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Event / できごと

駕籠と輿

Palanquin and litter
AD17世紀
重要度 3
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このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD17世紀の版図を描いています(21勢力)

概要

人が人を担いで運ぶ乗り物は、東アジアにも南アジアにも地中海にもあった。日本では、高い身分の者が乗る輿と、庶民も使える駕籠が分かれる。江戸には辻駕籠が並び、料金の相場ができ、担ぎ手の組合ができた。だれが乗ってよいかは幕府が細かく決めていて、乗り物は身分を外から見せる装置でもあった。動力は人の脚であり、坂と天候と担ぎ手の体力が、そのまま所要時間になる。車輪ではなく人を選んだのは、道が舗装されていないところでは、そのほうが速く、揺れなかったからである。

場所

江戸
35.69°N 139.75°E · 日本・東京都(江戸城=現在の皇居)

本文

**人が、人を、担ぐ**。

(——**車輪より、古い**。

〈**——**エジプトの、**担ぎ椅子**。

**——**アッシリアの、**浮き彫り**。

**——**そして、**ローマの、レクティカ**(lectica)。

**〈——横になったまま、運ばれる。**

**——共和政の末期には、**贅沢の象徴**として、非難された**。〉**

**——**インドの、**パールキー**(palki)。

**〈——「パランキン」という語は、ここから来ている。**

**——ポルトガル人が、インドで覚え、ヨーロッパへ持ち帰った。〉**

**——**中国の、**轎**(きょう)。

**——**そして、**朝鮮の、輿**(よ)。〉

**——**道具としては、**単純である**。

〈**——**棒**が、二本**。

**——**その間に、**座るところ**。

**——**そして、**担ぐ人**が、二人から、八人**。〉)

**日本**。

(**(1)**輿**。

〈**——**古くは、**天皇と、上級の貴族のもの**。

**——****鳳輦**(ほうれん)、**葱花輦**(そうかれん)。

**——**そして、**乗ることが、身分そのものを、示した**。

**〈——「輿に乗れる者」と、「乗れない者」。**

**——だれが、どの形のものに、乗ってよいか。**

**——それが、**朝廷の、序列表**でもあった。〉**〉

**(2)**そして、**駕籠**。

〈**——**中世の終わりから、**近世にかけて、広まった**。

**——**輿より、**簡素で、軽い**。

**——**一本の棒に、**籠のような箱を、吊る**。

**〈——だから「駕籠」。**

**——竹で編んだものも、板で作ったものもある。〉**

**——**そして、**庶民も、乗れた**。〉)

**江戸**。

(**(1)**辻駕籠**。

〈**——**町の辻に、**空の駕籠が、客を待つ**。

**——**「駕籠屋」**が、担ぐ**。

**——**そして、**二人一組**が、基本である**。

**〈——先棒(さきぼう)と、後棒(あとぼう)。**

**——歩調を合わせるために、**掛け声**を出す。〉**〉

**(2)**そして、**値段**。

〈**——**距離で、決まる**。

**——**「日本橋から品川まで」**のように、**区間ごとの相場**があった**。

**——**そして、**交渉もされた**。

**〈——法外な額を吹っかける者もいて、**繰り返し、触書が出ている**。〉**

**——**夜は、**割増**である**。

**——**そして、**雨と、坂は、値が上がる**。〉

**(3)**さらに、**組**。

〈**——**担ぎ手は、**仲間の組織を作った**。

**——**縄張りがあり、**新規の参入は、簡単ではない**。

**——**そして、**それは、宿場の人足**とも、**繋がっている**。〉)

**幕府が、決めたこと**。

(——**乗り物は、**規制の対象だった**。

〈**(1)**だれが、**乗ってよいか**。

**〈——身分による。**

**——武家、僧侶、医者、そして老人と病人。**

**——「乗物」(引き戸の付いた、上等なもの)に乗れるのは、**限られた者**である。〉**

**(2)**そして、**台数**。

**〈——江戸の町の駕籠の数に、**上限を設けた**ことがある。**

**——増えすぎると、道が詰まり、**人足が農村から出てしまう**。〉**

**(3)さらに、**形**。

**〈——大名の乗物の、**装飾の程度**まで、定めがあった。〉**〉

**——**つまり**。

〈**——**乗り物は、**移動の手段であると同時に、**

**——**身分を、**外から見せる装置**でもあった**。

**——**そして、**それを、**制度が、支えていた**。〉)

**なぜ、車輪でなかったのか**。

(——**日本にも、**牛車**は、あった**。

〈**——**平安の貴族が、**使っている**。

**——**だが、**近世には、**人が乗る車は、ほとんど無くなった**。〉

**——**理由は、**いくつか、重なる**。

〈**(1)**道**。

**〈——舗装されていない。**

**——そして、山がちで、坂が多い。**

**——雨で、ぬかるむ。**

**——車輪は、**轍を掘り、道を壊す**。〉**

**(2)**そして、**橋**。

**〈——大河に、**橋を架けない**方針があった。**

**——渡しの舟に、車は載せにくい。〉**

**(3)さらに、**荷を運ぶのは、馬と人**であった**。

**〈——「駄賃」は、駄馬に付ける賃である。〉**

**(4)そして、**担ぐほうが、揺れない**。

**〈——悪路では、**車輪のほうが、遥かに、揺れる**。**

**——人の脚は、**段差を、吸収する**。〉〉**

**——**だから**。

〈**——**技術が無かったのではない**。

**——**道と、地形と、制度に対して、**人が担ぐほうが、合理的だった**。〉)

**そして、終わり**。

(——**明治のはじめ**。

〈**——**[[rickshaw]]**が、現れる**。

**——**車輪が、**入った**。

**——**そして、**道の改修が、同時に、進んだ**。

**〈——数年で、駕籠は、ほとんど消える。〉**

**——**山道と、**祭礼の行列**にだけ、残った**。〉

**——**いま**。

〈**——**神輿**は、**輿の形を、そのまま、留めている**。

**——**そして、**それを担ぐのは、いまも、人である**。〉)

**残ること**。

(——**人を運ぶのに、**人の脚を使う**。

〈**——**それは、**もっとも古く、**もっとも長く続いた方法である**。

**——**そして、**担ぐ側と、担がれる側**が、**必ず、分かれる**。

**〈——だれが担ぎ、だれが乗るのか。**

**——その問いは、**乗り物の形より、長く残った**。〉〉**

**——**動力を、**人から、外へ出す**。

〈**——**馬へ([[omnibus]])。

**——**蒸気へ。

**——**そして、**電気へ**。

**——**その道筋のいちばん手前に、**担ぐという方法が、ある**。〉)

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