概要
毎週おなじ日に、遠くの出来事が同じ紙面に並ぶ。顔も知らない何万人が、同じ朝に同じことを読む。国民という感覚は、この習慣の上に育った。
場所
ストラスブール
48.57°N 7.75°E · フランス・グラン・テスト地域圏
48.57°N 7.75°E · フランス・グラン・テスト地域圏
本文
1605年、ストラスブールの印刷業者ヨハン・カロルスが、 手書きで売っていた報告を活字で刷りはじめた。 毎週おなじ日に出る。いま知られている最初の定期刊行の新聞になる。
それまでも、遠くの出来事を伝える刷り物はあった。 違いは「定期」にある。 戦争が起きたから刷るのではなく、決まった日が来るから刷る。 何も起きていなければ、そう書く。
読者の側にも変化が起きる。 同じ町の何百人が、同じ朝に同じ記事を読む。 互いに顔は知らないが、いま同じことを知っている、と感じられるようになる。
『想像の共同体』は、この習慣を国民という感覚の土台に置いた。 新聞は一日で古紙になる本で、それを毎朝みんなが同時に読む儀式が、 会ったこともない何万人を一つのまとまりに感じさせた、という筋になる。
出典(1)
ベネディクト・アンダーソン(白石隆、白石さや 訳) 『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』第3章 国民意識の起源(出版資本主義)