概要
新聞編集者クリストファー・ショールズらが、実用になる印字機を作った。活字棒が扇形に並び、打つと上へ跳ね上がって紙を叩く。速く打つと隣り合う棒が絡む。そこで、よく続けて使われる文字を離す配置に変えていった。QWERTY である。1873年、銃器製造のレミントン社が製造を引き受けた。紙が見えない、大文字しか打てない、という欠点を抱えたまま普及した。事務の現場に女性が入る大きな入口になり、配列だけが、いまも指の下にある。
場所
43.04°N -87.91°E · アメリカ・ウィスコンシン州
関わった人(1)
クリストファー・ショールズAD1819年2月14日–AD1890年2月17日 · 作った本文
**先行**。
(——**「文字を打つ機械」の特許は、**18世紀から、多数ある**。
〈**1714年、**ヘンリー・ミル**(イギリス)——**特許のみ。実物の記録が、無い**。
**1808年、**ペッレグリーノ・トゥッリ**(イタリア)——**盲目の友人のために作った**、とされる**。
**そして、多数の試作**。〉
**——**共通の問題**。
**「手で書くより、遅い」**。
**〈だから、**誰も、使わない**。〉**〉)
**ミルウォーキー**。
**1867年**。
(——**クリストファー・レイサム・ショールズ**(新聞編集者、当時48歳)。
**カルロス・グリデン**(弁護士、発明好き)。
**サミュエル・ソウル**(印刷業者)。
**——**三人が、**同じ機械工場に、通っていた**。
**最初、**本のページ番号を打つ機械**を、作っていた**。
**——**グリデンが、**「これで、文字も打てるのではないか」**と、言った**。
〈**そして、**雑誌の記事**を見せた**。
**——**「ピーターマン印字機」**についての、短い記事**。
**〈ロンドンで作られた、試作機である。〉**〉)
**試作**。
(——**1867年から1873年**。
**——**五十以上の型**を、作った**。
〈**——**最初のものは、**ピアノの鍵盤**のような形だった**。
**〈黒鍵と白鍵。**
**——アルファベット順に並んでいた。〉**〉
**そして、**改良を、繰り返した**。〉)
**構造**。
(——**「アップストライク式」**。
〈**(1)**活字棒(タイプバー)が、**扇形に、下に並んでいる**。
**(2)**キーを打つと、**棒が、**上へ跳ね上がる**。
**(3)**そして、**プラテン(円筒)の、**下側**を叩く**。
**(4)**戻る**。〉
**——**問題**。
〈**(a)**打った文字が、**見えない**。
**——**プラテンの、裏側に打っているからである**。
**〈紙を、めくって、確認する。〉**
**——**この欠点は、**1890年代に、「フロントストライク式」が出るまで、続いた**。
**(b)そして、**速く打つと、**棒が、絡む**。
**——**跳ね上がった棒が、**戻る前に、**隣の棒が、上がってくる**。
**——**引っかかって、止まる**。〉)
**QWERTY**。
(——**この、**絡む問題**への、対処である**。
**やったこと**。
〈**——**よく続けて打たれる文字の対**を、**扇形の上で、**離す**。
**——**そうすれば、**棒が、絡みにくい**。〉
**——**そして、**配列が、次第に、いまの形になった**。
〈**——**一度に決めたのではない**。
**何年もかけて、**少しずつ、動かした**。
**そして、**レミントンが、**最後に、少し変えた**。
**〈「R」の位置。**
**——販売員が、**「TYPEWRITER」を、上段だけで打てるようにするため**だ、という話がある。**
**——面白い話であり、**確証は無い**。〉**〉
**——**そして、**もう一つの説明**。
〈**——**電信の受信手**が、**モールス信号を聞きながら打つのに、都合が良い配列だった**、という研究がある**。
**〈コイシ・ヤスオカとモトコ・ヤスオカ(2011年)。**
**——初期の主要な顧客が、**電信会社**だった。〉**
**——これも、**決定的な証拠ではない**。
**おそらく、**複数の要因が、絡んでいる**。〉)
(——**よく語られる説**。
**「QWERTYは、**わざと、打ちにくくして、速度を落とすために作られた**」**。
**——**これは、**正しくない**、というのが、現在の理解である**。
〈**——**目的は、**「絡まないようにする」**ことであって、**「遅くする」**ことではない**。
**そして、**結果として、**むしろ、両手を交互に使う配置**になっている**。
**——**それは、**速く打つのに、有利である**。〉)
**レミントン**。
**1873年**。
(——**E・レミントン・アンド・サンズ**。
**——**銃器と、ミシンの、製造会社である**。
〈**——**南北戦争が、終わった**。
**銃の需要が、落ちた**。
**——**工場の、余った能力を、使う先を探していた**。〉
**1874年、**「ショールズ&グリデン・タイプ・ライター」**を、発売**。
〈**——**装飾が、**ミシンのようである**。
**〈花模様が、描かれている。**
**——同じ工場で、同じ職人が作っていたからである。〉**
**そして、**足踏みのペダル**で、キャリッジを戻す型があった**。
**——**ミシンと、同じ発想である**。〉
**価格——**125ドル**。
**——**極めて、高い**。
**〈労働者の、数か月分の賃金。〉**
**——**最初の数年、**ほとんど売れなかった**。〉)
**転機**。
(**(1)**マーク・トウェイン**。
〈**——**1874年に買い、**『ミシシッピの生活』の原稿の一部**を、これで書いた、と述べている**。
**〈——「わたしは、出版社にタイプ原稿を送った、最初の作家である」と主張した。**
**どの作品が最初かについては、本人の記憶が混乱している。〉**
**そして、彼は、**この機械について、**苦情の手紙**を書いている**。
**「これは、**わたしの道徳を、腐敗させる**」**(要旨)。〉
**(2)**大文字だけ**。
〈**——**初期の機種は、**大文字しか、打てない**。
**1878年、**レミントン2号**で、**シフト・キー**が付いた**。
**——**同じ棒に、**大文字と小文字の活字を、二つ載せる**。
**そして、**プラテンを、上下に動かして、**どちらを打つか、選ぶ**。
**〈「シフト」——**「ずらす」**である。
**——いまのキーボードの Shift は、**この、物理的な動作の名残**である。〉**〉
**(3)そして、**事務所**。
〈**——**1880年代から、**急速に、普及した**。
**理由——**書類の量が、増えた**。
**〈企業が、大きくなった。**
**そして、**複写**が要る。**
**——カーボン紙。〉**〉)
**女性**。
(——**タイプライターは、**事務の現場に、女性が入る、大きな入口になった**。
〈**——**1870年、アメリカの事務員の、**女性の割合は、約3%**。
**1930年には、**過半数**である**。〉
**理由**。
〈**(1)**新しい職である**。
**——**「男の仕事」という前提が、**まだ無かった**。
**(2)**そして、**賃金が、安い**。
**——**同じ仕事で、**男より、低く払える**。
**〈これが、**雇う側の、主な動機である**。〉**
**(3)**YWCAと、商業学校**が、**女性に、訓練を提供した**。〉
**——**そして、**「タイプライター」という語**が、**しばらくの間、**機械と、それを打つ女性の、両方を指した**。
〈**——**「彼は、自分のタイプライターと結婚した」**という言い方が、当時、あった**。〉)
**そして、いま**。
(——**機械は、**消えた**。
**そして、**配列だけが、残った**。
〈**——**1936年、**ドヴォラック配列**。
**——**より効率が良い、とされる**。
**そして、**普及しなかった**。
**〈「経路依存」**の、最も有名な例として、経済学で論じられる。
**——ポール・デイヴィッド(1985年)。**
**——そして、その論文の史実の扱いに対して、**反論もある**。**
**〈リーボウィッツとマーゴリス(1990年)。**
**——「ドヴォラックが優れているという証拠は、弱い」。〉〉**
**——**そして、あなたの指の下に、**1870年代の、活字棒が絡む問題への対処が、そのまま、ある**。)