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Event / できごと

ビールとニンカシへの讃歌

The Hymn to Ninkasi
BC1800年頃
重要度 4
古シベリアの狩猟採集民バントゥー系の人びとサハラの牧畜遊牧民Austroasian rice culturesアンドロノヴォ文化セム系の人びとアファナシエヴォ文化チベット・ビルマ系の人びとCatacomb cultureインダス文明ビーカー文化ウルアナトリアの諸部族エジプトオクサス文明(バクトリア・マルギアナ)エラムドラヴィダ系の人びとヒッタイト都市国家群シンタシュタ文化NamazgaCanaanフルリの諸王国KermaBC1800年頃ウル
このできごとには、まだ自由に使える図版が見つかっていません。 代わりに、このデータベースが持っているBC1800年頃の版図を描いています(24勢力)

概要

粘土板に書かれた、醸造の女神への讃歌。同時に、ビールの作り方の手順書でもある。大麦を発芽させ、パン(バッピル)に焼き、砕いて水に浸し、発酵させ、濾す。文字を持たない者でも、歌として覚えられる。当時、ビールは日常の飲み物であり、そして労働の対価だった。ウルクの粘土板に、労働者への配給として、日に一定量のビールが記録されている。ストローで飲む。濾しきれない殻を避けるためである。

場所

ウル
30.96°N 46.10°E · イラク・ジーカール県

本文

**粘土板**。

前1800年頃、シュメール。

**ニンカシへの讃歌**(Hymn to Ninkasi)。

**ニンカシ**——ビールの女神。名は「口を満たす女性」とも訳される。

(『**エンキとニンフルサグ**』などの神話に登場する。エンキが飲んだ水から生まれた、という系譜がある。)

**讃歌**。

歌の形で、女神を讃える。

「**ニンカシよ、汝は、大いなる桶に、麦芽を注ぐ者**」 「**汝は、二重に大きな鋤で、原料をすくう者**」 「**汝は、濾過の桶に、甘い麦汁を注ぐ者。それは、ティグリスとユーフラテスの流れのように**」

——そして、この讃歌は、**同時に、ビールの作り方の手順書である**。

**手順**(讃歌から読み取れるもの)。

(1)大麦を、水に浸して**発芽させる**(麦芽にする)。

(2)それを乾かし、**パンに焼く**。

(**バッピル**と呼ばれる。二度焼きの、硬いパン。これが、保存できる形の原料である。

——粉ではなく、パンにするのは、保存と輸送のためと考えられている。実験考古学で、この方法が再現されている。)

(3)バッピルを砕き、**水に浸す**。

(4)**発酵**させる。

(甘味料として、**ナツメヤシの蜜**を加えた。酵母は、自然に混入するものと、前の仕込みから引き継いだものの両方が使われたと考えられる。)

(5)**濾す**。

(濾過の桶〈**ラムサル**〉を使う。それでも、殻と滓が残る。)

**なぜ、歌なのか**。

**覚えるため**である。

(当時、文字を読める人は、ごく少数の書記に限られていた。

醸造を実際に行う人——多くは**女性**——が、文字を読めるとは限らない。

歌なら、覚えられる。そして、順序が崩れない。)

(同じ構造が、他の分野にもある。インドのヴェーダの韻文、ホメロスの叙事詩、そして各地の農事暦の唄。**記憶のための形式**である。)

**ビールと、社会**。

**(1)日常の飲み物である**。

メソポタミアで、ビールは、贅沢品ではない。

**水の代わり**である。

(川の水は、汚れている。ビールは、煮沸の工程と、アルコールと、そして低いpHによって、比較的安全だった。

——同じことが、中世ヨーロッパでも言える。「水より安全だからビールを飲んだ」という説明は、しばしば単純化されすぎだと批判されるが、要素としては確かにあった。)

**(2)労働の対価である**。

ウルクとウルの粘土板に、労働者への配給の記録がある。

**大麦**と、**ビール**と、**油**。

(日に、ビール**1シラ**〈約1リットル〉が標準的な配給だったとされる。

身分によって、量が違う。高位の者には、より多く。)

**(3)そして、記録の理由**。

**世界最古の文字**——ウルクの粘土板(前3300年頃)——の内容は、大半が**帳簿**である。

そして、その主要な品目が、**大麦**と、**ビール**である。

(記号として、**ビールの壺**を表す絵文字がある。

——つまり、**文字は、ビールの配給を記録するために、生まれた側面がある**。)

**(4)法**。

**ハンムラビ法典**(前1750年頃)に、ビールに関する条文がある。

- 第108条——**ビールの売り女**(居酒屋の女将)が、代金として大麦を受け取らず、銀を要求した場合、あるいは大麦に対してビールの量を減らした場合——**水に投げ込まれる**。 - 第109条——**居酒屋に犯罪者が集まっているのに、それを捕らえて宮廷へ突き出さなかった場合**——**死刑**。 - 第110条——**尼僧(ナディートゥム)が、居酒屋を開いた、あるいは酒を飲みに入った場合**——**焼き殺される**。

(これらの条文が示すこと——**居酒屋は、女性が営むものだった**。そして、そこが**政治的に危険な場所**と見なされていた。)

**(5)ストロー**。

シュメールとエジプトの図像に、**壺から、長い管で飲む**人々が描かれている。

(ウルの王墓から、金と青金石で作られた**ストロー**が出土している。)

理由——**濾しきれない、殻と滓を避けるため**である。

(当時のビールは、上に殻が浮き、下に滓が沈む。中間の澄んだ部分を、管で吸う。)

**その後**。

- **エジプト**——**ヘネケト**。ピラミッドの建設労働者への配給の記録が、デイル・エル=メディーナの遺跡に残っている。 - **ゲルマンとケルト**——大麦と、そして**ホップ以前の香草**(グルート)を使った。 - **中世ヨーロッパ**——**修道院**が、醸造の技術を体系化した。

(断食の期間、固形物を摂らない代わりに、栄養のあるビールを飲んだ。「**液体のパン**」。)

- **ホップ**——8〜9世紀のドイツの記録に現れ、12世紀以降、広まった。

(保存性が高まる。それまでのグルート・ビールより、日持ちする。だから、**遠くへ運べる**。輸出できる。

——ハンザ同盟の交易品の主要なものの一つが、ホップを使ったビールだった。)

- **1516年、ビール純粋令**(バイエルン)。

材料を**大麦、ホップ、水**に限る(酵母は、まだ知られていない)。

(**建前は品質の保証**。実際の動機として、パンの原料である小麦とライ麦を、ビールに使わせないため、という説明がある。)

**そして**。

1989年、**アンカー・ブリューイング**(サンフランシスコ)の醸造家フリッツ・メイタグが、シカゴ大学のアッシリア学者と協力して、

**ニンカシへの讃歌の通りに、ビールを醸造した**。

(バッピルを焼き、砕き、ナツメヤシの蜜を加えて発酵させた。)

アルコール度、約3.5%。

味の評価——「**リンゴ酒に近い、酸味のある、そして甘みのある飲み物**」。

(アメリカ微生物学会の会合で、参加者に振る舞われた。ストローで飲まれた。)

4000年前の歌に書かれた手順が、実際に、飲めるものを作った。

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