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Event / できごと

アスピリン

Aspirin
AD1897年
重要度 4
大英帝国ロシア帝国グリーンランドオスマン帝国ドイツ帝国アラビアポルトガル帝国エジプトペルシアスウェーデン=ノルウェースペイン帝国オーストリア=ハンガリー帝国フランススペイングレートブリテン及びアイルランド連合王国Algeria (FR)モロッコイタリアルーマニアブルガリアアイスランドギリシャデンマークセルビアボスニア・ヘルツェゴビナAD1897年エルバーフェルト
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1897年の版図を描いています(25勢力)

概要

柳の樹皮が熱と痛みに効くことは古くから知られ、そこからサリチル酸が取り出されていた。だがそのままでは胃を荒らし、飲み続けられない。バイエル社のフェリックス・ホフマンが、分子の一部をアセチル基に置き換えた。効き目は残り、胃への負担が減る。父のリウマチのためだったという話が伝わるが、上司アルトゥル・アイヒェングリュンが自分の指示だったと後に主張した。彼はユダヤ人で、ナチス期に会社の歴史から名前を消された。世界で最も多く飲まれた薬の、功績の帰属は、いまも定まっていない。

場所

エルバーフェルト
51.26°N 7.15°E · ドイツ・ヴッパータール

本文

**柳**。

(——**古い**。

〈**——**エーベルス・パピルス**(BC16世紀ごろ)に、**柳の葉**の記述がある**。

**——**ヒポクラテス**が、**柳の樹皮の煎じ汁**を、**産後の痛みに、使ったと伝えられる**。

**——**そして、**中国でも、日本でも、**柳の枝が、歯の痛みに、使われた**。

**〈——「楊枝」の「楊」は、柳である。〉〉**

**——**1763年**。

〈**——**エドワード・ストーン**(イギリスの聖職者)が、**王立協会に、報告した**。

**——**柳の樹皮を、**乾かして、粉にする**。

**——**五十人の、**熱のある患者に、与えた**。

**——**効いた**。

**〈——彼の理屈は、**間違っていた**。**

**——「湿った土地に育つ木は、**その土地の病に効く**はずだ」。**

**——結論だけが、正しかった。〉〉)**

**取り出す**。

(**(1)**1828年**。

〈**——**ヨハン・ブフナー**(ミュンヘン)が、**苦い結晶を、取り出した**。

**——**「サリシン」**と名付けた**。

**〈——ラテン語のsalix(柳)から。〉〉**

**(2)**そして、**1838年**。

〈**——**ラファエレ・ピリア**(イタリア)が、**サリシンから、**サリチル酸**を、作った**。〉

**(3)さらに、**1853年**。

〈**——**シャルル・ジェラール**(フランス)が、**アセチルサリチル酸**を、合成している**。

**——**不純で、**安定しなかった**。

**——**そして、**先へ、進まなかった**。〉

**(4)そして、**1874年**。

〈**——**フェノールから、**サリチル酸を、大量に作る方法**(コルベ=シュミット反応)が、工業化された**。

**——**安くなった**。

**——**そして、**広く、使われた**。〉)

**胃**。

(——**サリチル酸は、**効く**。

〈**——**熱を下げ、**痛みを鎮め、**炎症を抑える**。

**——**リウマチに、**特に、使われた**。〉

**——**だが**。

〈**(1)**味が、**耐えがたい**。

**(2)**そして、**胃が、荒れる**。

**〈——吐き気。**

**——胃の痛み。**

**——出血することもある。〉**

**(3)さらに、**続けて飲めない**。

**〈——リウマチは、**続けて飲まなければ、意味がない**。〉〉)**

**1897年**。

(——**エルバーフェルト**。

〈**——**バイエル社**の、**染料部門から出発した会社**である**。

**——**その研究室**。〉

**——**フェリックス・ホフマン**(1868〜1946年)。

〈**——**8月10日の実験ノート**に、**アセチルサリチル酸の合成が、記されている**。

**——**サリチル酸の、**水酸基**を、**アセチル基**に、置き換える**。

**——**純度が高く、**安定していた**。〉

**——**何が、変わったのか**。

〈**——**胃の中では、**そのまま、通る**。

**——**そして、**体の中で、**サリチル酸に、戻る**。

**——**効き目は、**残り、**負担が、減る**。

**〈——「プロドラッグ」**という考え方の、早い例である。〉〉**

**——**名前**。

〈**——**アセチル(Acetyl)の**A**。

**——**そして、**スピラエア**(セイヨウナツユキソウ、サリチル酸を含む植物)の**spir**。

**——**さらに、**当時の薬名によくあった語尾**in**。

**——**「Aspirin」**。〉)

**誰の功績か**。

(——**長く、**ホフマンの話**として、語られてきた**。

〈**——**父が、**リウマチで、苦しんでいた**。

**——**サリチル酸が、**飲めない**。

**——**だから、**息子が、**飲めるものを、作った**。

**——**美しい話である**。〉

**——**1949年**。

〈**——**アルトゥル・アイヒェングリュン**(1867〜1949年)が、**論文を書いた**。

**——**「アスピリンは、**私の指示で、**ホフマンが、合成した**」。

**——**自分の名が、**会社の歴史から、消えている**ことを、指摘した**。〉

**——**彼は、**ユダヤ人である**。

〈**——**ナチス期に、**会社を、追われた**。

**——**財産を、**奪われた**。

**——**そして、**1944年、**テレージエンシュタットの収容所に、送られた**。

**〈——七十七歳。**

**——生き延びた。〉**

**——**論文を書いた、**その年に、死んだ**。〉

**——**1999年**。

〈**——**ウォルター・スニーダー**が、**バイエルの社内文書を、調べ直した**。

**——**アイヒェングリュンの主張を、**支持する**という結論を、出した**。

**——**バイエル社は、**これを、認めていない**。〉

**——**つまり**。

〈**——**世界で最も多く飲まれた薬の、**功績の帰属**が、

**——**百年以上、**定まっていない**。

**——**そして、**その定まらなさに、**人種の政策が、関わっている**。〉)

**どう効くのか**。

(——**分かったのは、**七十年以上、後**である**。

〈**——**1971年、**ジョン・ベイン**。

**——**プロスタグランジン**の合成を、**阻害する**。

**〈——シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を、**不可逆に、塞ぐ**。〉**

**——**そして、**1982年、**ノーベル賞**。〉

**——**プロスタグランジンは**。

〈**——**炎症を、**起こす**。

**——**痛みの感じやすさを、**上げる**。

**——**熱を、**上げる**。

**——**そして、**血小板を、**固まらせる**。〉

**——**最後の一つ**。

〈**——**だから、**少量のアスピリンが、**心筋梗塞と脳梗塞を、防ぐ**。

**——**1970年代から、**大規模な試験が、行われた**。

**——**痛み止めとして生まれた薬が、**血の薬になった**。

**〈——ただし、**出血の危険もある**。**

**——「健康な人が、予防で飲むべきか」は、**近年、否定的な結果が続いている**。〉〉)**

**残ること**。

(——**柳の樹皮から、**三千年以上**。

〈**——**効くことは、**ずっと、知られていた**。

**——**取り出したのが、**十九世紀**。

**——**飲めるようにしたのが、**1897年**。

**——**なぜ効くのかが、**分かったのが、**1971年**。〉

**——**順番が、**逆である**。

〈**——**仕組みを知ってから、**薬を作った**のではない。

**——**効くものを、**まず、使った**。

**——**そして、**百年後に、**理由を、知った**。〉

**——**そして**。

〈**——**痛みを、**日常的に、消せるようになった**。

**——**医者にかからずに、**棚から取って、飲める**。

**——**その便利さが、**次の段では、**別の薬で、繰り返される**。

**——**[[opioid-crisis]]**。〉)**

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