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Event / できごと

レム睡眠の発見

The discovery of REM sleep
AD1953年
重要度 4
大英帝国カナダアメリカ合衆国アメリカ合衆国デンマークメキシコキューバグアテマラAD1953年シカゴ
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD1953年の版図を描いています(8勢力)

概要

シカゴ大学の大学院生ユージン・アセリンスキーが、眠る子どもの眼球の動きを記録した。装置は、指導者クライトマンの研究室にあった古い脳波計である。眠っている間、目が速く動く時間帯が、周期的に現れた。そのとき起こすと、多くが夢を見ていたと答えた。眠りは、一様な休息ではなく、構造を持つ過程である。彼は最初の被験者に、8歳の自分の息子を使った。論文は1953年の『サイエンス』に載った。睡眠が、科学の対象になった。

場所

シカゴ
41.88°N -87.63°E · アメリカ・イリノイ州

本文

**それ以前**。

**眠りは、「何もしていない状態」だと考えられていた**。

(脳が、休んでいる。活動が、止まっている。

——**19世紀まで、「睡眠」という現象を、生理学的に研究する枠組みが、なかった**。)

**脳波**。

**1924年**、ドイツの精神科医**ハンス・ベルガー**が、**人間の頭皮から、電気の活動を記録した**。

(彼は、**息子の頭部に電極を当てた**。そして、記録した。

——**発表は、1929年**である。5年、確信が持てなかった。

〈彼は、**テレパシーの物理的な基礎**を探していた、という背景がある。彼の姉が、彼の落馬事故の瞬間を「感じた」という経験が、彼の研究の動機だった。〉)

**脳波**(EEG)。

(**アルファ波**(8〜13Hz、覚醒して安静、目を閉じているとき)と、**ベータ波**(活動時)。

——彼の発見は、当初、信じられなかった。1934年、エイドリアンとマシューズが追試して確認し、以後、広く受け入れられた。)

**1930年代**、**眠っている間の脳波**が、記録され始めた。

(**ループミスとハーヴィーら**(1937年)が、睡眠の深さによって、脳波が変わることを示した。

——**眠りには、段階がある**。)

**クライトマン**。

**ナサニエル・クライトマン**(1895〜1999)。

ロシア帝国(現モルドバ)のキシナウ生まれのユダヤ人。

(**ポグロム**を逃れて、パレスチナ、そしてアメリカへ。

——ニューヨークで、工場で働きながら学んだ。)

**1925年**、シカゴ大学に、**世界最初の、睡眠だけを研究する研究室**を作った。

(当時、**睡眠の研究は、まともな学問と見なされていなかった**。)

**彼の実験**。

- **1938年**、彼と学生ブルース・リチャードソンが、**ケンタッキーのマンモス・ケーブに、32日間、籠った**。

(**光のない環境で、28時間の周期に、体を合わせられるか**を試した。

——**若いリチャードソンは、適応した。43歳のクライトマンは、できなかった**。

〈年齢によって、体内時計の柔軟性が違う、という示唆である。〉)

- そして、彼は、**自分自身を、被験者として使い続けた**。

(**180時間以上、眠らずに過ごす**実験を、自分で行った。)

**1939年**、『**睡眠と覚醒**』。**睡眠研究の、最初の総合的な教科書**である。

**アセリンスキー**。

**ユージン・アセリンスキー**(1921〜1998)。

ブルックリン生まれ。

(**極めて不安定な経歴を持つ**。

——大学を何度も中退した。社会福祉の仕事、歯科学、そして戦時中は爆薬の取り扱いの訓練を受けた。

**シカゴ大学の大学院に入ったとき、彼は学部の学位を持っていなかった**。

〈クライトマンが、彼を受け入れた。〉

そして、**極貧だった**。妻と幼い子がいて、暖房のない住まいに住んでいた。)

**課題**。

クライトマンが、彼に与えた課題。

「**眠っている乳児の、瞼の動きを観察せよ**」。

(——**退屈な課題である**。

〈クライトマンは、注意の変動と、瞼の動きの関係に興味を持っていた。〉)

**アセリンスキーは、乳児を、何時間も、目で見て観察した**。

そして——**気づいた**。

**眠っている間に、目が、速く動く時間帯がある**。

(そして、それが、**周期的に現れる**。)

**装置**。

彼は、**研究室の地下にあった、古い脳波計**(**オフナー・ダイノグラフ**)を、修理して使った。

(**廃棄されそうになっていた装置**である。)

**そして、電極を、目の周りにも付けた**。

(**眼球運動を、電位の変化として記録する**〈EOG〉。

——目には、角膜側が正、網膜側が負の電位差がある。だから、**目が動けば、周囲の電位が変わる**。)

**最初の被験者**。

**彼の、8歳の息子、アーモンド**。

(——**他に、被験者を雇う金がなかった**。

〈息子は、後に、あの晩のことを覚えていると証言している。父が、電極を付け、そして夜通し、隣の部屋で記録を取っていた。〉)

**1951年12月**。

記録紙に、**それ**が現れた。

**眠っている間、周期的に、目が、速く、複雑に動く時間帯がある**。

**そして、そのとき、脳波が、覚醒時に近い形になっている**。

(——**深く眠っているのに、脳が、活発に活動している**。

〈当初、アセリンスキーは、**装置の故障だと思った**。何度も確かめた。〉)

**夢**。

彼らは、**その時間帯に、被験者を起こしてみた**。

**多くが、「夢を見ていた」と答えた**。

(そして、**その内容を、詳しく語ることができた**。

——**他の時間帯に起こすと、夢の報告は、はるかに少なかった**。)

**発表**。

**1953年9月4日**、『**サイエンス**』。

**アセリンスキーとクライトマン**。

論文の題——「**睡眠中に、周期的に生じる眼球運動と、それに伴う現象**」。

**わずか2ページである**。

(——**当初、ほとんど注目されなかった**。

〈クライトマンの回想。「我々は、それが重要だと思っていたが、他の誰も、そう思わなかった」。〉)

**REM**。

**Rapid Eye Movement**(急速眼球運動)。

(この語は、後に、**ウィリアム・デメント**が定着させた。

——彼は、クライトマンの次の大学院生である。

〈デメントが、**睡眠が、REMと非REMの段階を、約90分の周期で繰り返す**構造を示し、そして**睡眠医学**という分野を、事実上、作った。

彼は、1970年、スタンフォードに**世界最初の睡眠障害のクリニック**を開いた。〉)

**分かったこと**。

**(1)眠りは、一様ではない**。

(**段階**がある。

非REM睡眠——N1、N2、N3(**徐波睡眠**、深い眠り)。

そして、**REM睡眠**。

**一晩に、4〜6回、この周期を繰り返す**。

——**前半は、深い非REMが多い。後半は、REMが長くなる**。)

**(2)REM睡眠の間、体は、動かない**。

(**筋の緊張が、失われる**(筋アトニア)。

——**脳幹が、脊髄への運動の信号を、遮断している**。

**夢の中で走っても、体は動かない**。

〈この仕組みが働かないと、**REM睡眠行動障害**になる。夢の内容を、実際に体で演じてしまう。

——そして、この障害が、**パーキンソン病と、レビー小体型認知症の、極めて早期の徴候である**ことが、近年、分かってきた。発症の10年以上前に現れることがある。〉)

**(3)REM睡眠の間、脳の活動は、覚醒時に近い**。

(酸素の消費も、血流も。

——だから、**「逆説睡眠」**(paradoxical sleep)とも呼ばれる〈ミシェル・ジュヴェによる命名〉。)

**(4)記憶**。

(**睡眠が、記憶の定着に関わる**。

——非REM睡眠で、海馬から大脳皮質へ、記憶が転送される。REM睡眠で、それが統合され、既存の知識と結びつけられる。

〈仕組みの詳細は、いまも研究の途上にある。〉)

**(5)そして——グリンパティック系**。

(**2012年**、ネーデルガードらが報告した。

**眠っている間、脳の細胞の間の隙間が広がり、脳脊髄液が流れ込んで、老廃物を洗い流す**。

——その老廃物に、**アミロイドβ**〈アルツハイマー病に関わるタンパク質〉が含まれる。

〈**睡眠不足と、認知症の関連**についての研究が、ここから広がっている。〉)

**アセリンスキー**。

**彼は、この発見の後、睡眠の研究を、ほとんど続けなかった**。

(——**クライトマンとの関係が、悪化していた**。

彼は、シアトルの研究所、そしてジェファーソン医科大学へ移った。

その後、小さな大学で教え、そして引退した。)

**1998年**、カリフォルニアで、**自動車事故で死んだ**。**77歳**。

(**車が、木に衝突した**。

——**居眠り運転だった可能性が指摘されている**が、確定していない。

〈睡眠の研究者の死因として、繰り返し言及される。〉)

**クライトマン**。

**1999年**、死去。**104歳**。

(——彼は、**自分の発見が、一つの分野になるのを、見届けた**。

そして、100歳のとき、インタビューに答えて、こう述べた。

「**私は、睡眠について、何かを解決したとは思わない。しかし、問いを立てた**」。)

**そして**。

いま、**睡眠は、公衆衛生の問題である**。

(**睡眠時無呼吸**、**不眠**、**交代勤務**、そして**慢性的な睡眠不足**。

——OECDの調査で、**日本の平均睡眠時間は、加盟国の中で最も短い**(一日約7時間20分。他国は8時間を超える国が多い)。)

すべては、**1951年の冬、8歳の子どもの目の周りに、電極が付けられた夜**から始まった。

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