概要
ロサンゼルスの生まれ。シェーンベルクに学び、和声の才が無いと言われた。打楽器と、ピアノの弦にねじや消しゴムを挟むプリペアド・ピアノで作曲した。鈴木大拙の講義を聴き、易経で音を決める方法に移った。作曲家が選ばないこと、聞こえるものすべてを音楽として聞くことを主張した。菌類の研究家でもあり、イタリアのクイズ番組できのこの知識で賞金を得ている。
所属
アメリカ合衆国関わったできごと(1)
ケージ『4分33秒』AD1952年8月29日 · 作曲本文
**ジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア**(1912〜1992年)。
**ロサンゼルス**の生まれ。
**父は、発明家**である。
(——**潜水艦を作った**(1912年、ディーゼル式。**排気の泡で、位置が分かってしまった**)。
**そして、電波で見る装置**を構想した。
〈**父は、「誰かが『できない』と言ったら、それが正しい方向だ」**と教えた、とケージは書いている。〉)
**母は、新聞の記者**。
**少年時代**。
(**ボーイスカウトのラジオ番組**を、自分で始めた。
**高校の卒業生総代**。
**そして、大学を二年で辞めた**。
——**「図書館で、全員が同じ本を読んでいるのを見て、教育は間違っていると思った」**。)
**ヨーロッパ**。
**1930年から18か月**。
(**建築、絵画、詩、そして音楽**。
**パリで、建築家のもとで働いた**。
——**「音楽に、生涯を捧げるか」と問われて、「はい」と答えた**、という逸話がある。)
**シェーンベルク**。
**1935年から、ロサンゼルスで学んだ**。
(**授業料を、払えなかった**。
**シェーンベルクが、「生涯を音楽に捧げると約束するなら、無料で教える」と言った**、と伝えられる。)
**そして、彼は、こう言われた**。
**「君には、和声の感覚が無い」**。
**「和声は、壁のようなものだ。君は、それを越えられない」**。
**ケージの答え**——**「では、わたしは、その壁に、頭を打ちつけることに、生涯を捧げます」**。
(——**そして、彼は、和声を使わない音楽を作った**。
**時間の長さで、曲を組み立てた**。
〈**後年、シェーンベルクは、アメリカ時代の弟子について問われて、こう答えたとされる**。
**「彼らのうち、興味深い者はいない。……いや、一人いる。ジョン・ケージだ。彼は作曲家ではない。発明家だ——天才的な」**。〉)
**打楽器**。
**1930年代後半**。
(**シアトルの、舞踊学校の伴奏者になった**。
——**そこに、打楽器があった**。**そして、ピアノがあった**。
**踊り手の**マース・カニンガム**と出会った**(後に、生涯の伴侶になる)。)
**プリペアド・ピアノ**。
**1940年**。
(——**舞台が狭く、打楽器の楽団が入らなかった**。
**ピアノ一台しか、置けない**。
**そこで、彼は、ピアノの弦の間に、物を挟んだ**。
**ねじ、ボルト、ゴム、消しゴム、木片**。
——**音が、変わる**。
**打楽器の合奏のような音が、一台のピアノから出る**。
〈**『ソナタとインターリュード』**(1946〜48年)が、その代表作である。〉)
**転回**。
**1940年代後半**。
(——**彼は、行き詰まった**。
**音楽が、感情を伝えるものだとすれば、聞く人によって伝わり方が違う**。
**では、音楽は、何のためにあるのか**。)
**二つの出会い**。
**(1)ギータ・サラバイ**(インドの音楽家)。
**「音楽の目的は、心を鎮め、それによって神聖な影響を受け入れられるようにすることである」**。
**(2)鈴木大拙**。
(**1940年代末から50年代、コロンビア大学の講義に、通った**。
——**そして、彼の考え方が、変わった**。
**「わたしの好みを、音楽から取り除く」**。)
**偶然**。
**1951年から、『易経』を使い始めた**。
(**コインを投げて、六十四卦を出す**。
**その数で、音の高さ、長さ、強さを決める**。
**『易の音楽』**(Music of Changes、1951年)。
——**「わたしが選んだのではない」**。
〈**批判**——**「易を使うと決めたのは、あなたである」**。
**ケージは、この矛盾を、否定していない**。〉)
**『4分33秒』**——**1952年**。
**その後の作品**。
- **『Imaginary Landscape No. 4』**(1951年)——**12台のラジオ**。奏者が、周波数と音量を操作する。〈**何が鳴るかは、その時の放送次第である**。初演は深夜で、ほとんど何も鳴らなかった。〉 - **『Water Music』**(1952年)——ピアノ、ラジオ、水、鴨笛、トランプ。 - **『HPSCHD』**(1969年)——**7台のチェンバロと、51台のテープ**。コンピュータで生成した。 - **『Roaratorio』**(1979年)——**『フィネガンズ・ウェイク』のすべての地名の音を、その場所で録音して重ねた**。 - **『ORGAN²/ASLSP』**——**「できるだけ遅く」**(As SLow aS Possible)。
〈**ドイツ、ハルバーシュタットの聖ブルクハルディ教会で、2001年から、639年かけて演奏されている**。
**音が変わるのは、数年に一度である**。
**次の音の変化は、2026年の予定**。〉
**きのこ**。
(**菌類の、真剣な研究家だった**。
**ニューヨーク菌類学会の、創立者の一人**である。
**1959年、イタリアのクイズ番組『Lascia o Raddoppia』に出演し、きのこの知識で、五週勝ち抜いて、最高賞金(500万リラ)を得た**。
〈**その金で、車を買って、家族に送った**。
**そして、番組では、毎回、自作を演奏した**。〉
**「きのこと音楽は、辞書で隣り合っている」**(mushroom と music)、と彼は言った。)
**死**。
**1992年8月12日**。
**脳卒中**。**79歳**。
(——**生誕80年の記念行事の、直前だった**。)
**残したもの**。
(**現代音楽の、ほとんどの前提を、一度、疑い直した**。
——**作曲家は選ぶ人か**。
**音楽と、そうでない音の、境はどこか**。
**演奏会は、何をする場所か**。
**沈黙とは、何か**。
〈**答えを出したのではない**。**問いを、開いたままにした**。〉)