概要
フランク・ロイド・ライトが、通信販売会社ラーキンのために建てた。中央が五階分の吹き抜けで、そこに事務員の机が整然と並ぶ。管理者は上の階から見下ろせる。空調と、金属製の家具と、壁に折りたたむ椅子まで設計された。効率と衛生と、そして監視である。この形が二十世紀の事務所の原型になり、後に個室化と、また大部屋化を繰り返す。建物は1950年に取り壊され、いまは駐車場になっている。
場所
42.89°N -78.88°E · アメリカ・ニューヨーク州
本文
**依頼主**。
(——**ラーキン石鹸会社**(バッファロー)。
〈**——**通信販売**の会社である**。
**——**石鹸を、**目録で、直接、売る**。
**——**そして、**景品を、付けた**。
**〈——「ラーキン・クラブ」。**
**——主婦が、近所をまとめて注文すると、**家具がもらえる**。**
**——そして、その家具を、**自社で、作り始めた**。〉**
**——**つまり、**大量の、注文書と、伝票**を、扱う会社である**。
**——**そして、**そこに、**数百人の事務員**がいた**。〉
**——**そして、**ダーウィン・D・マーティン**(同社の重役)が、**ライトを、見出した**。
〈**——**彼は、**ライトに、自邸も、設計させている**(マーティン邸、1905年)。〉)
**建物**。
(**1903年設計、1906年竣工**。
〈**——**フランク・ロイド・ライト**、当時、**三十代半ば**。
**——**そして、**彼の、最初の、大規模な公共建築**である**。〉
**構造**。
〈**(1)**中央が、**五階分の、吹き抜け**。
**——**そして、**天窓から、光が入る**。
**(2)**その周りに、**各階の床が、回廊のように、めぐる**。
**(3)**吹き抜けの底に、**事務員の机が、整然と、並ぶ**。
**(4)**そして、**上の階から、**見下ろせる**。
**(5)さらに、**外に、窓が、少ない**。
**〈——線路と、工場に、囲まれていた。**
**——煤と、騒音を、遮断した。〉**〉
**設備**。
〈**——**空調**。
**〈——ろ過し、冷やした空気を、送る。**
**——世界で最初期の、**空調を備えた事務所建築の一つ**とされる。〉**
**——**金属製の家具**。
**〈——木ではない。**
**——火事を、防ぐためであり、そして、**掃除がしやすい**。〉**
**——**そして、**壁に、折りたたむ椅子**。
**〈——ライトが、設計した。**
**——机に、**蝶番で、取り付けてある**。**
**——立てば、跳ね上がる。**
**——そして、**床を、掃きやすい**。**
**〈——そして、**極めて、座り心地が、悪かった**、と伝えられる。〉〉**
**——**さらに、**社内の、食堂、図書室、そして屋上庭園**。〉)
**壁の文字**。
(——**吹き抜けの、四方の壁に、**言葉が、彫られていた**。
〈**——**「誠実。勤勉。忍耐」**(HONESTY INDUSTRY PATIENCE)。
**——**「協力。奉仕。正義」**(CO-OPERATION SERVICE JUSTICE)。
**——**そして、**「思慮。企図。実行」**。
**——**エマソンとカーライルからの引用も、あった**。〉
**——**つまり、**建物が、**説教している**。〉)
**三つの目的**。
(**(1)**効率**。
〈**——**書類が、**最短の経路で、動く**。
**——**そして、**部門が、視線の届く範囲に、ある**。〉
**(2)**衛生**。
〈**——**空気**。**光**。**そして、**掃除**。
**——**当時の事務所は、**暗く、埃っぽく、そして、換気が悪い**。〉
**(3)そして、**監視**。
〈**——**管理者が、**上から、全部を、見られる**。
**——**そして、**事務員は、**互いに、見えている**。
**——**ライト自身は、**それを、「一体感」**として、説明した**。
**——**そして、**後世の批評は、**「パノプティコンである」**と、指摘してきた**。
**〈——ベンサムの、円形監獄。**
**——ただし、**この対比は、しばしば、単純化されすぎる**、という反論もある。**
**——ライトの意図は、**「大聖堂のような、共同の空間」**である、と。〉**〉)
**その後**。
(——**この形が、**二十世紀の事務所の、原型になった**。
〈**——**大部屋に、机を、整然と並べる**。
**——**そして、**管理者は、**端か、上か、ガラス張りの部屋にいる**。〉
**——**そして、**振り子が、揺れた**。
〈**(1)**1950年代**——**大部屋**(アメリカ、そして日本)。
**〈——日本の「島型」の配置。**
**——課長が、島の端に、座る。〉**
**(2)**1960年代**——**「ビューロラントシャフト」**(事務所風景、ドイツ)。
**〈——机を、**あえて、不規則に、置く**。**
**——植木と、衝立で、区切る。**
**——「階層ではなく、仕事の流れで、並べる」。〉**
**(3)**1968年**——**「アクション・オフィス2」**(ハーマンミラー、ロバート・プロプスト設計)。
**〈——可動の間仕切りと、机の、組み合わせ。**
**——「働く人が、**自分で、構成する**」ための設計だった。**
**——そして、**企業が、それを、**安く詰め込むために、使った**。**
**——「キュービクル」。**
**——プロプストは、後年、**「わたしは、怪物を作ってしまった」**という趣旨のことを、語っている。〉**
**(4)**1990年代から**——**再び、**大部屋**。
**〈——「オープンで、風通しの良い」。**
**——そして、**騒音と、集中の困難**についての研究が、大量にある。〉**
**(5)そして、**在宅**。〉)
**建物**。
(——**1939年、**ラーキン社が、破産した**。
〈**——**通信販売が、**小売の店舗網に、負けた**。〉
**1950年、**取り壊された**。
〈**——**買い手が、つかなかった**。
**——**そして、**税の滞納で、市が、差し押さえた**。
**——**解体業者が、**5,000ドル**で、買った**。
**——**それでも、**採算が、合わなかった**、と伝えられる**。
**〈——鉄筋が多く、壊すのに、金がかかった。〉**〉
**——**跡地**。
〈**——**いまは、**駐車場**である**。
**——**そして、**煉瓦の柱が、一本だけ、残っている**。
**〈——2000年代に、その一部が、記念として、整備された。〉**
**——**ライトは、後に、こう書いている**(要旨)。
**「あれは、**わたしの、最初の抗議であった**。……
**……**そして、**取り壊された」**。〉)