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Event / できごと

蒸留とアランビク

Distillation and the alembic
AD800年頃
重要度 5
カリフ国(正統・ウマイヤ・アッバース)古シベリアの狩猟採集民フィン・ウゴル系タイガの狩猟採集民西アフリカの穀作農民スラヴ系の諸部族ハザールペルミ系の人びと吐蕃フランク王国東ローマ帝国ヒンドゥーの諸国アヴァールプラティーハーラ朝アグラブ朝マクリアバシキール後ウマイヤ朝ノルマン人ラーシュトラクータ朝パーラ朝ヴォルガ・ブルガールアルワカネムVepsMagyarsアクスム王国第一次ブルガリア帝国バルトの諸部族MordviniansRus' Khaganateデーン人Swedes and Gothsチャーハマーナ朝パッラヴァ朝MariVallabhiEstsCzechsLombard duchiesシンハラの諸王国AD800年頃バグダード
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD800年頃の版図を描いています(40勢力)

概要

液体を熱して蒸気にし、冷やして集める。分離の技術である。原型は古代からあったが、アラビアの錬金術師が装置と手順を洗練させた。アル=アンビーク(蒸留器)、アル=クフル(微細な粉、のちにアルコール)、アル=イクスィール(霊薬、エリクサー)。目的は酒ではなく、薬と、香料と、そして物質の本質を取り出すことだった。この装置がヨーロッパへ渡り、修道院で「生命の水」を生み、蒸留酒の系譜が始まる。

場所

バグダード
33.32°N 44.37°E · イラク

関わった人(1)

ジャービル・イブン・ハイヤーンAD8世紀–AD815年頃 · 洗練させた

本文

**原理**。

液体を熱する。**沸点の低い成分が、先に蒸気になる**。

その蒸気を集めて、冷やす。液体に戻る。

**成分が、分かれる**。

**古い装置**。

- メソポタミア——前2000年紀の粘土板に、香料の抽出の手順とされる記述がある。 - **マリア・ザ・ジューエス**(マリア・プロフェティッサ、2〜3世紀のアレクサンドリア)。

錬金術の伝承の中で、最初期の重要な人物とされる。

彼女が考案したとされる装置——**トリビコス**(三つの管を持つ蒸留器)、**ケロタキス**(金属を蒸気で処理する装置)、そして——**バルネウム・マリアエ**。

(**マリアの湯浴**——直火ではなく、湯を張った容器に入れて、間接的に加熱する方法。

いまも、フランス語で **bain-marie**、イタリア語で **bagnomaria**、日本語で「**湯煎**」と呼ばれる。**彼女の名が、そのまま料理の技法の名として残っている**。)

**アラビアの錬金術**。

8〜9世紀、アッバース朝のバグダードとクーファ。

**ジャービル・イブン・ハイヤーン**(ラテン名**ゲーベル**、721?〜815?)。

(彼の名で伝わる著作は膨大で、実際には複数の著者による集成であると考えられている。「ジャービル文書」。)

彼らが洗練させたもの。

- **アル=アンビーク**(**アランビク**)——蒸留器。

(ギリシア語 ambix〈杯〉に、アラビア語の定冠詞 al- が付いた。

構造——下の釜(**クックルビット**)、上の兜(**ヘッド**)、そして横へ伸びる管。蒸気が兜で集まり、管を通って冷え、受け器に落ちる。)

- **アル=クフル**(**アルコール**)。

(もとは、**アンチモンの微細な粉**を指した。目の縁に塗る化粧品〈コホル〉である。

そこから「**極めて微細に精製されたもの**」の意味に広がり、やがて、蒸留で得られる**酒精**を指すようになった。)

- **アル=イクスィール**(**エリクサー**)——霊薬。 - **アル=キミヤー**(**アルケミー、化学**)。

**目的**。

**酒ではない**。

(イスラームは飲酒を禁じている。〈ただし、実際には宮廷で酒が飲まれ、詩に詠まれた。アブー・ヌワースの酒の詩は有名である。〉)

彼らが求めたのは——

**(1)薬**。植物から、有効な成分を取り出す。

**(2)香料**。**ローズウォーター**(薔薇水)が、大量に作られ、輸出された。

(**イブン・スィーナー**〈アヴィセンナ〉が、**水蒸気蒸留**による精油の抽出を記述したとされる。これが香水の技術の基礎になった。)

**(3)物質の本質**。

錬金術の目標——物質を分解し、その「本質」を取り出し、そして組み替える。

(金を作ることが目的とされるが、それだけではない。**物質が何でできているか**を知ろうとする探究である。

そして、その過程で、実際に多くのものが発見された。硫酸、硝酸、王水、アンモニア、蒸留の技術、結晶化、濾過、そして——**実験の手順を、再現できる形で記述する**という習慣。)

**ヨーロッパへ**。

12世紀、アラビアの文献が、**トレドとシチリア**で、ラテン語に翻訳された。

**サレルノ医学校**、そして**モンペリエ**。

**アクア・ヴィタエ**。

「**生命の水**」。

蒸留した酒精に、この名が与えられた。

(ラテン語 aqua vitae。

**ゲール語で uisge beatha**〈ウシュケ・ベーハ〉——これが訛って、**ウイスキー**。

**フランス語で eau-de-vie**〈オー・ド・ヴィ〉。

**スカンディナヴィアで akvavit**〈アクアビット〉。

**ロシア語 водка**〈ウォッカ〉——「水」の指小形。

すべて、同じ発想である。)

**アルナルドゥス・デ・ヴィラ・ノヴァ**(13世紀、モンペリエの医師)が書いた。

「**これは、生命の水と呼ばれる。そして、その名にふさわしい。それは不死の水である。……それは、老いた者を若返らせ、憂鬱を追い払い、心を喜ばせる**」。

(つまり、**薬として**扱われた。修道院と、薬局で作られた。)

**蒸留酒の系譜**。

原料が何であっても、蒸留すれば、強い酒になる。

だから、**その土地にあるもので、作られた**。

- **ブドウ**(ワインを蒸留)→ **ブランデー**、**コニャック**、**アルマニャック**、**グラッパ**、**ピスコ** - **大麦**(ビールを蒸留)→ **ウイスキー** - **サトウキビ**(糖蜜)→ **ラム** - **ジャガイモ、穀物** → **ウォッカ**、**アクアビット** - **リュウゼツラン** → **テキーラ**、**メスカル** - **米** → **焼酎**、**白酒**、**アラック** - **ヤシ** → **アラック** - **ジュニパーを加えたもの** → **ジン**

**社会への影響**。

蒸留酒は、醸造酒と、決定的に違う。

- **アルコール度が高い**(醸造酒は5〜15%が限度。蒸留すれば、40%以上)。 - **腐らない**。長期の保存と、輸送に耐える。 - **軽い**(同じアルコール量なら、体積が小さい)。

**帰結**。

**(1)三角貿易**。

**ラム**が、大西洋の交易の要になった。

(西インド諸島の砂糖の副産物である糖蜜を、ニューイングランドでラムに蒸留し、それを西アフリカへ運んで、**奴隷と交換する**。

——蒸留酒が、この交易を成り立たせた要素の一つである。)

**(2)ジン・クレイズ**。

1720〜50年代、ロンドン。

安価なジンが、大量に出回った。

(1730年代、ロンドンで、成人一人あたり年間**50リットル以上**のジンが消費されたという推計がある。)

**ホガース**の版画『**ジン横丁**』(1751年)——酔って赤子を落とす母、質屋、そして棺桶屋だけが繁盛している街。

(対になる『ビール街』では、人々が健康で、勤勉で、繁栄している。ホガースの意図は、ビールを擁護し、ジンを攻撃することにあった。)

**1751年、ジン法**。小売を制限し、税を上げた。

**(3)先住民と、酒**。

北米、オーストラリア、そして各地で、**蒸留酒が、植民の道具として使われた**。

(交易で酒を渡し、依存させ、そして土地と毛皮を得る。多くの記録に、意図的な使用が残っている。

その帰結が、いまも各地の先住民の共同体に残っている。)

**(4)そして、医学と化学**。

蒸留は、化学の基本操作である。

**エーテル**の合成(16世紀。パラケルススが「**甘い硫酸**」と呼んだ)が、300年後の**麻酔**につながる。

そして、**石油の分留**——原油を蒸留して、ガソリン、灯油、軽油、重油に分ける——は、まったく同じ原理である。

19世紀、その技術によって、**照明が鯨油から石油に替わり**、そして20世紀の内燃機関の時代が来た。

**装置**。

いまの実験室の蒸留装置——**リービッヒ冷却器**(1830年頃)——は、ジャービルのアランビクから、直接につながる形をしている。

管を、水で冷やす。ただ、それだけの改良である。

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