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Event / できごと

金属類回収令

The metal collection order
AD1941年8月30日
重要度 4
大英帝国ソビエト連邦中国の軍閥イギリス領インド帝国モンゴルチベット日本シャムフランス領インドシナラオスフィリピンカンボジアコーチシナAD1941年8月30日東京
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1941年8月30日の版図を描いています(13勢力)

概要

銅と鉄が足りない。政府は、寺の梵鐘、家庭の鍋と釜、火鉢、仏具、門扉、そして銅像を供出させた。町内会と隣組が割当を負い、出さない家は非国民と呼ばれた。全国で数万口の梵鐘が失われたとされる。渋谷のハチ公像も供出された。集めた金属の多くは、選別と輸送と溶解が追いつかず、山積みのまま終戦を迎えている。物が足りないことより、全員が差し出したという事実のほうが、目的として大きかったと論じられている。

場所

東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都

本文

**不足**。

(——**日本は、**鉄鉱石と、屑鉄と、そして石油を、輸入に頼っていた**。

**主な輸入元は、**アメリカ合衆国**である**。

〈**——**1930年代後半、日本の屑鉄輸入の、**七割以上がアメリカから**、という年がある**。〉

**1940年10月、**アメリカが、屑鉄の対日輸出を、全面禁止した**。

**1941年8月、**石油の輸出も、禁じられた**。

**——**そして、その年の暮れに、戦争が始まる**。〉)

**法令**。

**1941年8月30日、**金属類回収令**(勅令第835号)。

(——**それ以前から、**「献納」**という形の運動は、あった**。

**〈1937年から、「廃品回収運動」。**

**1938年、国家総動員法。〉**

**——**回収令は、**強制の根拠を、法にした**ものである**。

**〈買い上げの形を取る。**

**——ただし、価格は、統制されている。**

**そして、拒否は、事実上、できない。〉**〉)

**何を、集めたか**。

(**(1)**梵鐘**。

〈**——**寺の鐘である**。

**全国で、**約9万口のうち、7万口が供出された**、という推計がある**。

**〈数字には幅がある。**

**——ただし、**大半が失われた**ことは、確かである。〉**

**「音が、消えた」**。

**そして——**戦後、**多くの寺が、鐘を作り直した**。

**〈だから、いま日本の寺にある鐘の多くは、戦後のものである。**

**——古い鐘が残っている寺は、「供出を免れた」という説明が付いている。**

**〈国宝級のもの、そして、輸送が困難だった山寺のもの。〉〉**〉

**(2)**家庭のもの**。

〈**——**鍋、釜、やかん、火鉢、鉄瓶**。

**そして、**仏具**。

**〈仏壇の、燭台と、花立て。〉**

**さらに、**門扉、鉄柵、手すり、そして、マンホールの蓋**。

**——**学校の、鉄棒**。

**〈校庭の遊具が、消えた。〉**〉

**(3)**銅像**。

〈**——**公園と、学校と、駅前の像**。

**そして、**渋谷の、ハチ公像**(1944年8月、供出)。

**〈——作者の安藤照は、その年の5月、東京大空襲で死んでいる。**

**戦後、その息子の安藤士が、二代目を作った。1948年。**

**——いま、そこにあるのは、二代目である。〉**

**そして、**二宮金次郎像**。

**〈全国の小学校にあった。**

**——石のものは残り、銅のものは、供出された。〉**〉

**(4)そして、**橋の欄干、街灯、電車の吊り革の金具**。〉)

**やり方**。

(——**町内会と、隣組**が、**割当を負った**。

〈**隣組**——**1940年、**十戸前後を単位として、制度化された**。

**「隣組」の歌**が、ラジオで流れた**。

**——**「とんとんとんからりと隣組」**。〉

**そして、**割当が、各家に、下りてくる**。

〈**——**「この班から、鉄何貫」**。

**そして、**出さない家は、**近所に、知られる**。

**——**「非国民」**。

**〈物理的な強制より、**この圧力のほうが、効いた**、と論じられている。〉**〉

**そして——**婦人会が、回った**。

〈**大日本婦人会**。

**——**女性が、女性の家を、訪ねる**。

**「お宅の、その火鉢は」**。〉)

**結果**。

(——**集まった**。

**そして——**使われなかった**。

〈**理由**。

**(1)**選別が、追いつかない**。

**——**銅、真鍮、鉄、鉛が、混ざっている**。

**そして、**塗装と、木の部分が、付いている**。

**(2)**輸送が、追いつかない**。

**——**船と、貨車が、足りない**。

**〈そして、船は、沈められていた。〉**

**(3)**溶解の炉が、足りない**。

**——**そして、**炉を動かす石炭も、電力も、足りない**。〉

**——**各地の集積場に、**山積みのまま、終戦を迎えた**。

〈**戦後、**その山から、鍋と釜が、返された**という記録がある。

**——**そして、多くは、**そのまま、屑鉄として処理された**。〉)

**目的**。

(——**では、何のためだったのか**。

**一つの見方**。

〈**——**物資の確保としては、**効率が悪い**。

**そして、**当局も、途中から、それを知っていた**。

**——**それでも、続けた**。

**なぜか**。

**「全員が、差し出した」という事実**が、**目的だったのではないか**。

〈**——**戦争に、**自分が参加している**という感覚**。

**そして、**共同体の中で、**逃げられない**という構造**。

**——**「動員」**とは、**物を集めることではなく、**人を、そこに組み込むこと**である**。〉

**——**この見方は、**戦後の研究で、繰り返し論じられている**。〉)

**同じことが、各国で**。

(**イギリス**——**1940年から、**鉄柵の供出**。

〈**——**ロンドンの、公園と住宅の、鉄柵が、切り取られた**。

**そして、**その多くが、使われずに、**テムズ川に捨てられた**、という話がある**。

**〈——長く噂とされてきたが、近年、川底の調査で、裏づけが得られている。〉**

**——**いまも、**ロンドンの街を歩くと、**低い煉瓦の塀の上に、**切り取られた鉄の跡**が、残っている**。〉

**アメリカ**——**「スクラップ・ドライブ」**。

〈**——**子どもが、**学校で競争して、屑鉄を集めた**。

**そして、**ゴム、紙、そして油脂**も**。

**〈廃油から、グリセリンを取り、火薬を作る。〉**

**——**そして、**アメリカの場合は、**実際に、使われた**。

**〈生産と輸送の能力が、あったからである。〉**〉

**ドイツ**——**同じことを、やった**。

〈**——**そして、**占領地からも、**鐘を持ち去った**。

**〈「鐘の墓場」**——ハンブルクに、ヨーロッパ各地から集められた鐘が、山積みにされていた。

**戦後、**その一部が、**返還された**。**そして、多くは、返らなかった**。〉〉)

**そして**。

(——**失われたもの**。

**梵鐘、銅像、そして、家の道具**。

**——**それらは、**戻らない**。

**そして、**戦後、**鐘を作り直した寺が、**「先代の鐘は、昭和十八年に供出」**と、由緒に書いている**。

**——**日本中の寺に、**同じ一行がある**。)

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