概要
仕立屋のトマス・ハイラム・ホールディングは、少年期に幌馬車の隊で北米の草原を渡った経験を持っていた。自転車が普及すると、軽い装備で野営して回る仲間を集め、1901年に自転車野営者協会を作る。1908年の『キャンプ入門』が広く読まれた。屋外で寝ることが、貧しさではなく選択になる。同じころスカウト運動が始まり、野営が少年の教育に組み込まれた。都市に住む者が、そこから離れることを、わざわざ買うようになった。
場所
51.51°N -0.13°E · イギリス・イングランド
本文
**それまで**。
(——**屋外で寝ることは、**しなければならない人が、するもの**である**。
〈**——**兵士**。
**——**船乗り**。
**——**羊飼いと、猟師**。
**——**行商と、旅の職人**。
**——**そして、**行き場の無い者**。〉
**——**そして、**それが、**法で、罰せられていた**。
〈**——**1824年の浮浪者法**(前の項目)。〉
**——**つまり**。
〈**——**「好きで、外で寝る」**という考えが、**そもそも、無い**。〉)
**ホールディング**。
(**トマス・ハイラム・ホールディング**(1844〜1930年)。
〈**——**イギリス、ダーウェン**の生まれ**。**仕立屋**である**。
**——**そして、**九歳のとき**。
**——**家族が、**モルモン教に、改宗した**。
**〈——そして、アメリカへ、移住した。〉**
**——**1853年、**幌馬車の隊で、**アメリカの草原を、渡った**。
**〈——約1,900キロ。**
**——そして、**毎晩、野営した**。〉**
**——**九歳のときの、その経験が、**生涯、残った**、と、彼は、書いている**。〉
**——**その後、**イギリスへ戻り、**仕立屋として、成功した**。
〈**——**そして、**1877年、**スコットランドで、**カヌーと野営の旅**をした**。
**——**その記録を、**本にした**。〉)
**自転車**。
(——**1890年代**。
〈**——**安全型自転車**が、**普及した**。
**〈——前後同じ大きさの車輪。**
**——チェーン駆動。**
**——そして、空気入りタイヤ。**
**——それまでの、**前輪が巨大な「オーディナリー」**より、**
**——はるかに、乗りやすい。〉**
**——**そして、**「自転車の狂騒」**(bicycle craze)。
**——**中産階級が、**遠くへ、行けるようになった**。〉
**——**そして、**問題**。
〈**——**行った先に、**泊まる場所が、無い**。
**——**あるいは、**宿が、高い**。〉
**1901年、**「自転車野営者協会」**(Association of Cycle Campers)。
〈**——**ホールディングが、**新聞に、呼びかけた**。
**——**そして、**最初の会合に、**六人**が、来た**。
**——**それが、**世界最初の、キャンプの団体**とされる**。〉)
**1908年**。
(——**『キャンプ入門』**(The Camper's Handbook)。
〈**——**そして、**極めて、実際的である**。
**——**軽い、テントの作り方**。
**〈——彼は、**仕立屋**である。**
**——だから、**自分で、テントを、縫った**。**
**——そして、**極めて、軽い**。**
**——「一人用で、数ポンド」。〉**
**——**寝袋、調理器具、そして、**装備の重さの一覧**。
**——**さらに、**「どこに、張ってよいか」**。
**〈——「必ず、**地主に、断ること**」。**
**——そして、「ごみを、残さないこと」。**
**——「火を、消すこと」。〉**〉
**——**そして、**協会が、**育っていった**。
〈**——**1907年、**自転車以外も、受け入れた**(Camping Club)。
**——**そして、**1910年、**イギリスのキャンプ・クラブ**として、統合された**。
**——**初代の会長が、**ロバート・ベーデン=パウエル**。〉)
**スカウト**。
(——**同じころ**。
〈**——**1907年8月、**ブラウンシー島**(イギリス南岸)。
**——**ベーデン=パウエル**が、**二十人の少年を集めて、**八日間、野営した**。
**〈——彼は、**ボーア戦争の、マフェキング包囲戦の英雄**である。**
**——そして、そこで、**少年を、伝令として使った**経験を、持っていた。〉**
**——**1908年、**『スカウティング・フォア・ボーイズ』**。
**——**そして、**運動が、**世界中に、広がった**。〉
**——**そして、**野営が、**教育に、組み込まれた**。
〈**——**「自立」**。
**——**「規律」**。
**——**そして、**「自然の中で、**自分で、なんとかする」**。〉
**——**同時に**。
〈**——**それが、**帝国の、軍事的な準備**でもある、という批判が、**当時から、あった**。
**〈——制服。**
**——階級。**
**——そして、**「祖国への忠誠」**。〉**
**——**そして、**各国が、**それぞれの形で、**採用した**。
**〈——ドイツのワンダーフォーゲル。**
**——そして、その後の、**より問題のある運動へ**の、系譜も、指摘されている。〉**〉)
**そして、産業**。
(——**「離れること」が、**買えるものになった**。
〈**(1)**装備**。
**〈——テント、寝袋、燃料、そして、**軽量化**。**
**——そして、それが、**巨大な市場**になった。〉**
**(2)**場所**。
**〈——**キャンプ場**。**
**——「自然の中で、寝る」ために、**予約して、金を払う**。**
**——そして、**電源と、水道と、シャワーがある**。〉**
**(3)そして、**自動車**。
**〈——1920年代、アメリカの「オート・キャンプ」。**
**——そして、それが、**モーテル**の、祖先である。〉**〉
**——**そして、**皮肉**。
〈**——**同じ都市の、**同じ夜**。
**——**公園で、**野宿する人が、追い出されている**。
**——**そして、**数十キロ離れた場所で、**別の人が、金を払って、テントに、泊まっている**。
**〈——同じ行為である。**
**——そして、**一方は、罪であり、**一方は、余暇である**。〉**
**——**違いは、**「選んだかどうか」**である**。
〈**——**そして、**その区別を、**法が、うまく扱えたことは、**あまり、無い**。〉)