概要
リーズの煉瓦積み職人ジョゼフ・アスプディンが、石灰石と粘土を焼いて粉にしたものに特許を取った。固まった色がポートランド島の建築石材に似ているとして、その名を付けた。ただし彼の焼成温度は低く、現在のものとは別物である。息子ウィリアムと、ジョン・グラスコウム・ジョンソンが、原料が溶けかけるまで高温で焼くことで、はるかに強いものを得た。石灰と火山灰を探して回る必要がなくなり、どこでも同じ品質の結合材が作れるようになった。
場所
53.80°N -1.55°E · イギリス・ウェストヨークシャー州
本文
**問題**。
(——**水硬性の結合材**が、要る**。
〈**——**普通の石灰モルタル**(消石灰+砂)は、**空気中の二酸化炭素と反応して、固まる**。
**——**遅い**。**そして、**水中では、固まらない**。〉
**——**そして、**18世紀のイギリスは、**運河と、港と、灯台**を、大量に作っていた**。
〈**——**水に触れる場所**である**。〉)
**先行**。
(**(1)**ジョン・スミートン**(1756年)。
〈**——**エディストン灯台**(イギリス南西端の、沖の岩礁)の建設**。
**——**それまでの灯台が、**二度、失われていた**(火災と、暴風)。
**——**彼は、**水中で固まるモルタル**を、探した**。
**そして、**系統的に、実験した**。
**——**結論**。
**〈——**「良い水硬性石灰は、**粘土を含む石灰石**から得られる」**。**
**——純粋な石灰石ほど、良いと、それまで考えられていた。**
**——逆だった。〉**
**そして、**灯台は、1759年に完成し、**1877年まで、立っていた**(岩礁のほうが、侵食された)。〉
**(2)**ジェイムズ・パーカー**(1796年)——**「ローマン・セメント」**。
〈**——**シェピー島の、**泥灰岩の団塊**を、焼いて、粉にした**。
**——**速く固まる**。
**そして、**天然の材料の産地に、依存する**。〉
**(3)**ルイ・ヴィカ**(フランス、1817年)。
〈**——**石灰石と粘土を、**人工的に、配合して、焼く**。
**——**「人工の水硬性石灰」**。
**——**理論としては、**アスプディンより、先である**。〉)
**アスプディン**。
(**ジョゼフ・アスプディン**(1778〜1855年)。**リーズの、煉瓦積み職人**。
**1824年10月21日、**特許**。
〈**——**「人工石の製造における改良」**。
**内容の要旨**——
**「石灰石を焼き、粉にする**。**
**そこに、**一定量の粘土**を混ぜ、**水を加えて、練る**。**
**それを乾かし、**石灰を焼く窯で、**炭酸ガスがすべて抜けるまで、焼く**。**
**そして、**粉にする」**。〉
**名**。
〈**——**「ポルトランド」**。
**——**イングランド南岸の、**ポートランド島**の石材**。
**〈——白っぽい、良質な石灰岩。**
**——ロンドンの建築に、広く使われていた。**
**セント・ポール大聖堂も、これである。〉**
**——**「固まったときの色が、それに似ている」**、と、彼は言った**。
**〈——商売の、宣伝である。**
**——そして、それが、**世界共通の名になった**。〉**〉
**——**ただし**。
〈**——**彼の焼成温度は、**低い**。
**〈——約1,000度程度と、推定されている。〉**
**——**現在のポルトランドセメントの、**核心は、より高い温度**にある**。
**〈——1,400度以上。**
**——原料が、**部分的に、溶ける**。**
**そして、**クリンカー**という、硬い塊になる。〉**
**——**アスプディンのものは、**現在の基準では、**「ポルトランドセメント」ではない**。〉)
**息子**。
(**ウィリアム・アスプディン**(1815〜1864年)。
〈**——**1840年代、**父の工場を離れ、**ロンドンの近くで、独立した**。
**そして、**より高温で、焼いた**。
**——**その結果、**はるかに強いものが、得られた**。
**〈——現存する、彼の工場の窯の残滓を、分析した研究がある。**
**——クリンカーが、できている。〉**
**——**そして、彼は、**製法を、秘密にした**。
**〈——工場を、囲いで隠し、**わざと、無意味な材料を、目立つ場所に置いた**、と伝えられる。〉**〉
**そして、**ジョン・グラスコウム・ジョンソン**。
〈**——**1840年代後半、**焼きすぎて、溶けかけた塊**を、**捨てずに、粉にしてみた**。
**——**それが、**極めて、強かった**。
**——**「焼きすぎ」**が、**正しい焼き方だった**。
**〈——彼は、後に、**「わたしが、真のポルトランドセメントを作った」**と、主張した。**
**——アスプディン親子との間で、**功績をめぐる論争**があった。〉**〉)
**普及**。
(——**19世紀後半、**急速に**。
〈**(1)**テムズ・トンネル**(1828年から、修理に使われた)。
**(2)**ロンドンの下水道**(1859年から、バザルジェットの大工事)。
**〈——大量に、使われた。〉**
**(3)そして、**世界中へ**。〉
**そして、**鉄と、組み合わされた**。
〈**——**次の項目。〉
**規模**。
〈**——**現在、**世界のセメントの生産量は、**年間、約40億トン**である**。
**——**そして、**その製造が、**世界の二酸化炭素排出の、約7〜8%**を、占める**。
**〈——理由が、二つある。**
**(a)**燃料**。**——1,400度まで、焼く。**
**(b)そして、**石灰石そのもの**。**
**——CaCO₃ → CaO + CO₂。**
**——化学反応として、**二酸化炭素が、必ず、出る**。**
**——これは、**燃料を変えても、消えない**。〉**
**——**そして、**それを減らす研究**が、いま、盛んである**。
**〈——高炉スラグと、フライアッシュの混合。**
**——そして、**ローマ人が使っていた、火山灰**も、その候補である。〉**〉)