概要
古英語で3182行。デンマークの王の館を襲う怪物グレンデル、その母、そして50年後の竜。イェーアト族の英雄ベーオウルフが、素手で、剣で、そして竜と相打ちで死ぬ。異教の話を、キリスト教徒の詩人が書いた。写本は一つだけ(ノウェル写本)。1731年、コットン家の図書館の火事で縁が焦げた。1936年、トールキンが「怪物と批評家」で、これは歴史の史料でなく詩だ、と言った。
場所
51.51°N -0.13°E · イギリス・イングランド
本文
話。デンマークのフロースガール王が館ヘオロットを建てた。夜、沼の怪物グレンデル(カインの子孫)が来て、12年、戦士を食う。イェーアト族(スウェーデン南部)の若者ベーオウルフが14人と船で来る。夜、館で、素手でグレンデルと組んで腕を引きちぎる。グレンデルは沼で死ぬ。翌夜、母が来て王の側近を殺す。ベーオウルフは沼に潜り、水底の館で巨人の剣で母を殺す。帰る。50年、イェーアトの王。竜が、盗まれた杯のために目覚めて国を焼く。老王は11人と行く。10人が逃げ、若いウィーグラーフだけが残る。剣が折れ、竜の牙が首に。ウィーグラーフが竜の腹を刺し、ベーオウルフが短剣で切る。竜は死に、王は毒で死ぬ。「宝を見せてくれ」。火葬。塚。「彼は王たちの中で最も穏やかで、最も優しく、民に最も親しく、名誉を最も求めた」。
3182行。古英語。頭韻(各行、前半と後半が、強勢のある音節の頭の子音で結ばれる)。ケニング(「鯨の道」=海、「戦いの光」=剣)。物語の中に別の物語(フィンとヒルデブルフ、シゲムンド、ヘレモード)。キリスト教徒の詩人が、キリスト教以前の英雄を、悲しみを持って書いた。神は一つ(旧約の神。キリストは出てこない)。運命(ウィルド)。「運命は、勇気を持つ者を、しばしば救う」。
いつ書かれたか。8世紀から11世紀まで説がある。舞台は6世紀のデンマークとスウェーデン(ヒュゲラーク王のフリースラント遠征は、フランクの史料から521年頃と分かる)。
写本は一つ。「ノウェル写本」。大英図書館 Cotton Vitellius A.xv。1000年頃、2人の写字生。『東方の驚異』『アレクサンドロスの手紙』『ユディト』と一緒に綴じられている(怪物の本、と言う人がいる)。ローレンス・ノウェル(16世紀の古物家)が持ち、ロバート・コットン卿が集めた。1731年10月23日、ウェストミンスターのアッシュバーナム・ハウスでコットン図書館が焼けた。写本は縁が焦げ、その後100年、縁が崩れ続けた。1786〜87年、デンマーク人トルケリンが2つの写しを作った(それでいま失われた文字の一部が分かる)。1815年、トルケリンのラテン語訳で最初の刊本。「デンマークの叙事詩」として。
1936年、J・R・R・トールキンが英国学士院で講演した。「ベーオウルフ:怪物と批評家」。それまでこの詩は歴史と言語の史料で、「怪物の話が真ん中にあるのが残念だ」と言われていた。トールキンは「怪物こそが中心だ。若さと老い、勝利と敗北、生と死を、詩人は怪物と竜で描いた。これは詩だ」。以来、詩として読まれた。『ホビット』の竜スマウグと盗まれた杯は、ここから来ている。
シェイマス・ヒーニーの訳(1999年)は最初の一語 Hwæt を「So.」と訳した。ジョン・ガードナー『グレンデル』(1971年)は怪物の側から書いた。焦げた縁の写本は、いま、大英図書館のガラスの箱の中にある。