概要
国際自然保護連合が、絶滅のおそれのある種の一覧を作り始めた。当初は手書きのカードで、著名な大型動物が中心である。1994年、基準が数値で定義された。個体数の減少率、分布の面積、そして絶滅の確率。近絶滅、絶滅危惧、危急、そして野生絶滅と絶滅。判定が個人の印象から手続きに変わった。評価済みの種は十六万を超え、その約三割が危機にあるとされる。そして評価されていない種のほうが、はるかに多い。
場所
46.20°N 6.14°E · スイス(CERN・国際機関)
本文
**それまで**。
(——**「あの動物が、減っている」**。
〈**——**そして、**それを、**誰が、どう、判断するか**。
**——**専門家の、印象である**。
**——**そして、**印象は、**争える**。〉
**——**先行するもの**。
〈**——**アメリカバイソン**の減少(19世紀後半)。
**——**リョコウバト**の絶滅(1914年)。
**——**そして、**1948年、**国際自然保護連合**(IUCN)の設立**。
**〈——フォンテーヌブロー。**
**——ユネスコが、後押しした。〉**〉)
**始まり**。
(**1964年**。
〈**——**「動物レッドデータブック」**。
**——**当初は、**ルーズリーフの、カードの束**である**。
**〈——一種につき、一枚。**
**——そして、**赤い紙**に、印刷された。**
**——「赤」は、**危険を、意味する**。〉**
**——**編纂の中心にいたのが、**ピーター・スコット**。
**〈——南極で死んだ、**ロバート・スコット**の息子である。**
**——鳥類学者であり、画家であり、そして、**世界自然保護基金(WWF)のパンダの意匠**を、描いた人物。〉**〉
**——**そして、**最初のものは、**哺乳類と鳥類**が、中心である**。
〈**——**大型で、**目立ち、**そして、**人気のある種**。
**〈——「カリスマ的な大型動物」。**
**——虎、パンダ、鯨、そして象。〉**
**——**昆虫と、菌類と、そして植物は、**ほとんど、入っていない**。〉)
**1994年**。
(——**そして、**ここが、**決定的な転換である**。
〈**——**基準が、**数値で、定義された**。
**——**「専門家が、危ないと思う」から、**「以下の条件のいずれかを、満たす」**へ**。〉
**基準**(現行の、要点)。
〈**A**——**個体数の減少**。
**〈——「過去十年、あるいは三世代で、**何パーセント、減ったか**」。**
**——そして、**原因が、止まっているかどうか**で、閾値が、違う。〉**
**B**——**分布の範囲**。
**〈——「出現範囲が、**何平方キロ未満**か」。**
**——そして、**断片化しているか**。〉**
**C**——**成熟した個体の、絶対数**。
**D**——**極めて、少ない、あるいは、極めて狭い**。
**E**——**定量的な解析による、絶滅の確率**。
**〈——「百年で、**何パーセントの確率で、絶滅する**」。〉**〉
**区分**。
〈**——**絶滅**(EX)。
**——**野生絶滅**(EW)。
**〈——飼育下にだけ、残っている。〉**
**——**深刻な危機**(CR)。
**——**危機**(EN)。
**——**危急**(VU)。
**〈——この三つが、**「絶滅危惧種」**である。〉**
**——**準絶滅危惧**(NT)。
**——**低懸念**(LC)。
**——**データ不足**(DD)。
**——**未評価**(NE)。〉
**——**そして、**この基準が、**世界中で、同じように、適用される**。
〈**——**だから、**比べられる**。
**——**そして、**争うときも、**基準の解釈を、争う**ことになる**。
**〈——「印象が違う」ではなく。〉**〉)
**規模**。
(——**2020年代**。
〈**——**評価済みの種、**約16万3,000**。
**——**そのうち、**絶滅危惧(CR、EN、VU)が、**約4万5,000種以上**。
**——**約28%**である**。〉
**——**そして、**分類群による、偏り**。
〈**——**両生類**——**評価済みの、**約41%**が、危機**。
**——**サンゴ**——**約36%**。
**——**針葉樹**——**約34%**。
**——**哺乳類**——**約27%**。
**——**鳥類**——**約12%**。
**——**そして、**昆虫と菌類は、**そもそも、ほとんど、評価されていない**。〉
**——**記載された種が、**約200万**である**。
〈**——**つまり、**評価済みは、**その一割にも、満たない**。
**——**そして、**記載されていない種は、**その何倍もある**。〉)
**使われ方**。
(**(1)**条約**。
〈**——**ワシントン条約**(CITES)の、付属書の判断の、材料になる**。
**——**そして、**生物多様性条約**の、目標の、指標**。〉
**(2)**国内法**。
〈**——**多くの国が、**自国のレッドリスト**を、この基準で、作っている**。
**〈——日本の環境省のレッドリスト。**
**——そして、それが、**種の保存法**の、指定の、根拠になる。〉**〉
**(3)**そして、**開発の審査**。
〈**——**「ここに、CRの種が、いる」**。
**——**それが、**計画を、止めることがある**。〉
**(4)そして、**資金**。
〈**——**保全の予算が、**リストの区分に、応じて、配分される**。〉)
**問題**。
(**(1)**評価されていないものは、**存在しないのと、同じに、扱われる**。
〈**——**「データ不足」(DD)**の種が、**約1万4,000**ある**。
**——**そして、**近年の研究は、**DDの種の、相当割合が、実は危機にある**、と推定している**。〉
**(2)**そして、**目立つ種に、資源が、偏る**。
〈**——**「カリスマ的な大型動物」**。
**——**そして、**地味な、しかし生態系にとって重要な種**が、**後回しになる**。
**〈——菌類、土壌の生物、そして、昆虫。〉**〉
**(3)そして、**「絶滅した」と、宣言することの、難しさ**。
〈**——**「五十年、見つかっていない」**では、**足りない**。
**——**そして、**「絶滅宣言」の後に、**再発見される**ことがある**。
**〈「ラザロ分類群」。**
**——シーラカンス(1938年)。**
**——そして、近年も、**繰り返し、起きている**。〉**
**——**逆に、**慎重すぎると、**保全の資源が、既にいない種に、使われる**。〉)
**そして**。
(——**リストは、**悪化している**。
〈**——**「レッドリスト指数」**という、**全体の傾向を示す数値がある**。
**——**そして、**それは、**下がり続けている**。〉
**——**同時に、**回復した例も、ある**。
〈**——**ジャイアントパンダ**(2016年、EN から VU へ)。
**——**ザトウクジラ**。
**——**アメリカハクトウワシ**。
**——**そして、**モウコノウマ**(EW から EN へ)。
**〈——飼育下から、野生へ、戻された。〉**
**——**IUCNは、**「これらは、**保全が、効いた証拠である**」**と、述べている**。〉
**——**そして、**評価の作業そのものが、**ほとんど、無償の専門家の手**で、行われている**。
〈**——**数千人の科学者が、**分担して、書いている**。
**——**そして、**その多くが、**本業の傍らである**。〉)