概要
初期の鉄道は、駅馬車の流儀で、乗客ごとに係が名前と行き先を手で書いた券を渡していた。混む駅では窓口に列ができ、売上をごまかされても分からない。ニューカースル・アンド・カーライル鉄道のミルトン駅の駅長トマス・エドモンソンは、行き先を刷り込み、一枚ずつ通し番号を打った厚紙の小さな券を作り、売るときに日付だけを機械で押すようにした。券を渡すのは一瞬で済み、売れ残りの番号を見れば売上が合う。この大きさの券は世界中に広まり、日本の近距離の切符はいまもほぼこの寸法で作られている。
場所
54.94°N -2.73°E · イギリス・カンブリア
本文
**手書き**。
(——**最初の鉄道は、**駅馬車の流儀**を、そのまま、借りた**。
〈**(1)**乗客が、**窓口に、来る**。
**(2)**そして、**係が、**名前と、行き先と、運賃**を、**紙に、書く**。
**(3)さらに、**控えを、**帳面に、写す**。〉
**——**駅馬車なら、**それで、足りた**。
〈**——**一台に、**十人前後**。
**——**そして、**一日に、数本**。〉
**——**汽車は、**違う**。
〈**——**一本に、**何百人**も、乗る**。
**——**発車の前に、**窓口に、**列ができる**。
**——**書いているうちに、**汽車が、出る**。〉
**——**もう一つの、**問題**。
〈**——**係が、**運賃を、受け取って、**書かなければ**、
**——**誰にも、**分からない**。〉)
**エドモンソン**。
(——**トマス・エドモンソン**(1792〜1851年)。
〈**(1)**ランカスターの生まれ**。
**(2)**そして、**家具職人**として、**修業した**。
**(3)さらに、**商売に、**しくじっている**。〉
**——**1836年、**ニューカースル・アンド・カーライル鉄道**に、**雇われた**。
〈**——**イングランドの北を、**東西に、横切る線**。
**——**そして、**すぐに、**ミルトン駅**(のちのブランプトン駅)の、**駅長**になった**。
**——**小さな駅**である**。〉)
**刷っておく**。
(——**書く手間を、**先に、済ませておく**。
〈**(1)**券を、**厚紙**にした**。
**〈——小さい。**
**——**縦に並べて、**束ねられる**。〉**
**(2)**そして、**行き先と、運賃**を、**あらかじめ、刷り込んだ**。
**(3)さらに、**一枚ずつ、**通し番号**を、振った**。
**(4)そして、**売るときに、**日付だけ**を、**機械で、押す**。〉
**——**1837年ごろ、**使い始めた**と、される**。
〈**——**番号は、**初めは、手で、書いた**。
**——**のちに、**番号を、順に刷る機械**も、作った**。〉)
**速さと、帳尻**。
(——**窓口の仕事が、**変わった**。
〈**(1)**棚から、**行き先の束**を、取る**。
**(2)**そして、**一枚、抜いて、**日付を押す**。
**(3)さらに、**金を、受け取る**。
**〈——数秒**で、終わる。〉〉**
**——**そして、**夜**。
〈**——**束に、**残っている番号**を、見る**。
**——**朝の番号から、**引けば、**何枚、売れたかが、分かる**。
**——**それに、**運賃を、掛ければ、**売上が、決まる**。
**——**箱の中の金と、**合わなければ、**誰かが、抜いている**。〉
**——**つまり**。
〈**——**乗客を、**待たせない**ことと、
**——**係を、**信用しなくて済む**ことが、
**——**同じ、**一枚の厚紙**で、**片づいた**。〉)
**広まる**。
(——**エドモンソンは、**別の鉄道に、移った**。
〈**——**マンチェスター・アンド・リーズ鉄道**。
**——**そして、**仕組みの、使用料**を、取って、**各地の鉄道**に、**広めた**。〉
**——**1842年、**鉄道清算所**(Railway Clearing House)が、**できた**。
〈**——**イギリスの鉄道は、**会社ごとに、別々**だった**。
**——**会社をまたいで、**乗る客**の運賃を、**分け合う**必要がある**。
**——**同じ形の券が、**通し番号**で、**数えられる**ことが、**その前提**になった**。〉
**——**券の寸法は、**ほぼ一つに、揃った**。
〈**——**縦およそ三センチ、**横およそ六センチ**。
**——**そして、**世界中の鉄道**が、**この形を、使った**。〉)
**日本で**。
(——**明治の鉄道も、**この形を、**持ち込んだ**。
〈**——**硬い厚紙の切符**。
**——**「硬券」**と、呼ばれた**。
**——**改札で、**鋏を、入れる**。〉
**——**イギリスでは、**1980年代の終わり**に、**やめた**。
〈**——**最後の一枚は、**1989年**に、売られたと、される**。〉
**——**日本では、**形が、残った**。
〈**——**券売機が、**磁気の裏の付いた、**薄い紙**を、出すようになっても**、
**——**近距離の切符の、**大きさ**は、**ほぼ、エドモンソンの寸法**のままである**。
**——**自動改札機が、**この大きさを前提**に、**作られている**。〉)
**残ること**。
(——**待たされる理由**は、**窓口の中**にあった**。
〈**——**客の数ではなく、**一人ぶんの手間**。〉
**——**エドモンソンは、**窓口を、増やさなかった**。
〈**——**一人ぶんの手間**を、**前の晩**に、**移した**。
**——**刷る**のは、**客のいないとき**でよい**。〉
**——**同じ考えが、**百年後**に、また現れる**。
〈**——**[[sabre-reservation]]**は、**乗る前に、**席を、決めておく**。
**——**そして、**窓口では、**確かめるだけ**にする**。〉)