概要
牧師の子。製紙の卸で財を成し、三十代で引退できるだけの資産を得た。海底電信の話を持ち込まれ、電気の知識は無いまま、資金と人を集める役に回った。1857年から1866年まで、四度の失敗と一度の短命な成功を経て、大西洋を結んだ。三十回以上大西洋を往復し、私財の大半を注ぎ込んでいる。晩年は投機の失敗と一族の不祥事で財産を失い、貧しく死んだ。
所属
アメリカ合衆国関わったできごと(1)
大西洋横断電信ケーブルAD1866年 · 事業を率いた本文
**サイラス・ウェスト・フィールド**(1819〜1892年)。
**マサチューセッツ州ストックブリッジ**の生まれ。
**父は、会衆派の牧師**。
(——**九人兄弟**。
**兄のデイヴィッドは、法律家で、**ニューヨーク州の法典の起草者**になった**。
**兄のスティーヴンは、**合衆国最高裁判事**になった**。
〈**そういう家である**。〉)
**15歳で、ニューヨークへ出た**。
(**乾物商の店員**。**週給、50セント**。)
**そして、製紙の卸に移った**。
(**最初の雇い主が、破産した**。
**サイラスは、**その債務を、法的な義務が無いのに、後年、利子をつけて返した**、と伝えられる**。
——**それが、彼の信用になった**。)
**1853年、33歳**。
**引退できるだけの資産を、築いた**。
(**約25万ドル**(当時)。
——**そして、南米へ、半年の旅に出た**。
〈**画家フレデリック・チャーチと、アンデスを旅した**。〉)
**話**。
**1854年**。
**技師フレデリック・ギズボーン**が、彼を訪ねた。
(——**ニューファンドランドに、電信線を引く事業**の資金を求めていた。
〈**目的**——**大西洋を渡ってきた船が、**ニューファンドランドに着いた時点で、報せを電信でニューヨークへ送る**。
**それで、**数日、早くなる**。〉
**フィールドは、地球儀を見た**。
**そして、こう考えた、と伝えられる**。
**——なぜ、そこで止めるのか**。
**海の底に、線を敷けばいい**。)
(——**彼は、電気について、何も知らなかった**。
**そして、それを、隠さなかった**。
**彼がやったのは、**資金を集め、人を集め、政府を説得すること**である**。
〈**科学は、**ウィリアム・トムソン**(後のケルヴィン卿)**。
**製造と敷設は、**イギリスの会社**。
**フィールドは、**それらを、一つの事業にまとめた**。〉)
**試み**。
**(1)1857年8月**。
(**アメリカ海軍の**ナイアガラ号**と、イギリス海軍の**アガメムノン号**が、真ん中で分けて積んだ**。
——**約600キロ敷いたところで、**ケーブルが切れた**。)
**(2)1858年6月**。
(**海の真ん中でつないでから、両側へ向かって敷く方式に変えた**。
——**嵐に遭った**。**三度、切れた**。**引き返した**。)
**(3)1858年8月5日——つながった**。
(**1858年8月16日、**ヴィクトリア女王からブキャナン大統領へ、挨拶の電文**。
**98語**。
**——送信に、**16時間**かかった**。
〈**信号が、極端に弱い**。
**トムソンが作った**鏡検流計**——**細い糸で吊るした鏡が、微弱な電流で、わずかに傾く。その光の点を読む**——で、ようやく読めた**。〉
**アメリカで、**祝賀の花火**が上がった**。**ニューヨーク市庁舎が、燃えかけた**。
**フィールドは、**英雄になった**。
**そして——**三週間で、死んだ**。
〈**原因**——**主任技師ワイルドマン・ホワイトハウスが、信号を強めようとして、**約2,000ボルト**をかけた**。
**絶縁体(ガタパーチャ)が、焼けた**。
——**トムソンは、**低い電圧で、感度の高い受信機を使うべきだ**と主張していた**。
**そして、その通りだった**。
**ホワイトハウスは、解任された**。〉
**そして、**詐欺だったのではないか**という疑いが、広がった**。)
**(4)1865年**。
(**南北戦争が、終わった**。
**今度は、**グレート・イースタン号**を使った**。
〈**当時、**ずば抜けて世界最大の船**である**。
**全長 211メートル**。**旅客船として作られ、**商業的には大失敗**だった**。
——**しかし、**ケーブルを全部、一隻に積める**唯一の船だった**。〉
**約2,000キロ敷いたところで、**切れた**。
**引き上げようとして、**失敗した**。)
**(5)1866年7月13日、出航**。
**7月27日、**ニューファンドランドのハーツ・コンテントに到着**。
**つながった**。
**そして——**引き返して、前年に落としたケーブルを、海底から拾い上げた**。
(**水深、**3,000メートル以上**。
**——それを、**鉤で探って、引き上げた**。
**そして、つないだ**。
——**二本になった**。〉
**代償**。
(**総費用——**約1,200万ドル**(当時)。
**フィールドは、**私財の大半を、注ぎ込んだ**。
**そして、**31回、大西洋を往復した**。
**十二年**。)
**その後**。
(**議会から、**金メダル**を受けた**(1867年)。
**そして、**ニューヨークの高架鉄道と、新聞社に投資した**。
——**1887年、**投機で、破産に近い状態になった**。
**さらに、**息子が、銀行の資金を不正に使い、精神を病んで施設に入った**。
**娘婿との訴訟**。
——**晩年は、暗い**。
**1892年、死んだ**。**72歳**。)
**残ったもの**。
**線**。
(——**いま、**大陸間の通信の99%以上が、海底ケーブルを通る**。
**衛星ではない**。
〈**約400本**、総延長 **130万キロ以上**。
**そして、**経路の多くが、19世紀に決められた線と、ほぼ同じ**である**。
——**海底の地形が、変わっていないからである**。〉)