概要
キケロ家の奴隷として生まれ、BC53年に解放された。以後、主人の姓を名乗る。秘書であり、書記であり、校正者であり、そして事実上の共同編集者だった。キケロの書簡と演説の多くは、彼が写し、整理し、死後に編纂したものである。速記の体系を作ったとされ、その記号はティロ式と呼ばれた。健康を害しやすく、キケロが心配する手紙が残っている。主人が殺された後も長く生き、伝記を書いたと伝えられるが、失われた。
関わったできごと(1)
ティロの速記BC63年 · 体系を作った本文
**マルクス・トゥッリウス・ティロ**(BC103年頃〜BC4年頃)。
(——**生年も、没年も、確かではない**。
**ヒエロニュムスが、**「百歳で死んだ」**と記している**。
**〈だから、逆算されている。〉**〉)
**身分**。
(——**キケロ家の、**奴隷**として、生まれた**。
〈**——**家内奴隷**である**。
**そして、**教育を、受けた**。
**〈——**有能な奴隷に、**読み書きとギリシア語を教える**のは、**当時、投資として、普通のことである**。〉**〉
**BC53年、**解放された**。
〈**——**キケロが、**五十三歳**。**ティロは、**五十歳前後**である**。
**——**弟のクィントゥスが、兄に宛てた手紙**が、残っている**。
**要旨**——**「ティロを解放したと聞いて、**とても嬉しい**。……
**……**彼が、われわれの奴隷であるより、**友であるほうが、ふさわしい**」**。
**——**そして、**解放された奴隷は、**元の主人の氏族名を、名乗る**。
**だから、**「マルクス・トゥッリウス・ティロ」**である**。〉)
**仕事**。
(**(1)**書記**。
〈**——**キケロが、**歩きながら、あるいは、寝椅子で、口述する**。
**ティロが、**書き取る**。〉
**(2)**校正と、編集**。
〈**——**キケロの手紙に、**「お前が直してくれ」**という趣旨の指示が、繰り返し出てくる**。〉
**(3)**財産の管理**。
〈**——**キケロの、**別荘と、農地の経営**にも、関わっていた**。〉
**(4)**そして、**判断**。
〈**——**キケロが、**彼に、意見を求める手紙**がある**。〉)
**手紙**。
(——**キケロの書簡集に、**ティロ宛のものが、**二十通以上**、残っている**。
**そして、その調子**。
〈**——**BC50年、ティロが、**ギリシアのパトラエで、病に倒れた**。
**キケロは、**帰国の途上である**。
**——**彼を、置いていくことになった**。
**そして、**次々に、手紙を書いた**。
**「わたしは、お前のことを思って、**心が休まらない**。……
**……**急いで来ようとしてはならない**。**船に乗るな**。**
**……**お前が回復することだけが、**わたしの望みである」**(要旨)。
**そして、**別の手紙**。
**「お前が、どれほど、あらゆる場面で、**わたしにとって、必要な存在であるか**……
**……**しかし、**お前自身のことを、まず考えよ**」**(要旨)。〉
**——**主人が、解放奴隷に宛てて書くものとして、**異例に、親密である**。
〈**——**そして、**この関係を、どう読むか**は、議論がある**。
**「友情」として読むこともできる**。
**そして、**「所有」の関係が、その下にあり続けた**ことも、忘れられない**。〉)
**速記**。
(——**プルタルコスが、**カトーの演説の記録**について、書いている**。
**そして、**イシドルス**(7世紀)が、**「ティロが、最初に、ラテン語の記号を考案した」**と記している**。
〈**——**ただし、**ティロ一人が、ゼロから作った**とは、考えにくい**。
**ギリシアには、既に、速記があった**。
**〈アクロポリスで発見された、BC4世紀の碑文に、速記らしきものがある。〉**
**——**ティロが、**それを、ラテン語に、体系として、適用した**、というのが、妥当な理解である**。〉
**そして、**「ティロ式記号」**という名で、**千年以上、使われた**。〉)
**編纂**。
(——**BC43年12月7日、**キケロが、殺された**。
**〈——アントニウスの手の者による。**
**首と、両手が、切り取られ、フォルムに晒された。〉**
**ティロは、**生き延びた**。
**そして——**キケロの著作を、**整理し、**編纂した**。
〈**——**書簡集**。
**——**現存する、**約900通のキケロの手紙**。
**そのうち、**「アッティクス宛」以外の大部分**は、**ティロが集めて、編んだもの**である、と考えられている**。
**——**もし、彼がやらなければ、**それらは、失われていた**。
**〈——ローマの文学と、政治と、日常について、**われわれが持っている、最も豊かな史料**である。**
**そして、それは、**元奴隷の秘書が、主人の死後に、整理したもの**である。〉**
**そして、**演説集**。
**さらに、**キケロの伝記**を、書いた、と伝えられる**。
**——**失われた**。〉)
**その後**。
(——**トゥスクルムの近くに、**自分の農園**を持った**。
**そして、**そこで、余生を過ごした**、とされる**。
**——**百歳で死んだ**、と伝えられる**。
〈**——**この数字は、**そのまま信じるべきではない**。〉)
**そして**。
(——**「ティロ」という名は、**ラテン語で、**「新兵」「初心者」**を意味する**。
**〈——奴隷に、そういう名を付けた。〉**
**そして、その名が、**速記の体系の名として、千年、残った**。
**さらに——**アイルランドの道路標識の、**「⁊」**として、**いまも、残っている**。)