概要
蹄は角質で、伸びるが、擦り減る。乾いた草原では保つ。湿った土と石畳では、擦り切れて歩けなくなる。ローマ人は縄と革の沓を履かせていた。鉄の板を蹄に釘で打ちつける方法は、中世初期の北ヨーロッパに現れる。釘は蹄の外側の、神経の通わない部分に打つ。馬が重い荷を引き、硬い道を長く歩けるようになった。同時に、鍛冶屋が村に不可欠になり、装蹄という職業が生まれた。
場所
50.78°N 6.08°E · ドイツ
本文
**蹄**。
(——**馬の蹄は、**角質**である**。
〈**——**人の爪と、同じ成分**(ケラチン)。
**そして、**伸びる**。**——**一か月に、**約6〜10ミリ**。
**そして、**擦り減る**。〉
**——**乾いた草原では、**釣り合う**。
〈**——**伸びる速さと、**減る速さが、**だいたい、同じ**。
**——**モンゴルの馬は、**いまも、多くが、裸足である**。〉
**——**しかし**。
〈**(1)**湿った土地**では、**蹄が、**柔らかくなる**。
**——**そして、**速く、減る**。
**そして、**割れる**。
**(2)**石畳と、硬い道**では、**さらに、減る**。
**(3)そして、**重い荷を引かせる**と、**蹄への負担が、増える**。〉
**——**蹄が、**使えなくなると、**馬は、歩けない**。
〈**——**「No hoof, no horse」**(蹄が無ければ、馬は無い)。〉)
**それまで**。
(——**ローマ人**。
〈**——**ヒッポサンダル**(hipposandal)。
**——**鉄の、**沓**である**。
**——**蹄に、**紐と革で、括りつける**。
**〈——遺物が、多数、出土している。〉**
**——**問題**。
**〈(a)**外れる**。**
**(b)**そして、**歩き方が、変わる**。**
**(c)さらに、**装着に、時間がかかる**。〉**
**——**恒久的なものではなく、**傷んだ蹄の、応急の保護**として使われた、と考えられている**。〉
**そして、**中国、朝鮮、日本**。
〈**——**藁沓**(わらぐつ)。
**——**藁を編んだものを、**蹄に、履かせる**。
**——**日本では、**明治まで、これが、主流だった**。
**〈——江戸の街道の、宿場に、**馬の草鞋が、売られていた**。**
**——擦り切れたら、履き替える。〉**〉)
**釘で、打つ**。
(——**いつ、始まったか**。
〈**——**確定していない**。
**——**ケルト人が、既にやっていた**、という説がある**(19世紀の主張)。
**——**そして、**その根拠とされた遺物の年代が、**後に、疑われた**。
**確実な証拠**。
〈**——**9世紀から10世紀**の、**シベリアと東ヨーロッパの墓**から、**釘穴のある蹄鉄**が出ている**。
**そして、**文献では、**10世紀末のビザンツの文献**(『タクティカ』)に、**「三日月形の鉄」**への言及がある**。
**——**そして、**11世紀のヨーロッパで、**広く使われるようになった**。〉
**〈——バイユーのタペストリー(1070年代)に、**蹄鉄を持った人物**が、描かれている、という指摘がある。**
**——解釈には、議論がある。〉**〉)
**どうやって、打つか**。
(——**ここが、**この技術の、核心である**。
〈**——**蹄の、**外側の壁**(hoof wall)は、**神経も血管も、通っていない**。
**——**人の爪の、**先の部分**と、同じである**。
**——**そこに、**釘を、打つ**。
**そして、**釘を、**斜め外向き**に打って、**外側に、抜けさせる**。
**——**折り曲げて、**留める**。
**〈——内側に打てば、**肉に、刺さる**。**
**——「釘傷」。**
**そして、それは、**跛行**と、**感染**を、起こす。〉**
**——**つまり、**極めて、技能を要する**。〉
**そして、**蹄が伸びるので、**四週から八週ごとに、**外して、蹄を削って、打ち直す**。〉)
**装蹄師**。
(——**専門の職業になった**。
〈**——**英語で、**farrier**。
**〈——ラテン語の ferrum(鉄)から。〉**
**——**そして、**鍛冶屋**(blacksmith)**とは、**次第に、区別されるようになった**。
**〈——鍛冶屋は、**鉄を打つ**。**
**装蹄師は、**蹄を診て、削り、そして、打つ**。**
**——後者には、**馬の脚の解剖と、歩様の知識**が要る。〉**
**そして——**中世を通じて、**装蹄師が、事実上の獣医**だった**。
**〈——「馬医者」。**
**——そして、その知識は、**体系だっていなかった**。**
**——だから、18世紀に、**獣医学校**が作られた。〉**〉)
**効果**。
(**(1)**馬が、**硬い道を、長く歩ける**。
〈**——**軍隊の、行軍**。
**——**そして、**荷馬車**。〉
**(2)**重い荷を、引ける**。
〈**——**蹄が、**踏ん張れる**。
**そして、**滑らない**。
**〈——氷と雪のために、**先の尖った蹄鉄**(caulkins)も、作られた。〉**〉
**(3)そして、**北ヨーロッパの、湿った土地**で、**馬が、農耕に使える**ようになった**。
〈**——**肩の首輪**と、**この蹄鉄**が、**そろって、初めて、**馬が、犂を引ける**。〉)
**そして、いま**。
(——**議論がある**。
〈**——**「裸足派」**(barefoot movement)。
**——**「蹄鉄は、**蹄の自然な機能を、損なう」**。
**〈——蹄は、**踏むたびに、わずかに広がる**。**
**——それが、**脚の血液を、心臓へ押し戻すポンプ**として働いている、という考え。**
**〈「蹄機作用」。〉**
**——鉄で固定すると、それが、妨げられる。〉**
**——**そして、**用途と、環境による**、というのが、**現在の、穏当な理解である**。
**〈——柔らかい土の上で、軽い作業をする馬なら、裸足でよい。**
**——競走馬と、硬い路面を歩く馬には、要る。**
**そして、**接着式の樹脂の蹄鉄**と、**着脱式のブーツ**も、使われるようになった。〉**〉
**——**そして、**装蹄師という職業は、**いまも、ある**。
〈**——**そして、**深刻な、人手不足である**、と、各国で言われている**。〉)