年、**社長**。

**1995年、死去**。**75歳**。

**——彼は、**この発明で、個人的に巨額の富を得たわけではない**。

〈**会社員である**。

**そして、**特許は、会社のものである**。〉

**彼が、後年、こう言っている**。

**「重要なのは、**着想ではない**。

**それを、**動くものにするまでの、七年間である**」**という趣旨のことを。)

同じ時代のできごと

第二次世界大戦1939年ホロコースト1941年真珠湾攻撃AD1941年12月7日ミッドウェー海戦1942年ベトナム民主共和国の独立宣言AD1945年9月2日国際連合の成立AD1945年10月24日インドネシア独立宣言AD1945年8月17日広島・長崎への原爆投下AD1945年8月6日
AD1959年の世界を地図で見る国境・できごと・生きている人が、その年のものに入れ替わります