概要
フランシスコ会士がオックスフォードとパリで、教皇クレメンス4世に頼まれて、1年で書いた。840ページ。「知識の四つの障害」(権威、習慣、偏見、無知の隠蔽)。「経験科学(scientia experimentalis)」。数学が全ての基礎。光学(レンズ、虹)、暦の改革(グレゴリオ暦の300年前に、誤りを指摘した)、火薬(ヨーロッパで最初の記述)、飛ぶ機械と自走する車の予想。教皇は翌年死んで、読まれなかった。「驚異の博士」。
場所
51.75°N -1.26°E · イングランド
関わった人(1)
ロジャー・ベーコンAD1220年頃–AD1292年頃 · 書いた本文
1266年6月22日。教皇クレメンス4世(元フランスの法律家で、枢機卿の頃にベーコンを知っていた)が手紙を書いた。「あなたが以前私に話した、あの著作を、秘密に、遅滞なく送ってほしい。あなたの修道会のいかなる禁止にも関わらず」。
ベーコンは、まだ書いていなかった。フランシスコ会士は何も持てない。金も写字生も紙もない。借金した。1267年、1年で書いた。『大著作』。続けて『小著作』(要約と補足)『第三著作』(序論。「私は10年、この学問のために2000ポンド以上を使った」)。少年ヨハネスに持たせてローマへ送った。教皇は1268年11月に死んだ。読んだかどうか分からない。
『大著作』7部、現代の刊本で約840ページ。
第1部「無知の原因」。知の4つの障害。(1)弱く不適切な権威への従属、(2)習慣の長さ、(3)無知な群衆の意見、(4)自分の無知を隠すための、見かけの知恵の誇示。「この4つが、人間の全ての悪の源」。アリストテレスも間違える。
第2部、哲学と神学。第3部「言語」。ギリシア語、ヘブライ語、アラビア語を学べ。聖書とアリストテレスの翻訳は誤りだらけだ。
第4部「数学」。「全ての学問の門と鍵」。暦(ユリウス暦は1年に11分ずれて、当時すでに10日ずれていた。「教会は復活祭の日を間違えている」。グレゴリオ暦の315年前)。地理(地球は丸く、西へ行けばインドに着く。この箇所がピエール・ダイイの『世界像』に引用され、コロンブスが読んだ)。
第5部「光学」。アルハゼンとグロステスト。目の構造、反射と屈折、虹(雨滴の中の屈折、42度)、レンズ(「文字を拡大して、老人が読めるように」。眼鏡は1280年代にイタリアで作られた)、望遠鏡の予想。
第6部「経験科学(scientia experimentalis)」。「論証は問いを解決するが、経験なしには心は安心しない」。経験科学は、他の学問の結論を確かめ、他の学問が知らない真理を見つける。磁石。火薬(「硝石と硫黄と炭で、小さな量で、雷のような音と閃光を作れる。子供の玩具で、世界のある地域で使われている」。ヨーロッパで最初の火薬の記述)。飛ぶ機械、動物なしで走る車、海の底を歩く装置。
第7部「道徳哲学」。全ての学問の目的。
彼の「経験」は近代の「実験」ではない。同じ本に、占星術と錬金術と、アンチキリストの到来の予言が書いてある。しかし「権威でなく自分で確かめろ」を13世紀にあれほど強く言った人は、他にいない。
1278年頃、会が彼を「新奇な考え」で幽閉した、と14世紀の年代記が言う。確かでない。1292年、『神学綱要』(未完)。同じ頃、オックスフォードで死んだ。「驚異の博士」。