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Event / できごと

介護保険

Long-term care insurance in Japan
AD2000年4月1日
重要度 4
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このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているAD2000年4月1日の版図を描いています(12勢力)

概要

それまで、高齢者の介護は家族が、実際にはその家の女性が担うものとされていた。措置制度の下で、行政が対象者と内容を決めた。2000年、40歳以上が保険料を払い、要介護の認定を受けて、事業者と契約してサービスを選ぶ仕組みに変わった。介護の社会化と呼ばれた。家の中で見えなかった労働の一部が、値段の付いた仕事になった。同時に、その賃金は他の産業より低く、人手不足が続いている。数えられるようになっても、安いままである。

場所

東京
35.68°N 139.77°E · 日本・東京都

本文

**それ以前**。

日本で、高齢者の介護は、**家族が行うもの**とされていた。

そして、実際に担ったのは——**その家の女性**である。

(妻、嫁、そして娘。

1990年代の調査で、在宅の介護者の**約85%が女性**。そのうち、**「嫁」が約3割**を占めた。)

**制度**。

**措置制度**。

(行政が、**対象者を決め、内容を決め、施設を決める**。

利用者は、選べない。申し込むのではなく、**行政に「措置される」**。

——福祉は、**恩恵**であった。権利ではない。

そして、対象は、**低所得で、家族のいない人**が中心だった。

〈家族がいれば、家族が見るべきである、という前提である。〉)

**問題**。

**(1)高齢化の速度**。

日本の高齢化率(65歳以上の割合)。

- 1970年——**7%**(高齢化社会) - 1994年——**14%**(高齢社会) - 2007年——**21%**(超高齢社会)

**7%から14%になるまで、24年**。

(フランス——126年。スウェーデン——85年。ドイツ——40年。

**日本の速度は、当時、世界に例がなかった**。)

**(2)介護の期間が、延びた**。

(医療が進み、**死ぬまでに、長く介護を要する期間**ができた。)

**(3)家族の形が、変わった**。

(核家族化。女性の就労。そして、**介護する側も、高齢である**〈老老介護〉。)

**(4)社会的入院**。

(介護の場所がないので、**医療の必要がないのに、病院に入る**。

病院が、事実上の高齢者施設になった。**医療費が、膨らんだ**。)

**(5)そして、家庭の中で起きていたこと**。

- **介護離職**。 - **介護うつ**。 - **虐待**。 - そして、**介護殺人**と、**心中**。

(1990年代、新聞に、繰り返し報じられた。)

**議論**。

1990年代前半から、**新しい制度の議論**が始まった。

論点——

**(1)財源**。**税か、保険か**。

(**保険方式**が採られた。理由——**権利性が明確になる**。保険料を払っているから、給付を受ける権利がある。

税方式なら、財政の状況で削られうる。そして、「恩恵」の性格が残る。

——ドイツが1995年に導入した**介護保険**が、参考にされた。)

**(2)誰が、保険料を払うか**。

(**40歳以上**、と決まった。

理由——40代以上は、**親の介護に直面する年代**である。当事者性がある。

そして、**若年層の負担への配慮**。

——ただし、この線引きは、**理論的な根拠が弱い**として、繰り返し議論されている。)

**(3)誰が、サービスを提供するか**。

(**民間の事業者の参入を、認めた**。

株式会社、NPO、生協、農協、そして社会福祉法人。

——**これが、大きな転換だった**。それまで、福祉サービスの提供は、社会福祉法人と行政に限られていた。)

**成立**。

**1997年12月**、介護保険法。

**2000年4月1日**、施行。

**仕組み**。

- **40歳以上**が、保険料を払う。 - **要介護認定**を受ける。

(**認定調査**——調査員が訪問し、74項目(現在は基本調査項目)を確認する。

**一次判定**——コンピュータによる(全国一律の基準)。

**二次判定**——**介護認定審査会**(医療・保健・福祉の専門家)が、主治医の意見書と特記事項を見て、判定する。

**要支援1・2、要介護1〜5**の、7段階。)

- 認定に応じて、**支給限度額**が決まる。 - **ケアマネジャー**(介護支援専門員)が、**ケアプラン**を作る。 - 利用者が、**事業者を選んで、契約する**。 - 自己負担——**原則1割**(後に、所得により2割・3割)。

**思想**。

**「措置から契約へ」**。

**「介護の社会化」**。

(家族の中に閉じられていた労働を、**社会が担う**。

そして、利用者が、**選ぶ**。)

**帰結**。

**(1)利用が、急増した**。

- 2000年、サービス利用者——約149万人。 - 2023年——**約600万人以上**。 - 費用——2000年、約3.6兆円 → 2023年、**約14兆円**。

(**予想を、大きく超えた**。

——制度が、**潜在的な需要を、掘り起こした**。

それまで、家族が抱えていて、表に出ていなかった需要である。)

**(2)「見えなかった労働」が、値段の付いた仕事になった**。

(訪問介護、通所介護、施設。

**介護職員**——2000年、約55万人 → 2023年、**約215万人**。

〈日本で最も従事者の多い職業の一つになった。〉)

**(3)そして——その賃金が、低い**。

**介護職員の平均賃金は、全産業の平均を、月額で数万円下回る**。

(厚生労働省の統計で、月額の差は、時期により**5万円から7万円**程度。年収で、数十万円から100万円近い差がある。)

**なぜ、低いのか**。

(**介護報酬**が、公定価格である。

事業者は、価格を自由に決められない。だから、賃金も上げられない。

そして、報酬を上げれば、**保険料と、税と、自己負担が上がる**。

——**構造的な制約**である。)

(そして、より深い問題として、しばしば指摘されること。

**「もともと、家族が無償でやっていた仕事」だから、安く見積もられている**のではないか。

——同じ議論が、保育士、看護師、そして家事支援の労働についても、繰り返し行われている。

**ケア労働の低賃金**は、国際的な現象である。)

**(4)人手不足**。

(2040年に、**約272万人**の介護職員が必要とされる。現在の水準では、**数十万人が足りない**という推計が繰り返し出されている。

対策——処遇改善加算、外国人材(EPA、技能実習、特定技能)、そして**介護ロボットとICT**。

いずれも、根本的な解決には至っていない。)

**(5)残ったもの**。

**家族の介護は、消えていない**。

(在宅の介護では、**サービスは、家族の介護を、補完している**。

支給限度額があり、それを超えれば全額自己負担になる。だから、**足りない分は、家族がやる**。

——2022年の調査で、介護者の**約6割**が、いまも同居の家族である。そして、**その約65%が女性**である。

〈男性の介護者の割合は、確実に増えている。1990年代の約15%から、現在は約35%。「息子介護」「夫介護」が増えた。〉)

**そして**。

- **ヤングケアラー**。

(家族の介護を担う、18歳未満の子ども。

2020〜21年の全国調査で、中学2年生の**約5.7%**、全日制高校2年生の**約4.1%**が、「世話をしている家族がいる」と答えた。

**それまで、統計が、なかった**。

——**数えられていなかった**。)

- **ビジネスケアラー**(仕事をしながら介護する人)。

(2030年に、約318万人と推計されている。介護離職による経済的な損失が、年間9兆円を超えるという試算が出されている。)

**問い**。

介護保険は、**家の中で見えなかった労働の一部を、値段の付いた仕事にした**。

その意味で、**画期的な制度である**。

そして——

**値段が付いても、安いままである**。

数えられるようになったことと、正当に評価されることは、別のことである。

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