概要
ナポレオン戦争中、イングランド銀行が兌換を停止し、少額の紙幣を大量に出した。それまで紙幣に馴染みの無かった人々が使い、そして偽札が氾濫する。偽造は死罪だった。1797年から1829年に三百人以上が絞首刑になり、その多くが、偽と知らずに受け取った貧しい者である。1818年、銀行は偽造されにくい紙幣の公募を行った。透かし、彫刻、特殊なインク、そして機械彫り。技術の競争が始まり、そこから紙幣印刷という産業が生まれた。
場所
51.51°N -0.13°E · イギリス・イングランド
本文
**制限令**。
(**1797年2月**。
〈**——**イングランド銀行が、**金との交換を、停止した**。
**——**「銀行制限令」**(Bank Restriction Act)。
**理由**。
**〈——フランスとの戦争。**
**——そして、**フランス軍が、ウェールズに上陸した**という報せ(フィッシュガード)。**
**——取り付けが、起きた。〉**
**——**そして、**「一時的な措置」**とされた**。
**——**それが、**1821年まで、二十四年、続いた**。〉
**そして、**少額紙幣**。
〈**——**それまで、**イングランド銀行の最低の額面は、**10ポンド**である**。
**〈——労働者の、**数か月分の賃金**に、あたる。**
**——だから、庶民は、**紙幣を、見たことが無い**。〉**
**——**1797年から、**1ポンド券と、2ポンド券**を、出した**。
**——**そして、**それが、**日常に、流れ込んだ**。〉)
**偽札**。
(——**そして、**氾濫した**。
〈**——**理由**。
**(1)**当時の紙幣は、**極めて、簡素である**。
**〈——白い紙に、**黒い活字と、簡単な線**。**
**——透かしは、あった。**
**——そして、**手書きの署名**。**
**——真似るのが、難しくない。〉**
**(2)**そして、**受け取る側が、**本物を、知らない**。
**〈——初めて、紙幣を、手にした人々である。〉**
**(3)さらに、**利が、大きい**。〉
**数**。
〈**——**イングランド銀行に、**偽と判定されて、持ち込まれた紙幣**。
**——**1797年、**約1,800枚**。
**——**1817年、**約31,000枚**。〉)
**死罪**。
(——**そして、**罰**。
〈**——**偽造は、**死罪**である**。
**——**そして、**「偽と知りながら、所持し、あるいは、使うこと」**も**。
**〈——後者が、**問題である**。〉**〉
**数**。
〈**——**1797年から1829年**。
**——**偽造関連の罪で、**300人以上**が、絞首刑になった**。
**——**そして、**さらに多数**が、**流刑**(オーストラリア)になった**。
**〈——「偽と知って、使った」罪を認めれば、**死刑を免れて、流刑**になる、という取引が、**
**——検察から、しばしば、持ちかけられた。**
**——そして、**多くが、それに応じた**。〉**〉
**——**そして、**その多くが、**貧しい者である**。
〈**——**釣り銭で、受け取った**。
**——**賃金として、渡された**。
**——**そして、**それを、使った**。
**——**偽と、知らずに**。
**〈——立証の責任が、**事実上、被告の側にあった**。**
**——「知らなかった」ことを、示さなければならない。〉**〉
**——**抗議**。
〈**——**風刺画家**ジョージ・クルックシャンク**(1818年)。
**——**「銀行券——ではない」**(Bank Restriction Note)。
**〈——紙幣の形をした、**風刺の版画**である。**
**——透かしの代わりに、**絞首台**。**
**——署名の代わりに、**死神**。**
**——そして、**縄で吊るされた人々**が、描かれている。〉**
**——**それが、**大量に、売れた**。
**——**そして、**世論が、動いた**、と、彼は、後に、主張している**。
**〈——実際の影響については、**議論がある**。**
**——それでも、**強い印象を、残した**。〉**〉
**——**そして、**1832年、**偽造への死刑が、廃止された**。〉)
**技術**。
(**1818年**。
〈**——**イングランド銀行が、**「偽造されにくい紙幣」の、公募**を、行った**。
**——**そして、**約70の、提案が、寄せられた**。
**——**そのどれも、**採用されなかった**。
**〈——「決定的なものが、無い」。〉**〉
**——**それでも、**そこから、技術が、積み上がった**。
〈**(1)**透かし**(watermark)。
**——**紙を、漉く段階で、**厚みを、変える**。
**——**そして、**光に、かざすと、見える**。
**(2)**彫刻凹版**(intaglio)。
**——**溝を、彫る**。
**——**そして、**インクが、盛り上がる**。
**——**指で、触れると、**分かる**。
**〈——複写では、**再現できない**。〉**
**(3)**機械彫り**(guilloche、ロゼットエンジン)。
**——**歯車の組み合わせで、**極めて細かい、規則的な曲線**を、彫る**。
**〈——ジェイコブ・パーキンス**(アメリカ)が、**
**——「鋼板彫刻」の技法とともに、イギリスへ、持ち込んだ(1819年)。**
**——そして、彼の会社が、後の、**紙幣印刷の会社**になる。〉**
**(4)**特殊なインクと、紙**。
**(5)そして、**連番**。〉)
**産業**。
(——**そして、**「紙幣を刷る」ことが、**産業になった**。
〈**——**パーキンス・ベーコン社**(イギリス)。
**〈——そして、**世界最初の切手(ペニー・ブラック、1840年)**も、この会社が、刷った。〉**
**——**ウォーターロー・アンド・サンズ**。
**——**そして、**トマス・デ・ラ・ルー社**。
**〈——いまも、**世界の、多くの国の紙幣とパスポート**を、刷っている。**
**——「国が、自分で刷れない」場合に、発注する。〉**
**——**さらに、**アメリカン・バンクノート社**。〉
**——**そして、**逸話**。
〈**——**1925年、**ポルトガル銀行券事件**。
**——**アルトゥール・ヴィルジリオ・アルヴェス・レイス**という男が、**
**——**ウォーターロー社に、**偽の委任状**を持ち込み、**
**——**本物の版で、本物の紙幣を、刷らせた**。
**〈——総額、**当時のポルトガルの通貨流通量の、約1%**。**
**——そして、彼は、その金で、**銀行を、買おうとした**。**
**——理由。**
**——「自分が、中央銀行を支配すれば、**発覚しない**」。**
**——発覚した。**
**——そして、ポルトガル銀行は、**ウォーターロー社を、訴えて、勝った**。〉〉**)
**そして、いま**。
(——**競争は、**続いている**。
〈**——**ホログラム**。
**——**光を、当てる角度で、**色が変わるインク**。
**——**そして、**微細な文字**。
**——**さらに、**「EURion 定数」**。
**〈——紙幣に、**五つの小さな円が、特定の配置**で、印刷されている。**
**——そして、**複写機と、画像編集ソフトが、それを、検出して、拒否する**。**
**——最初に、それが公表されたのは、2002年である。**
**——そして、それが、どう機能しているかは、**完全には、公開されていない**。〉**〉
**——**そして、**紙幣そのものが、**減っている**。
〈**——**電子決済**。
**——**そして、**偽造の問題が、**別の形に、移った**。
**〈——不正な送金。**
**——そして、**なりすまし**。〉**〉)