概要
都市の音は、長く苦情の対象であって、測定の対象ではなかった。1929年、ニューヨーク市が騒音削減委員会を置く。技術者が測定車で街を回り、地点ごとの数値を記録した。市民から一万を超える苦情が寄せられ、その順位が公表される。交通、地下鉄、ラジオ、そして工事。健康への影響の調査も行われた。数値になったことで、規制が可能になり、同時に「この数値以下なら我慢すべきである」という線も引かれた。測ることは、許すことでもある。
場所
40.71°N -74.01°E · アメリカ合衆国
本文
**それまで**。
(——**都市の音は、**苦情の対象**である**。
〈**——**そして、**測る対象では、無かった**。〉
**古い規制**。
〈**——**古代ローマ**。
**——**ユリウス・カエサルが、**日中の、荷車の通行を、禁じた**、とされる**。
**〈——だから、**夜、荷車が、走った**。**
**——そして、**ユウェナリスが、「眠れない」**と、書いている。**
**——「金持ちだけが、ローマで、眠れる」。〉**
**——**中世の都市**。
**——**「夜、鍛冶をしてはならない」**。
**——**そして、**19世紀のロンドン**。
**〈——**大道の楽師**。**
**——チャールズ・バベッジが、**辻音楽師を、憎み、**
**——それを禁じる法(「バベッジ法」、1864年)**の、成立に、関わった。**
**——そして、彼が死ぬまで、**楽師たちが、彼の家の前で、演奏した**、という話がある。〉**〉
**——**いずれも、**「うるさい」か「うるさくない」**の、二択である**。〉)
**ニューヨーク**。
(**1929年**。
〈**——**市の保健局長**シャーリー・ワイン**が、**騒音削減委員会**を、設置した**。
**——**そして、**それが、**世界で最初期の、**組織的な、都市騒音の調査**である**。〉
**背景**。
〈**——**1920年代のニューヨーク**。
**——**自動車が、**急増した**。
**——**地下鉄が、**延びた**。
**——**そして、**ラジオ**。
**〈——窓を開けて、大音量で、鳴らす。〉**
**——**さらに、**摩天楼の建設**。
**〈——鋲打ち機(リベッター)。〉**〉)
**やったこと**。
(**(1)**苦情を、集めた**。
〈**——**市民に、**葉書で、送らせた**。
**——**約11,000通**。
**——**そして、**分類し、順位を、付けた**。
**〈——上位に、**交通、地下鉄と高架鉄道、ラジオ、そして工事**。**
**——さらに、**牛乳配達の瓶の音**、**
**——「隣人の、ピアノの練習」、**
**——そして、**ペットの鳴き声**。〉〉**
**(2)**測った**。
〈**——**測定車**を、作った**。
**〈——ベル電話研究所が、協力した。**
**——真空管式の、音量計を、積んでいる。〉**
**——**そして、**市内の、**多数の地点**を、回った**。
**——**街路ごとの、数値の地図**が、作られた**。〉
**(3)**健康への影響を、調べた**。
〈**——**病院の周囲**。
**——**そして、**工場の労働者の、聴力**。〉
**(4)そして、**1930年、**報告書**。
〈**——**『都市の騒音』**(City Noise)。
**——**約300ページ**。
**——**そして、**極めて、詳細である**。〉)
**結果**。
(**(1)**規制**。
〈**——**警笛の、不必要な使用の禁止**。
**——**病院の周囲の、**静穏区域**。
**——**そして、**工事の時間の制限**。〉
**(2)**技術**。
〈**——**より静かな、**地下鉄の車輪**。
**——**そして、**建物の、遮音**。〉
**(3)そして、**線**。
〈**——**「この数値以下なら、許される」**。
**——**それが、**規制の、必然的な帰結である**。
**——**測ることは、**同時に、**許すことでもある**。
**〈——「うるさい」という訴えが、**数字に、置き換えられる**。**
**——そして、数字が、基準を、下回っていれば、**「問題ない」**とされる。**
**——実際に、どう感じているかとは、別に。〉**〉)
**その後**。
(**(1)**アメリカ**。
〈**——**1972年、**騒音規制法**(Noise Control Act)。
**——**環境保護庁に、**騒音削減局**が、置かれた**。
**——**そして、**1981年、**予算が、事実上、ゼロにされた**。
**〈——レーガン政権。**
**——「州と地方の問題である」。**
**——法は、**廃止されていない**。**
**——ただし、**執行する部署が、無い**。〉〉**
**(2)**そして、**航空機**。
〈**——**1960年代から、**空港周辺の騒音**が、**最大の争点になった**。
**——**日本の、**大阪空港訴訟**(1981年、最高裁)。
**〈——「過去の損害の賠償は、認める」。**
**——「しかし、**夜間の飛行の差止めは、認めない**」。**
**——そして、この判決が、**長く、議論されている**。〉**〉
**(3)そして、**いま**。
〈**——**WHOが、**騒音による健康被害**を、**繰り返し、報告している**。
**〈——睡眠の妨害。**
**——心血管疾患のリスク。**
**——そして、子どもの学習への影響。**
**——欧州で、**年間、数万年分の健康な生活が、失われている**、という推計がある。〉**
**——**そして、**「静けさ」**が、**次第に、**手に入れにくいもの**になっている**。
**〈——値段が、付いている。**
**——静かな地区の、家賃。**
**——そして、**ノイズキャンセリングのヘッドフォン**。〉**〉
**——**そして、**逆の問題**。
〈**——**電気自動車が、**静かすぎる**。
**——**歩行者が、**気づかない**。
**——**そして、**法で、**「一定の速度以下では、音を、出さなければならない」**と、決められた**。
**〈——2019年から、EUとアメリカ。**
**——そして、**その音を、どう設計するか**が、問題になっている。〉**
**——**百年、**音を、減らそうとしてきて、**
**——**そして、**足す**ことに、なった**。〉)