概要
シュレットシュタット(アルザス)。ドミニコ会、異端審問官(1474年)。ラーヴェンスブルクで魔女を焼き、1485年、インスブルックで50人を訴えて、司教ゴルザーが「老いぼれて子供のようだ」と言って追い出した。1484年、教皇インノケンティウス8世の勅書「限りなき願いをもって」を得ていた(魔女の存在を認め、審問官に権限を)。1486〜87年、『鉄槌』。共著者とされたケルンのシュプレンガーは、たぶん関わっていない。ケルン大学の認可の書類も偽造の疑い。晩年、ボヘミアでフス派を追った。
関わったできごと(1)
『魔女に与える鉄槌』AD1487年 · 書いた本文
1430年頃、アルザスのシュレットシュタット(セレスタ)。ドイツ語ではハインリヒ・クラーマー、ラテン語ではヘンリクス・インスティトリス(Kramer=小売商人、institor=同じ意味のラテン語)。
若くしてドミニコ会に。神学博士(1470年頃、ローマ)。1474年、南ドイツ(テューリンゲンからアルザスまで)の異端審問官に任命された。1478年、ローマで説教。1480年頃、シュレットシュタットの修道院長。教皇シクストゥス4世の下で、贖宥の説教者(1478年、ヴェネツィアで、教皇の贖宥をめぐって説教した)。
1481年、ラーヴェンスブルクで、魔女の裁判。2人の女を火刑にした。1482年、インスブルック地方。1484年、ケルンでヤーコプ・シュプレンガーと同僚に(教皇の勅書で、二人の名前が併記された)。
1484年12月5日、教皇インノケンティウス8世の勅書「スンミス・デシデランテス・アフェクティブス」。クラーマー自身がローマで働きかけて出させた。「ドイツの北部……とりわけマインツ、ケルン、トリーア、ザルツブルク、ブレーメンの管区において、多くの男女が、自分の救いを忘れ、カトリックの信仰から離れ、インクブスとスクブスと交わり、呪文と呪詛と魔術と、その他の忌まわしい迷信と魔法の行いによって、女の胎児と、家畜の子と、大地の実りと、葡萄と、果樹と、男女と、家畜と、あらゆる動物を害し……」。審問官クラーマーとシュプレンガーに、全権と、地方の当局の協力を命じる。
1485年夏、インスブルック。クラーマーは50人以上の女を調べ、7人を捕らえた。ブリクセンの司教ゲオルク・ゴルザーは、手続きに驚いた。クラーマーが女たちに性生活について執拗に、詳細に、公開で訊問した(「悪魔とどのように交わったか」)。地元の法律家が、訊問は無効だと言った。10月、司教は裁判を無効にして、女たちを釈放し、クラーマーに教区を出るよう命じた。「この審問官は、老いのために、完全に子供のようになったと思われる」(ゴルザーの手紙)。クラーマーは残ろうとして、司教が「宿の主人が困っている」と重ねて命じた。
1486年、追放された怒りの中で、書いた。1487年、シュパイアーで印刷。『マレフィカルム・マレフィカーム、マレフィキアス・エト・エアルム・ヘレシム・ウト・フラメア・ポテンティッシマ・コンテレンス』(『魔女に与える鉄槌』)。
シュプレンガーの名。1519年の版から、共著者として印刷された(初版には彼の名はない、という説と、あるという説)。シュプレンガー(1436/38〜1495年。ケルン大学の神学教授、ドミニコ会のドイツ管区長、ロザリオ兄弟会の創設者)は、1487年にクラーマーの説教を自分の管区で禁じ、クラーマーを「反抗的」として会の規律に訴えた。二人は敵対していた。ほぼ確実に、クラーマー一人の作。
ケルン大学の「認可(アプロバチオ)」の文書も、1487年5月19日の日付で本に印刷されているが、4人の教授の署名しかなく、内容は「異端審問の理論は正しいが、手続きの一部は法に合わない」と留保している。クラーマーは残りを偽造か捏造した、と考えられる(1490年、ドミニコ会が本を「非合法な手続きを含む」として非難した記録がある)。
その後。クラーマーは1495年、ヴェネツィアで説教と著述。1500年、教皇アレクサンデル6世がボヘミアとモラヴィアの使節に任命した(フス派とボヘミア兄弟団への対抗)。オロモウツで、フス派への論駁を書いた。1505年頃、ボヘミアかモラヴィアで死んだ。
『鉄槌』。1487〜1520年に13版、1574〜1669年に16版、さらに1600年代に。約3万部。ドイツ、フランス、イタリア、イングランドで。裁判官の手引きとして使われ、また、法学者に批判された(イタリアとスペインの異端審問所は、この本の手続きを採らなかった。スペインの異端審問所は1526年、魔女の告発の多くを「幻想」と判断した)。
魔女狩りの死者は約4万〜6万人。そのうち、この本が直接に何人分かは、誰にも分からない。しかし、「魔女は実在し、ほとんどが女で、拷問で自白させ、火で焼く」という手続きを、印刷して、ヨーロッパ中の机に置いた本は、これだった。