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Event / できごと

氷室

The ice houses
AD700年頃
重要度 3
古シベリアの狩猟採集民突厥ツングース系の人びと吐蕃吐蕃渤海ウイグルカルルク高句麗タイ系の諸王国日本Nan-Zhaoアイヌ新羅ヒンドゥーの諸国真臘チャンパドヴァーラヴァティーAD700年頃奈良
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD700年頃の版図を描いています(19勢力)

概要

冬に山で採った氷を、藁と土で覆った穴に入れ、夏まで保つ。『日本書紀』は仁徳朝の話として伝え、律令では宮内省に主水司が置かれ、氷池と氷室が管理された。旧暦六月一日の氷の節句に、朝廷が氷を配る。清少納言が削り氷に甘葛をかけたものを書いている。氷は献上品であり、贈られる相手の格を示した。同じ仕組みは、ペルシアのヤフチャール、中国の凌陰、ローマの雪の貯蔵にもある。暑い季節に冷たいものを出せることが、権力の見せ方だった。

場所

奈良
34.69°N 135.81°E · 奈良県

本文

**仕組み**。

(——**冬に、**山の池と、谷の氷を、切り出す**。

**それを、**穴に入れる**。

**そして、**藁と、茅と、土で、覆う**。

〈**——**断熱**である**。

**そして、**斜面に掘って、**溶けた水が、抜けるようにする**。

**〈溜まると、氷が、それに触れて、速く溶ける。〉**〉

**——**夏まで、**保つ**。〉)

**記録**。

**『日本書紀』**。

(——**仁徳天皇の時代**の話として、記されている**。

**要旨**——

〈**額田大中彦皇子**が、**闘鶏**(つげ、現在の奈良県山辺郡)**で狩りをしていた**。

**野の中に、**室のようなもの**が見えた**。

**土地の者に問うと、**「氷室である」**と答えた**。

**「どうやって蔵し、どう使うのか」**。

**「土を一丈余り掘り、草で覆い、その上に茅と萱を厚く敷き、氷を取ってその上に置く。夏になっても消えません。**

**……**熱い時期に、水と酒に浸して用います」**。

**——皇子が、それを天皇に献じた**。

**そして、**以後、**十二月に氷を蔵し、三月から用いる**ことが、定めになった**。〉

〈**——**この記述の年代(5世紀)を、そのまま史実として扱うことはできない**。

**しかし、**律令期に、この制度があったこと**は、確かである**。〉)

**制度**。

(——**律令**。

**宮内省の下に、**主水司**(もひとりのつかさ)。

**——**水と、氷と、粥を、司る**。

**そして、**各地に、**氷池**と**氷室**が、指定された**。

〈**——**山城、大和、河内、近江、丹波**。

**〈平安京の周辺に、**氷室の地名が、いまも残っている**。

**——京都市北区の「氷室」。〉**〉

**そして——**「氷を献じる」ことが、**貢納の一つ**になった**。〉)

**氷の節句**。

(**旧暦六月一日**。

——**朝廷が、**氷室の氷を、臣下に配る**。

〈**——**「氷様奏」**(ひのためしのそう)。

**まず、**氷室から届いた氷の、厚さと量を、天皇に奏上する**。

**——**それが、**その年の豊凶を占う**、とされた**。

**〈厚ければ、豊作。〉**

**そして、**配る**。

**——**誰に、どれだけ配るか**が、**身分を、そのまま表す**。〉

**——**この日は、**「氷の朔日」**として、後世まで残った**。

〈**——**江戸期、**加賀藩が、金沢の氷室の氷を、将軍に献上した**。

**六月一日に間に合うよう、**飛脚が、昼夜、走った**。

**〈——溶けながら、運ぶ。**

**着いたときには、わずかしか残っていない。**

**——それでも、届けることに、意味があった。〉**

**そして、**金沢では、いまも、**「氷室饅頭」**を、七月一日に食べる**。〉)

**削り氷**。

(**『枕草子』、第四十二段**。

**「あてなるもの」**(上品なもの)。

〈**——**「削り氷にあまづら入れて、あたらしき鋺に入れたる」**。

**——**削った氷に、**甘葛**(あまづら)**をかけて、新しい金属の椀に入れたもの**。

**〈甘葛——**蔦の樹液を煮詰めた、甘味料**。

**——製法が、長く失われていた。**

**近年、再現の試みがなされている。〉**

**——**千年前の、かき氷である**。〉

**そして、それが「あてなるもの」であるということ**。

〈**——**滅多に手に入らない**。

**そして、**手に入る立場にある人が、限られている**。〉)

**世界の、同じもの**。

(**ペルシア——**ヤフチャール**(yakhchāl、「氷の穴」)。

〈**——**紀元前から**。

**日干し煉瓦の、**円錐形の建物**。

**——**内部は、地下に深く掘られている**。

**そして、**壁が、極めて厚い**(下部で2メートル以上)。

**特殊な漆喰**(sarooj——砂、粘土、卵白、石灰、山羊の毛、灰)で、**防水と断熱**をした**。

**さらに、**バードギール**(風採り塔)で、**風を引き込み、**蒸発で冷やす**。

**——**砂漠の真ん中で、**夏に、氷を保った**。

**〈そして、**冬の夜、浅い水路に水を張り、**放射冷却で氷を作った**。

**——気温が氷点より高くても、晴れた夜は、**空へ熱が逃げて、水が凍る**。〉**

**——**いまも、**イランの各地に、遺構が立っている**。〉

**中国——**凌陰**(りょういん)。

〈**——**『詩経』に、**「二の日に氷を鑿ち、三の日にこれを凌陰に納む」**という句がある**。

**そして、**周礼**に、**凌人**という官が記されている**。

**——**発掘されている**。

**〈陝西省、春秋時代の秦の凌陰の遺構。〉**〉

**ローマ**。

〈**——**山から雪を運び、**穴に詰めた**。

**セネカが、**それを、**贅沢として、批判している**。

**——**「彼らは、雪を買う」**。

**そして、**ネロが、**雪で冷やした飲み物を好んだ**、と伝えられる**。〉)

**共通するもの**。

(——**どこでも、**氷は、**権力の見せ方**だった**。

**〈暑い季節に、冷たいものを出せる。**

**——それは、**冬から夏まで、それを保つ組織を持っている**ということである。**

**穴を掘り、氷を切り、運び、番をする人間を、動かせる。〉**

**——**そして、それは、**19世紀に、商品になった**。

**そして、20世紀に、**機械が作るものになった**。)

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