概要
パドヴァの生まれ。1688年、メディチ家のフェルディナンド大公に招かれ、フィレンツェで楽器の管理と製作にあたった。チェンバロとオルガンを作りながら、弦を槌で打つ仕掛けを考えた。槌が弦から離れて戻る脱進機と、二度打ちを防ぐ受けを備えた完成度の高い機構で、後の改良は多くがその延長にある。生前は評価されず、現存する自作の楽器は三台である。
関わったできごと(1)
ピアノの発明AD1700年頃 · 作った本文
**バルトロメオ・クリストフォリ**(1655〜1731年)。
**パドヴァに生まれた**。
(——**若い頃の記録が、ほとんど無い**。
**誰に習ったかも、分かっていない**。
〈**ニコロ・アマティ**(ヴァイオリン製作の大家)に学んだ、という説が流布したが、**根拠が無い**とされる。〉)
**1688年**。
**フィレンツェへ**。
**トスカーナ大公子、フェルディナンド・デ・メディチ**が、彼を雇った。
(——**フェルディナンド**(1663〜1713年)は、**音楽に深く傾倒した人物**である。
**ヘンデル、アレッサンドロ・スカルラッティ、その息子ドメニコを、宮廷に招いた**。
**そして、楽器を、40台以上、集めていた**。
——**その管理と修理と、新作を任せる人間が、要った**。)
(**逸話**——**クリストフォリは、パドヴァを離れたくなかった**。
**大公子が、彼に、破格の条件を出した**、と伝えられる。
〈**月給12スクーディ**。当時としては、高い。〉)
**仕事**。
**(1)管理**。
(**大公家の楽器の目録を作った**。
——**この目録が、いま、重要な史料になっている**。〉
**(2)修理と調律**。
**(3)新しい楽器**。
**スピネットーネ**(1690年頃)。
(——**大型のスピネット**。
**オペラの楽団の中で、通奏低音として、聞こえるようにするため**である。
〈**狭い場所に収まるよう、弦を斜めに張った**。〉)
**楕円形のスピネット**(1690年)。
(——**楕円の形に、弦を配置する**。
**目的は、弦の長さを、できるだけ長く取ること**である。
〈**現存する。フィレンツェ、アカデミア美術館。**〉)
**発明**。
**1700年**(あるいはそれ以前)。
**メディチ家の楽器目録に、こう記された**。
**「アルピチェンバロ、バルトロメオ・クリストフォリの新案による、弱音と強音を出すもの」**。
(——**槌で、弦を打つ**。
**そして、槌が、打った直後に、弦から離れる**(脱進機)。
**跳ね返った槌を、受け止める**(チェック)。
**鍵盤を離すと、音が止まる**(ダンパー)。
**そして、鍵盤全体を横にずらして、音色を変える**(ウナ・コルダ)。
〈**この四つが、最初から、そろっている**。
——**これが、驚くべき点である**。
**「原型」ではなく、「完成した機構」が、最初に現れた**。〉)
**評価**。
**生前、広まらなかった**。
(**音が小さく、鍵盤が重く、値段が高かった**。
**そして、チェンバロの奏法では、良さが出ない**。
〈**この楽器のために書かれた最初の曲集**——**ロドヴィコ・ジュスティーニ『ソナタ集』**(1732年)。
**彼の死の、翌年である**。
——**強弱の指示が、書かれている**。〉)
**1711年**、**シピオーネ・マッフェイ**が、雑誌『Giornale de' Letterati d'Italia』に、**機構の図つきの記事**を書いた。
(——**この記事だけが、当時、この発明を外に伝えた**。
**ドイツ語訳(1725年)を読んだ**ゴットフリート・ジルバーマン**が、ドイツで作り始めた**。
**そして、そこから、ヨーロッパ中に広がった**。
〈**もし、この記事が無ければ**——という問いが、しばしば立てられる。〉)
**フェルディナンドの死**。
**1713年**。
(——**庇護者を、失った**。
**それでも、大公コジモ3世が、彼を雇い続けた**。
**1716年、宮廷の楽器管理者の地位**を得ている。)
**晩年**。
**1726年**、**弟子のジョヴァンニ・フェッリーニ**に、工房を継がせる準備をした。
**1731年1月27日**、フィレンツェで死んだ。**75歳**。
(——**遺言と、財産の目録が残っている**。
**独身だった**。
**墓の場所は、分かっていない**。)
**残ったもの**。
**自作のピアノ、三台**。
- **1720年**(ニューヨーク、メトロポリタン美術館) - **1722年**(ローマ、国立楽器博物館) - **1726年**(ライプツィヒ大学、楽器博物館)
(——**いずれも、演奏できる**。録音がある。
**音は、細く、澄んでいて、減衰が速い**。
〈現代のピアノとは、別の楽器である。**むしろ、リュートに近い、と評されることがある**。〉)
**そして**。
**現代のピアノの機構は、彼の設計の、直系の子孫である**。
(**エラールの双子脱進機**(1821年)が加わった。
——**それ以外の、根本の考え方は、300年、変わっていない**。)