概要
牛疫ウイルスは、数千年、ユーラシアとアフリカの牛を殺し続けた。1960年代、ウォルター・プロウライトが、冷蔵を必要としない弱毒生ワクチンを作る。それが決定的だった。電気の来ない土地でも運べる。国際的な接種計画が進み、最後の症例は2001年、ケニアのメル地区で確認された。2011年、国際獣疫事務局とFAOが根絶を宣言する。人類が根絶させた病は、天然痘と、これだけである。獣医学が最初に成し遂げた、二つ目の根絶だった。
場所
-1.29°N 36.82°E · ケニア
本文
**病**。
(——**牛疫**。
〈**——**紀元前から、記録がある**。
**——**エジプトのパピルス**、**中国の記録**、**そしてローマ**。
**そして、**フン族とモンゴルの西進**とともに、**ヨーロッパへ、繰り返し、運ばれた**、と考えられている**。
**——**牛と一緒に、動く**。〉
**——**そして、**歴史を、動かした**。
〈**——**18世紀ヨーロッパの流行が、**獣医学校を、生んだ**。
**——**1890年代のアフリカの流行が、**大陸の生態と、社会を、変えた**。
**——**そして、**シャルルマーニュの時代、そして中世の飢饉**にも、**牛疫の流行が、重なっている**。〉)
**戦い**。
(**(1)**隔離と、屠殺**。
〈**——**18世紀から**。
**ランチージの方策**(1715年)。
**そして、**イギリスが、**1865年から67年の流行**で、**徹底的に、実行した**。
**〈——約50万頭を、屠殺した。**
**そして、**流行を、止めた**。〉**
**——**有効である**。
**そして、**莫大な費用がかかり、**そして、**農民を、破滅させる**。〉
**(2)**血清**。
〈**——**19世紀末から**。
**——**回復した牛の血清**を、**注射する**。
**〈——ロベルト・コッホが、**1896年、南アフリカへ招かれて、これを試みた**。〉**
**——**効果は、**一時的である**。
**そして、**大量には、作れない**。〉
**(3)**ワクチン**。
〈**——**20世紀前半、**いくつも作られた**。
**——**山羊化ワクチン**(山羊で、繰り返し継代して、弱毒化する)。
**〈——1930年代、**J・T・エドワーズ**(インド)。〉**
**——**効く**。
**そして、**問題**。
**〈(a)**副反応が、強い**。**
**——一部の品種で、**接種した牛が、死ぬ**。**
**(b)そして、**冷蔵が、要る**。**
**——アフリカの内陸では、**それが、無い**。〉〉**)
**プロウライト**。
(**ウォルター・プロウライト**(1923〜2010年)。**イギリスの獣医師**。
〈**——**ケニア、**ムグガの東アフリカ獣医研究機構**。〉
**1957年から1962年**。
**——**組織培養で、**継代した**。
〈**——**牛の腎臓の細胞**で、**ウイルスを、繰り返し、育てる**。
**——**90代以上**。
**〈——そのたびに、**牛での病原性が、弱まっていく**。**
**——そして、**免疫を起こす力は、残る**。〉**
**「組織培養牛疫ワクチン」**(TCRV)。〉
**性質**。
〈**(1)**副反応が、**ほとんど無い**。
**(2)**一度の接種で、**生涯、免疫が続く**。
**(3)そして——**凍結乾燥すれば、**常温で、しばらく保つ**。
**〈——後に、**さらに耐熱性を高めた製剤(Thermovax)**が、開発された。**
**——電気の来ない土地へ、**運べる**。〉**〉
**——**これが、**決定的だった**。〉)
**計画**。
(**(1)**JP15**(Joint Project 15、1962年から1976年)。
〈**——**アフリカ22か国**。
**——**大規模に、接種した**。
**そして、**ほとんど、消えた**。
**——**そして、**計画が、終わった後、**接種が、緩んだ**。
**〈——1979年から、**再燃した**。**
**——ナイジェリアから、西へ、そして東へ。〉**〉
**(2)**PARC**(1986年から1998年)、そして**GREP**(1994年から)。
〈**——**今度は、**「根絶」**を、目標に、掲げた**。
**——**FAO、OIE(国際獣疫事務局)、IAEA、そして各国**。
**そして、**方法が、変わった**。
**〈——**「地域の担い手」**。**
**——牧畜民の中から、**基礎的な訓練を受けた人**を、作る。**
**そして、**彼らが、接種する**。**
**——外から来た獣医が、年に一度回るのでは、届かない。**
**〈特に、**紛争地域**。**
**——スーダン南部、ソマリア、そしてアフガニスタン。〉〉**〉
**(3)そして、**監視**。
〈**——**「もう、いない」ことを、示す**のが、**最も、難しい**。
**——**血清の抗体を、調べる**。
**そして、**疑わしい症例の、報告の網を、作る**。〉)
**最後**。
(——**最後に、確認された症例**。
**2001年、**ケニア、メル国立公園の近く**の、**バッファロー**。
〈**——**そして、その後、**十年、出なかった**。〉
**2010年10月、**FAOが、**野外での接種活動の終了**を、宣言**。
**2011年5月25日、**OIE(国際獣疫事務局)が、**全加盟国の清浄性を、認定**。
**2011年6月28日、**FAOが、**正式に、根絶を宣言**。
〈**——**ローマの、FAO本部で**。〉)
**そして**。
(——**人類が、**根絶させた病は、**二つである**。
〈**(1)**天然痘**(1980年、WHO宣言)。
**(2)**牛疫**(2011年)。〉
**——**そして、**それだけである**。
〈**——**ポリオ**は、**あと一歩**のところで、**十年以上、止まっている**。
**〈——アフガニスタンと、パキスタン。**
**そして、**紛争と、不信と、そして、接種チームへの襲撃**。〉**
**——**ギニア虫症**(メジナ虫)は、**極めて近い**。
**——**そして、**麻疹は、**根絶できる病であり、**そして、後退している**。〉
**——**牛疫の根絶が、**天然痘ほど、知られていない**理由**。
〈**——**人の病では、無い**からである**。
**——**しかし、**牛が死ねば、人が飢える**。
**そして、**この病が、**アフリカの歴史を、一度、書き換えた**。〉
**残されたもの**。
〈**——**ウイルスの株**が、**世界のいくつかの研究室**に、**保管されている**。
**——**そして、**それを、**すべて破棄すべきか**、**議論が、続いている**。
**〈——天然痘ウイルスと、同じ問題である。**
**——保管施設の数を減らす作業が、進められている。〉**〉)