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Event / できごと

算盤と読み書き算盤

The soroban and popular numeracy
AD17世紀
重要度 4
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このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD17世紀の版図を描いています(20勢力)

概要

中国の算盤が室町の終わりに伝わり、日本で珠の数を減らした形に変わった。上に一つ、下に四つ。1627年、吉田光由の『塵劫記』が出る。米の売買、面積、両替、旅の日数を、絵入りで解いてみせた。海賊版が溢れるほど売れ、寺子屋の教科書になった。武士のためではなく、商人と百姓のための数学である。答えを載せない問題を巻末に置く習慣が生まれ、解いた者がまた本を出す。和算という、実務から離れた数学の伝統が、その連鎖から育った。

場所

江戸
35.69°N 139.75°E · 日本・東京都(江戸城=現在の皇居)

本文

**珠を、減らす**。

(——**中国の算盤**。

〈**——**上に、**二つ**。

**——**下に、**五つ**。

**——**上の珠が、**五**を表す。

**——**下の珠が、**一**を表す。〉

**——**なぜ、その数なのか**。

〈**——**十六進法**が、要ったからである**。

**〈——重さの単位。**

**——一斤は、**十六両**。**

**——「一斤も、十六両も、同じこと」という言い回しが、中国語にある。〉**

**——**上二つ、下五つなら、**一桁で、十五まで、表せる**。〉

**——**日本に、**入る**。

〈**——**室町の終わりごろ**。

**——**明との貿易を通じて**。

**——**「そろばん」という語の由来は、**「算盤」の中国語音**とされるが、**確定していない**。〉

**——**そして、**減った**。

〈**(1)**まず、**上が、一つになる**。

**〈——江戸の初めごろ。〉**

**(2)**そして、**下が、四つになる**。

**〈——明治の終わりから、大正にかけて、**標準になった**。**

**——1938年、**尋常小学校の教材**が、この形に、統一された。〉**

**——**十進法だけを、**扱うなら、**これで、足りる**。

**——**そして、**珠が少ないほうが、**指の動きが、速い**。〉)

**塵劫記**。

(**1627年**。

〈**——**吉田光由**(1598〜1673年)。

**——**京都の、**豪商の家に生まれた**。

**——**角倉了以の一族である**。

**〈——大堰川や、高瀬川を開いた、あの角倉。〉**

**——**中国の『算法統宗』**を、**下敷きにしている**。〉

**——**題**。

〈**——**「塵劫」**は、**仏教の語**。

**——**極めて長い時間、**あるいは、**極めて小さいもの**。

**——**「塵劫記」で、**「じんこうき」**と読む**。〉

**——**中身**。

〈**(1)**米や、**銀の売り買い**。

**(2)**そして、**両替**。

**〈——金、銀、銭の、三つの通貨が、**変動する相場**で、動いていた。〉**

**(3)さらに、**田の、**面積**。

**(4)そして、**土木**。

**〈——堤の土の量。**

**——材木の、体積。〉**

**(5)さらに、**利息**。

**(6)そして、**旅の日数と、路銀**。

**(7)さらに、**遊び**。

**〈——ねずみ算。**

**——「一月に、つがいが、十二匹の子を産み……」。**

**——薬師算。**

**——継子立て(ヨセフスの問題)。**

**——鳥と亀(鶴亀算)。〉〉**

**——**そして、**絵が、入っている**。

〈**——**木版**。

**——**場面が、**描かれている**。

**——**読み物としても、**面白い**。〉)

**売れ方**。

(——**海賊版が、**溢れた**。

〈**——**吉田自身が、**版を、改めるたびに、**「これが本物である」**と、書き添えている**。

**——**それでも、**追いつかなかった**。〉

**——**そして、**寺子屋の教科書**になった**。

〈**——**「読み書き算盤」**。

**——**この三つが、**庶民の教育の、標準**になる**。

**——**算盤が、**その三番目である**。〉

**——**なぜ、要ったのか**。

〈**(1)**商いが、**複雑だった**。

**〈——三種類の通貨。**

**——地域ごとに違う、**枡の大きさ**。**

**——先物に近い、**米の取引**([[dojima-rice-exchange]])。〉**

**(2)**そして、**年貢の計算**。

**〈——村の側が、**検算できなければ、**言われるままになる**。〉**

**(3)さらに、**土木と、**測量**。〉)

**遺題**。

(——**吉田が、**始めたこと**。

〈**——**1641年の版から、**巻末に、**答えを載せない問題**を、置いた**。

**——**「遺題」**(いだい)。〉

**——**そして、**起きたこと**。

〈**(1)**解いた者が、**自分の本を、出す**。

**(2)**そして、**その巻末に、**また、新しい問題を、置く**。

**(3)さらに、**次の者が、**それを、解く**。〉

**——**「遺題継承」**。

〈**——**百年以上、**続いた**。

**——**本が、**本を、呼ぶ**。

**——**そして、**問題が、**どんどん、難しくなっていった**。〉

**——**行き着いた先**。

〈**——**実用から、**離れた**。

**——**高次方程式**。

**——**円周率の、**精密な値**。

**——**行列式に近い考え方**。

**——**円や、球の、**体積と、面積**。

**〈——関孝和**(1642?〜1708年)。**

**——ベルヌーイ数を、**ヤコブ・ベルヌーイと、ほぼ同時期に、独立に、見つけている**。**

**——行列式も、**ライプニッツと、独立に**。〉〉**

**——**和算**。

〈**——**そして、**算額**。

**——**解けた問題を、**額に書いて、**神社に、奉納する**。

**——**九百面ほどが、**現存している**。

**〈——農民や、商人の名が、書かれているものがある。**

**——数学が、**趣味であり、**競技であり、**信仰の対象でもあった**。〉〉)**

**その後**。

(——**明治**。

〈**——**西洋の数学が、**入る**。

**——**そして、**和算は、**学校教育から、外された**。

**〈——1872年の学制で、**「筆算」を、教えることになった**。**

**——算盤か、筆算か、という論争があった。**

**——一度は、算盤が、外された。**

**——だが、**商業の現場が、それを、許さなかった**。〉〉**

**——**残った**。

〈**——**商業学校で、**教え続けられた**。

**——**そして、**銀行と、商店で、**使われ続けた**。

**——**日本で、**電卓が、算盤を、置き換えたのは、**1970年代である**。〉

**——**そして、**いま**。

〈**——**珠算の教室が、**まだ、ある**。

**——**目的が、**変わった**。

**——**計算のためではなく、**暗算のため**である**。

**〈——「珠算式暗算」。**

**——頭の中に、**盤を、思い浮かべる**。**

**——熟練者の脳を調べると、**言語ではなく、**空間を扱う部位が、働いている**という報告がある。〉〉)**

**残ること**。

(——**[[counting-rods]]は、**置く場所が、要った**。

〈**——**そして、**崩れる**。

**——**算盤は、**珠が、串に通っている**。

**——**持ち運べて、**崩れない**。〉

**——**だが、**大きな違いは、**そこではない**。

〈**——**算盤は、**途中の式を、残さない**。

**——**珠を、**動かせば、**前の状態は、消える**。

**——**筆算は、**残る**。

**〈——だから、**間違いを、後から、追える**。**

**——そして、**式そのものを、**操作の対象にできる**。〉**

**——**代数が、**筆算の側から、育った**のは、**そのためである**。〉

**——**それでも**。

〈**——**『塵劫記』が、やったことは、**大きい**。

**——**数学を、**武士や、僧のものから、**町人と、百姓のもの**にした**。

**——**そして、**そこから、**世界水準の数学が、**独立に、育った**。〉)

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