概要
発明家の家に生まれ、コーネルで機械工学を修めた。ゼネラルモーターズで、ノッキングを止める添加剤として四エチル鉛を見出し、1921年に実用化した。工場で作業員が中毒死し、彼自身も鉛中毒で療養している。それでも安全だと記者会見で主張した。1930年、無毒な冷媒としてフロンを開発。二つとも大規模に普及し、二つとも後に世界的な規制の対象になった。晩年、ポリオで身体が動かなくなり、自作の滑車装置に絡まって死んだ。
所属
アメリカ合衆国関わったできごと(1)
フロンの発明AD1930年 · 作った本文
**トマス・ミジリー・ジュニア**(1889〜1944年)。
**ペンシルヴェニア州、ビーヴァー・フォールズ**。
(**父——**発明家**である**。
〈**自動車のタイヤの、特許を持っていた**。〉
**母方の祖父——**円鋸の発明者の一人**、とされる**。
**——**発明する家である**。〉
**コーネル大学、機械工学**(1911年)。)
**デイトン**。
(——**チャールズ・ケタリング**(GMの研究部門の長。**電気式のセルモーター**の発明者)の下に入った**。
〈**デイトン・エンジニアリング・ラボラトリーズ**(DELCO)、後に**GM研究所**。〉
**——**そして、**二つの仕事を、した**。〉)
**一つめ——四エチル鉛**。
**1921年12月**。
(**問題——**ノッキング**。
〈**——**エンジンの中で、**燃料が、勝手に、早く爆発する**。
**——**「カリカリ」という音がして、**出力が落ち、**エンジンが壊れる**。
**そして、**圧縮比を上げられない**(——**上げると、ノッキングする**)。
**〈圧縮比が上げられなければ、**効率が上がらない**。〉**〉
**探索**。
〈**——**六年**。
**そして、**数千の化合物を、試した**。
**〈最初、**「赤い色のものが効く」**という誤った仮説から始めた、という逸話がある。**
**——ヨウ素を試して、効いた。**
**そして、それは色とは無関係だった。〉**
**——**四エチル鉛**(TEL)に、行き着いた**。
**——**極めて、よく効く**。**そして、**安い**。〉)
**そして、鉛である**。
(——**鉛の毒性は、**古代から、知られていた**。
**〈ローマ人が、既に、知っていた。**
**ウィトルウィウスが、水道管に鉛を使うことの危険を書いている。〉**
**そして、**1920年代の医学者は、**明確に、警告した**。
〈**——**アリス・ハミルトン**(産業衛生学者、ハーヴァード初の女性教授)。
**「これは、**多くの人々の間に、**慢性の鉛中毒を、広く引き起こすだろう」**という趣旨。
**——**彼女は、正しかった**。〉
**事故**。
〈**1924年10月、**ニュージャージー州、スタンダード石油の工場**。
**——**五日間で、**五人が死んだ**。
**そして、**三十五人以上が、重い神経の障害を起こした**。
**〈幻覚を見て、暴れた。**
**——「蝶が見える」と言った、と報じられた。**
**新聞が、**「狂気ガス工場」**(loony gas)と書いた。〉**
**——**さらに、**デイトンと、デュポンの工場でも、死者が出ていた**。
**合計で、**十数人が死に、数百人が中毒した**、とされる**。〉
**そして、記者会見**。
〈**1924年10月30日**。
**ミジリーが、**記者の前で、**四エチル鉛を、手に注いだ**。
**そして、**その蒸気を、**六十秒間、吸い込んでみせた**。
**「これを毎日やっても、**何の問題も無い**」**という趣旨。
**——**嘘である**。
**〈彼自身が、**その年の初め、鉛中毒で、療養していた**。
**——数か月、フロリダで、休んでいる。**
**そして、それを、公にしなかった。〉**〉)
(——**四エチル鉛は、**1970年代まで、世界中のガソリンに入れられた**。
**結果**。
〈**——**大気中の鉛の濃度が、**大幅に上昇した**。
**〈クレア・パターソン**が、**地球の年齢を測る研究の過程で、**現代の環境が、鉛で汚染されている**ことに気づいた。**
**——グリーンランドの氷を掘って、**鉛の濃度が、産業革命以降、急上昇している**ことを示した。**
**そして、彼は、業界から、**執拗な攻撃を受けた**。**
**研究資金を、断たれかけた。〉**
**——**子どもの知能の発達への影響**が、**繰り返し、示された**。
**アメリカは、1996年に、全廃**。
**そして——**世界で最後にこれを使っていたアルジェリアが、**2021年7月に、在庫を使い切った**。
**——**百年、かかった**。〉)
**二つめ——フロン**。
**1930年**。
(——**そして、**四十年後に、オゾン層を壊すことが、分かった**。
〈**——**彼が、それを知って死んだわけではない**。
**1944年に死んでいる**。**モリーナとローランドの論文は、1974年である**。〉)
**評価**。
(——**環境史家**J・R・マクニール**の、有名な一文**。
**「彼は、**地球の大気の歴史において、**どの単独の生物よりも大きな影響を与えた**」**(要旨)。
〈**——**これは、**称賛ではない**。〉
**そして、**もう一つの評価**。
**「彼は、**悪人ではない**。
**彼がやったことは、**その時代の科学と、その時代の企業の論理の中では、**筋が通っていた**。
**——**問題は、**誰も、**四十年後を、調べなかったこと**である」**。
〈**——**当時、**新しい化学物質の、長期的な環境影響を評価する仕組みが、無かった**。
**そして、**それを作るきっかけになったのが、**この二つである**。〉)
**死**。
(**1940年、**ポリオ**にかかった**。**五十一歳**。
**——**身体が、動かなくなった**。
**そして、彼は、**自分で、**装置を作った**。
〈**——**滑車と、ロープの仕掛け**。
**——**自力で、ベッドから起き上がれるように**。〉
**1944年11月2日**。
**——**その装置のロープに、**首を絡ませて、死んだ**。
〈**——**検死は、**事故**とした**。
**そして、**自殺だったのではないか**、という見方も、根強くある**。
**〈遺書は、無い。**
**——彼は、直前まで、仕事の予定を組んでいた。〉**
**——**確定していない**。〉
**五十五歳**。)
**そして**。
(——**彼は、**アメリカ化学会の会長**を務め、**多数の賞を受けた**。
**特許——**百件以上**。
**——**そして、**彼が世に出した二つの物質が、**いずれも、**世界的な条約と法律で、禁止された**。
**——**そのような人物は、**他に、いない**。)