← 地図で見る
Event / できごと

スヴァールバル世界種子貯蔵庫

The Svalbard Global Seed Vault
AD2008年2月26日
重要度 4
ロシアグリーンランドカザフスタンスウェーデンノルウェーウクライナフランスフィンランドウズベキスタンドイツポーランドイタリアイギリスベラルーシルーマニアアイスランドブルガリアハンガリーオーストリアチェコセルビアリトアニアラトビアアイルランドクロアチアエストニアスロバキアボスニア・ヘルツェゴビナAD2008年2月26日スヴァールバル
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD2008年2月26日の版図を描いています(28勢力)

概要

北極圏の島の、永久凍土の山腹に、130メートルの坑道を掘って作られた。各国の種子銀行が、その複製を預ける。所有権は預けた側にあり、貯蔵庫は開けない。金庫の貸金庫と同じ仕組みである。零下18度に保つが、電気が止まっても凍土が数十年、温度を保つ。収蔵は120万点を超えた。2015年、シリアの内戦で研究所を失ったICARDAが、初めて引き出しを求めた。中東の乾燥地の小麦と大麦の種が、モロッコとレバノンへ送られ、殖やされ、そして返された。

場所

スヴァールバル
78.23°N 15.49°E · ノルウェー

本文

**なぜ、必要か**。

世界に、**種子銀行(ジーンバンク)**が、約1,700ある。

**そして、それらが、失われてきた**。

(——**戦争**。**内戦**。**火災**。**停電**。**資金の枯渇**。**そして、管理の失敗**。

**失われた例**。

- **アフガニスタン**(2002年)——カブールとガズニの種子銀行が、略奪された。

〈**種そのものが目的ではなかった**。**種が入っていたガラス瓶と、金属の容器が、欲しかった**。

種は、床に撒かれた。〉

- **イラク**(2003年)——アブ・グレイブ近郊の遺伝資源センターが、略奪と破壊で失われた。

〈幸い、その一部の複製が、シリアのICARDAに預けられていた。〉

- **フィリピン**(2006年、2012年)——国際稲研究所の関連施設が、台風、そして火災で被害を受けた。 - そして、**多数の、記録されていない喪失**。)

**構想**。

**1980年代**から、北極圏に安全な保管庫を作る構想があった。

(実際、**1984〜2001年**、スヴァールバルの**廃坑**に、北欧諸国の種子が保管されていた。)

**2004年**、**食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約**(ITPGRFA、「**種子条約**」)が発効した。

**2006年6月**、建設開始。

**2008年2月26日**、開所。

**場所**。

**スヴァールバル諸島、スピッツベルゲン島、ロングイェールビーン**。

**北緯78度**。

(**人が定住する場所として、世界最北の部類**である。

——空港がある。だから、**種を運び込める**。

そして、**ノルウェー領**である。〈**スヴァールバル条約**〈1920年〉により、非武装で、締約国の国民が経済活動を行える、特殊な地位にある。〉

そして、**政治的に安定している**。)

**構造**。

- **山腹に、130メートルの坑道**を掘る。 - その奥に、**3つの保管室**。 - **入口は、海抜130メートル**。

(——**すべての氷が融けても、水没しない高さ**として設計された。)

- **永久凍土**の中にある。

(**周囲の岩盤の温度が、氷点下3〜4度**。

——**電気が止まっても、数十年、凍結が保たれる**。

〈これが、この場所を選んだ、最大の理由である。〉)

- **冷凍機で、零下18度**に保つ。

(——**種子の保存の、国際的な標準の温度**である。

この条件で、多くの作物の種子が、**数十年から数百年**、発芽力を保つ。

〈大麦で約2,000年、モロコシで約2万年、という推計もある。ただし、実測ではなく外挿である。〉)

**仕組み**。

**極めて重要な点**。

**貯蔵庫は、種子を「所有」しない**。

(**貸金庫**と同じである。

- **各国の種子銀行が、自分の収蔵品の複製を、箱に入れて送る**。 - **箱は、封をされたまま、棚に置かれる**。 - **所有権は、預けた側にある**。 - **貯蔵庫の運営者は、箱を開けない**。中身を検査しない。 - **預けた側だけが、引き出しを求められる**。)

(——**この仕組みが、各国の参加を可能にした**。

**遺伝資源の主権**は、極めて敏感な問題である。

〈**バイオパイラシー**——先進国の企業が、途上国の遺伝資源を無断で持ち出して特許を取る——への警戒が、強い。

**もし、貯蔵庫が種を「集める」機関だったら、多くの国が参加しなかった**。〉)

**運営**。

- **ノルウェー政府**が、建物を所有し、費用を負担する。 - **北欧遺伝資源センター**(NordGen)が、運営する。 - **クロップ・トラスト**(Global Crop Diversity Trust)が、途上国の種子の輸送と準備を支援する。

**収蔵**。

**開所時——約27万点**。

**現在——120万点以上**。

(**世界の種子銀行の収蔵品の、複製である**。

**約6,000種**の作物と、その野生の近縁種。)

(**最大の預託者**——国際稲研究所(IRRI)、国際トウモロコシ・小麦改良センター(CIMMYT)、そしてICARDA。

そして、**100を超える国と機関**。

——**北朝鮮も、預けている**。)

**引き出し**。

**2015年**。

**初めての、引き出しの要請があった**。

**ICARDA**——**国際乾燥地農業研究センター**。

(本部が、**シリアのアレッポ**にあった。

**中東の乾燥地の、小麦、大麦、レンズ豆、そらまめ、ひよこ豆**の、世界最大の収集を持っていた。

——**約15万点**。)

**2012年**、内戦が、アレッポに及んだ。

(職員が退避した。

——**それでも、一部の職員が残り、発電機を回して、冷凍を維持した**。

**種は、守られた**。

**しかし、施設は使えず、種を殖やして配布する機能が、止まった**。

〈種子銀行は、**種を配ること**が仕事である。研究者と育種家に、素材を送る。

**それができなければ、意味がない**。〉)

**2015年9月**、ICARDAが、スヴァールバルに預けていた複製の、**返還を求めた**。

**約3万8,000点**が、送り返された。

(**モロッコの、ラバト**と、**レバノンの、テルアメラ**の、新しい施設へ。)

そこで、**殖やされた**。

**2017年**、そして2019年、2020年。

**ICARDAが、殖やした種を、スヴァールバルに、返した**。

(——**貯蔵庫は、意図された通りに、機能した**。

〈そして、**この事例が、貯蔵庫の存在意義を、最も明瞭に示した**。〉)

**問題**。

**(1)2016年、浸水**。

(**異常な暖冬**で、永久凍土の表層が融け、**入口のトンネルに、水が流れ込んだ**。

**種には、届かなかった**(保管室は、さらに奥の、高い場所にある)。

——それでも、**警告として、受け止められた**。

**2019年**、**2,000万ドル**をかけて、入口部分が改修された。防水、排水、そして冷却の機器の移設。)

**(2)種子にできない植物**。

(**じゃがいも、さつまいも、キャッサバ、バナナ、りんご、そして多くの果樹**。

——**種で保存できない**、あるいは**種では品種が保てない**。

**畑に、生きたまま育て続けるしかない**(**圃場保存**)。あるいは、**組織培養**と、**超低温保存**(液体窒素)。

〈**これらは、スヴァールバルには、預けられない**。

そして、**圃場は、災害と、資金と、政治に、はるかに脆弱である**。〉)

**(3)そして——貯蔵庫だけでは、足りない**。

(**種は、生きている**。

**冷凍しても、少しずつ、発芽力が落ちる**。

**定期的に、蒔いて、殖やして、更新しなければならない**。

——**それは、各国の種子銀行の仕事である**。

**スヴァールバルは、その複製を預かるだけである**。

〈**元の銀行が機能しなくなれば、複製も、いずれ死ぬ**。〉)

**(4)畑の中の多様性**。

(**種子銀行に保存されている多様性**と、**農民が畑で作り続けている多様性**は、別のものである。

——**後者は、いまも進化し続けている**。病害虫と、気候に、応答して。

**銀行の中の種は、止まっている**。

〈だから、**現地保全**(in situ conservation)——農民が、在来品種を作り続けることを支援する——が、同じくらい重要だとされる。〉)

**そして**。

**なぜ、これが必要か**。

**20世紀に、作物の多様性が、大量に失われた**。

(**緑の革命**——高収量の品種が、世界中に広がった。

**それは、飢餓を大幅に減らした**。

**同時に、在来品種が、置き換えられた**。

〈FAOの推計として、**20世紀に、作物の遺伝的多様性の約75%が失われた**、という数字がしばしば引かれる。

——この数字の根拠は、実は**明確ではない**。〈1990年代のFAOの報告に由来するが、算出の方法が示されていない。〉

それでも、**大幅な喪失があったこと自体は、多くの研究が支持している**。)

**そして、単一の品種に依存することの危険**。

(——**アイルランドのじゃがいも**(単一品種のランパー)。

**1970年、アメリカのとうもろこしの葉枯病**。

〈当時のアメリカのとうもろこしの**約85%**が、同じ細胞質雄性不稔の系統を使っていた。

**その系統が、この病に弱かった**。

**その年の収穫が、15%減った**。南部では、50%以上減った地域がある。

——**耐性の遺伝子は、どこにあったか**。**種子銀行の、古い在来品種の中にあった**。〉)

**山の中に、120万個の箱がある**。

そして、**そのほとんどは、二度と開けられないほうがよい**。

同じ時代のできごと

AD2008年の世界を地図で見る国境・できごと・生きている人が、その年のものに入れ替わります