人物

張道陵

Zhang Daoling
AD34年 – AD156年(享年122・推定)
後漢重要度 4

概要

張陵。沛の人。太学で学び、江州の令になり、辞めて山に入った。鶴鳴山で太上老君から「正一盟威の道」を授かった、と伝える。米五斗。符水。24の治。孫の張魯。天師。「張天師」は63代を経て、龍虎山から台湾へ。

関わったできごと(1)

五斗米道の始まりAD142年 · 始めた

本文

張道陵は、本名を張陵という。道陵の名は後世の呼び方である。後漢の初め、34年に沛国の豊県(いまの江蘇省)で生まれたと道教の伝承は伝える。漢の高祖の軍師、張良の8世の子孫だともいうが、これも後世の系譜で、確かめようがない。生没年も含め、彼の生涯の大半は道教の側の伝承によって知られている。

張道陵の肖像
張道陵の肖像Wikimedia Commons Hannah · Public domain

伝承によれば、張陵は都の太学で学び、儒教の五経に通じたが、やがて不老長生の術に心を移した。蜀の江州(いまの重慶)の令を務めたあと官を辞め、山にこもって修行したという。のちに龍虎山(江西省)で丹薬を練ったという話もあるが、龍虎山との結びつきは後世になって強調されたものとみられる。

確かな史料に近いのは、3世紀に書かれた『三国志』の張魯伝である。そこには、張魯の祖父の張陵が蜀に身を寄せ、鵠鳴山(鶴鳴山、いまの四川省大邑県)で道を学び、道書を作って民を惑わしたこと、道を受ける者に米五斗を出させたので世の人は「米賊」と呼んだことが、短く書かれている。陳寿は、張陵を宗教の開祖ではなく、民を惑わせた者として記録した。

道教の側の伝えでは、142年、鶴鳴山にこもる張陵の前に太上老君(神格化された老子)が降り、「正一盟威の道」を授けて天師に任じたという(五斗米道の始まり)。教団は病を罪の結果と考えた。病人は静かな部屋で自分の過ちを省み、罪を書いた文書を天・地・水の神々に捧げて許しを請う。符を焼いた水を飲ませることも行われた。入信の者が納める米五斗は、およそ1人の1か月分の食料にあたる量とされる。こうした具体的な作法の記録の多くは、孫の張魯の時代のものとして伝わっている。

五斗米道の始まりに関わる図版:Hanzhong baoheriver
五斗米道の始まりWikimedia Commons Charlie fong · Public domain

教団は信者を24の「治」という教区に分け、それぞれに指導者を置いた。役人が税を取り、法で裁く代わりに、教団が米を集め、罪を悔い改めさせる。宗教の組織が、そのまま小さな政府の役目を果たしていた。『老子』に注をつけて「道」を神として読む『老子想爾注』は、張陵または張魯の作とされ、20世紀に敦煌の写本の中から見つかった。

伝承では、張陵は156年、123歳で、妻と弟子の王長・趙昇とともに白昼に天へ昇ったとされる。4世紀の葛洪の『神仙伝』は、彼を仙人の一人として描いている。教えは子の張衡(嗣師)を経て孫の張魯(系師)に受け継がれ、この三代を「三張」と呼ぶ。張魯は漢中に拠って約30年にわたり政教一致の国を営み、215年に曹操に降った。『三国志』によれば、張魯の漢中では街道に義舎という宿を置いて米や肉を備え、旅人に必要なだけ食べさせたが、取りすぎれば鬼神の罰で病になると教えた。法を犯した者も三度までは許し、それから罰したという。同じ頃、華北では別の宗教結社が大反乱を起こしていた(黄巾の乱)。五斗米道と太平道は、どちらも後漢末の民衆の不安から生まれた教団である。

張道陵(五斗米道の始祖)の肖像
張道陵(五斗米道の始祖)の肖像Wikimedia Commons Werner, E. T. C. (1864-1954) · Public domain

張陵の子孫を名乗る家は、のちに龍虎山に本拠を置き、「張天師」として代々教団を率いた。宋や元の朝廷はこの家に称号を与え、元の時代には道教の一派の長として公に認められた。この流れは正一教と呼ばれ、全真教と並ぶ道教の二大宗派の一つになった。

天師の家は63代の張恩溥まで続いたとされる。張恩溥は1949年、国共内戦の末に台湾へ渡り、1969年に台北で死んだ。その後の継承をめぐっては一族の中で争いがあり、龍虎山の天師府はいま中国本土の観光地として整えられている。

張陵が何をした人なのか、確かなことは少ない。しかし、病の治療と罪の告白を軸に、信者から米を集めて地域をまとめる教団を作ったという骨組みは、『三国志』の短い記事と道教の伝承の両方から読み取れる。孔子の子孫と並んで、中国で最も長く続いた家の一つの、始まりの人である。

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